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小説 転がる石は全て川へ~親友を亡くした彼女の景色はモノクロへ 編~

「物分かりが悪い」「理解力が無い」友達や先生、たまに親にすらそんなことを言われながら、私は育ってきた。だけど勉強も部活も何もかも、必死になって習得して応用する意味を感じられなかったのだ。意味すら分からないものを容量良く習得して、何となく集団の上の位にいる、という才能も無く、意欲も湧かなかった。

だけど高校時代に出会ったD子は本当に魅力的な女の子で、私の親友になった。D子の言うことは何でも信頼できて、後で意味のあることだと理解ができた。理解力があるとか物分かりがいいとかは、私にとっては、そんなに大切なことではない、ということを、D子と出会い理解した。

そのD子が行方不明になり、彼女のツイッターのダイレクトメッセージでやっと連絡が付き、とある河川敷に行ったら再開できた。彼女と二人でドライブして、「アジト」に行くことになった。「アジト」ではD子とプラス三人が何やら秘密裏にプロジェクトを進められているらしく、裸の男性が捕らえられているという。(となるとアジトにいるのは五人となるのか)男性はD子曰く何でも願いを叶えてくれる最終兵器とのことらしい。

しかし「アジト」メンバーの一人があること無いことをネット上で暴露して混乱させたり、外部と繋がりを持って、「アジト」を一人乗っ取って支配しようとしていることが明らかになった。D子は「アジト」内の他メンバーと連絡を取り合い、裏切り者の「粛清」はスムーズに行くかと思われた。そしてアジトに到着して……


 深夜。住宅街の中の月極に車を止めて、D子に着いていく。新築が多い住宅街の道をただただ歩く。

「ここね」

D子が指さした先は、新築に囲まれ逆に目立つ、白い古そうなアパートだ。二階建てで、錆びた階段を照らす明かりに群がるように虫が舞っている。D子は目を細め、静かに一段一段、階段を登っていく。

「このアパート。『アジト』以外の部屋は、誰も住んでないの」

D子が囁く。アパートの格子窓の前まで来て、D子が一瞬目を見開き、両手で自信の口を押えた。自ら叫びを押さえつけるかのように。

「……!」

格子窓には、血まみれの男の顔がベッタリと張り付いていた。皮をはがされているのか、原型を留めていない。

「F太……」

確かD子が車の中で電話していた名前だ。今は無残に目を見開き、助けを呼ぶような表情で絶えている。

アパートのドアが勢い良く開き、中から男が一人逃げ出てきた。しかし勢いよく転んでしまう。

「E之介……!!」

裸の男が後から出てきて、持っていた包丁でE之介を刺した。そのまま男はD子の方に向き、瞬間の動きで、D子の正面を切り裂いた。

瞬時に私はD子の死を理解し、瞬時に私の目の前の景色はモノクロームになった。そしてD子のいない世界の意味を推し量り、物分かりがよくなった私は男に突進して、よろけた隙に包丁を奪い、何度も何度も血を吹かせた。

~続く 次はいよいよ最終回!! A夫とB太はもう、戻れない 編 お楽しみに!!~

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