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ファストファッションの店で働いてから変わった ー服に対する考えー

目の前には巨大な真っ白い壁があった。私はあることを確認しにその場所へ来ていた。小さい張り紙を見つけて読む。『10月31日を持ちまして閉店いたしました』とある。本当に無くなったんだ。確認して少しホッとした。

ここは元々『 FOREVER 21 』があった場所だった。倒産のニュースを見た時、正直心の中でやっぱりなと思った。以前、私はそこで半年間働いていた。転職の多い私の履歴書の中で2番目に短い職歴だ。正直、思い出したくもない仕事だけど、今後の為に忘れないように書く。



ここの方針はお客さんに新鮮な売り場だと感じてもらうことが全てだった。お客さんが飽きないようにする為に、1週間、早いと3日間位で売り場の配置替えがあった。

原宿とか新宿にある店ならまだ分かるが、私が働いていたのは郊外だった。そんなにコロコロ変えなくても飽きないと思っていたが、海外から飛んでくる上の指示は絶対だ。たとえ同じ商品を使っていても、展開する場所や配置、組み合わせを変えることで、いかに新鮮に見せるかを大事にしていた。

場所を変えるだけで黙っていても商品が売れれば良いが、届いたものが全て順調に売れる訳ではなく、どんどん在庫が溜まっていく…にも関わらず毎日のように新しい商品が大量に海外から届くので、バックヤードには常におびただしい量の在庫があった。

在庫は悪夢のようだった。高さ5m程ある天井までいっぱいに積み重ねられた段ボールには無造作に靴やバックがこれでもかと詰め込まれている。それらが列を成して大量に存在していた。勿論、主力商品である服も同様だった。

私が働いていた店はオープン時以降、売り上げ目標をずっと達成出来ていなかった。商品は余り続け、それでも新たな商品がどんどん入荷して来る。明らかに供給過多だった。在庫管理と品出しの仕事をしていた私は、管理しきれない量の商品に対して負の感情を抱くようになっていた。




そんな日々を送る中、ファストファッションの裏側と書かれたある動画を見た。そこには海外で不当に働かされている人達が映っていた。少ない賃金で、劣悪な労働環境で、命を削りながら作られている洋服。それらは全てファストファッションを楽しんでいる国に輸出されるのだ。そう、私たちの国にも。

自分が扱っている商品の裏の背景を初めて知り、ショックを受けた。そんな現状を作り出している場所で働いていていることに疑問を持つようになった。店の現状を見ても未来の見えない仕事であるのは明らかだった。

そして精神的にも体力的にも早いうちに限界になり、半年で辞めた。辞めてから、動画のこともあり店を避けるようになり、足を運ぶこともなくなった。




マイナスの事しか書いてないが、2009年に原宿にオープンして初めて買い物に行った時、最新の服を6着買い、たった1万2千円程であまりの安さにものすごく興奮して嬉しかったのを未だに覚えている。

その幸せな思い出も、誰かの犠牲の上で成り立っていたのだ。私はその動画を見て気付いたけども、見ていなかったらずっと知らないままだったかもしれない。安すぎると感じるものは裏で誰かが犠牲になっていたり代償を払っている可能性がある。

それを忘れてはいけないし、この企業が倒産したことは、ファッション業界に変革の時がきたと言える。




ファストファッションに限らず、普通に売られている服もブランド料で高くなっているものもある。つまり、高い服を買ってもそのお金が全て生産者に回る訳ではない。

日本だと季節ごとにセールがあり、服が30〜50%OFFで売られているのを見かけたことがある人、買ったことがある人も多いだろう。その位値引きしても服は元が取れるようになっている。材料費も含めて元々は定価の10分の1以下であることがほとんどだ。

何故そんなに安い値段で服が作れるのかは、前述したように海外で不当な扱いを受けて働いている人がいるからだ。誰かの犠牲があって、服の商売が成り立っている。

だから、今の自分はどこの服を買えばいいのか分からない。服に掛けられる予算が少ないのもあるが、服をなるべく消費したくないので買った服を長く大事に着るようにしている。




最近は服でもフェアトレードが少しずつ進み、消費者だけでなく生産者にとっても持続可能な仕組み『エシカルファッション』なるものも出てきているようだ。しかし、まだ街でそういった服を見かけたことはないし、浸透するのも時間を要するだろう。

ファッションだけに限らないが、生産している人にきちんとその対価が渡る世界であってほしい。消費者や経営者だけが、幸せや楽しみを感じるのは間違っていると思う。

フェアトレードが進んで、生産者が良い環境で働き公正な利益を得て、幸せや楽しみを感じられる仕組みが主流になってほしい。そうなるように、一個人として、消費者として協力できるところは協力していきたい。

時間はかかるかもしれないが、服が誰かの犠牲の上に成り立つものではなくなる時代が来ることを願う。


ELIE

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