書評:『米朝密約 なぜいま憲法改正、核装備か』(日高義樹)

密約というのは大げさだが、米朝と中国を交えた安全保障環境について書かれた本。日高さんは、米国共和党側の人で、NHKの元記者で、安全保障を研究している。ハドソン研究所というところにいた人のようです。確からしい調査に基づいて書かれた根拠のある本だと思います(ただ、日高さんとポジションと意図は、わかりません)。

書いてあることは、わかりやすいです。

米国の北朝鮮の攻撃シナリオはあって、
(1)戦術核爆弾の投下による北朝鮮撃滅
(2)原子力潜水艦、戦闘機、空母打撃群を活用した巡航ミサイルによる全ミサイル拠点の破壊
(3)海兵隊平壌上陸+飛行機によるピンポイント爆撃による金正恩の暗殺

の3つある。一番やりやすいのは、(3)で、スパイを金正恩の近くに寄せられれば、すごい爆弾で地下までドカンとやって確実に仕留められるが、今はそういうスパイを北朝鮮に送り込めないのでできない。ただ、偶発的に米朝で戦闘が起きた場合、米国には爆撃する準備はできているので、戦えば米国が勝つことにはなる。

ちなみに、米国が攻撃した場合、北朝鮮はソウルを砲撃して壊滅することができる。やられたら即砲撃する。ソウルにいる人は、結構死者が出る。これが北朝鮮の抑止力の一つ。ちなみに、水爆とICBMはほぼ出来上がっていると思われており、そう簡単には北朝鮮を攻撃できない抑止力が既に出来上がっている。

CIAの情報操作で日本人の認識は間違っているが、実は北朝鮮の製造力、工業力はそこそこあって、ミサイルを作って輸出する力がある。中国のミサイルや艦船も、北朝鮮の鉄鋼を使っているほど工業製造能力が高く、中国より鉄の質が良い。独特の能力を持っている。兵器を含めた工業力によって、北朝鮮のGDPは上がっており、食うや食わずという2000年頃とはどうも異なるらしい。中国東北部の経済を支えているのは、北朝鮮の精密な製造能力という話もあるぐらい。安くて優秀な労働力が北朝鮮にはあるとのこと。(対して、韓国にはまともな軍事力はないから、米国か誰かが守らない限り、韓国は北朝鮮に併合される状況にある。米韓関係は悪いので)

北朝鮮と中国は仲が悪い。というか、北朝鮮は、民族自立の気概があって、中国の属国から離れている。だから、中国各地に核兵器の照準を合わせていて、中国に対する抑止力もある(日高さんはずーと中国が崩壊すると書いている人で、中国の国営企業に競争力がないという前提に立っている)。中国はウイグル、モンゴルなどを併合してきたけど、その独立も含めて、民族自立の動きが中国をやばくさせている中、北朝鮮は、中国から独立した。核ミサイルの抑止力によってという話。

ちなみに、米国では白人が迫害されている状況で、民主党と共和党の支持者が真っ二つに割れている状況。CNNとかトランプ大統領が嫌いで、嘘ばっかり流しているので、視聴率もめちゃくちゃになっている状況(最近のCNNを聞くと、報道とは言えない程度の低いものであるのは確か)

トランプの経済政策は正しくて、米国経済は確実に成長する。しかし、米国の北朝鮮政策は破綻していて、中国に頼んでいるだけである。クリントンから始まる歴代大統領が、放置して、北朝鮮を核兵器を持たせてしまった。米国の中国政策が破綻したように、「豊かになれば平和になる」という幻想の元、中国と北朝鮮という独裁国家に核ミサイルを持たせて、どうにもならなくなってしまった。

ちなみに、米国が本気で北朝鮮と戦争をするには、州兵を呼び、予備役を徴収しないといけないが、その計画はトランプ大統領にはない。海兵隊の主力は今はアフガンの方にいるから、北朝鮮に回せる状況じゃない。米国は(偶発戦から始める空爆はともかく)本気で北朝鮮と戦う気もない。

日本に米国海兵隊がいたのは、北朝鮮が戦車をソウルの近くに置いていて攻めて来た時に、日本から海兵隊を送るためだった。北朝鮮は、戦車を引き上げて、砲撃に切り替えたから、海兵隊はいなくなった。代わりに、日本の基地からの戦闘機による爆撃と、横須賀・佐世保を中心とした米国空母打撃群の爆撃、グアム島からの戦略核爆撃部隊が北朝鮮に対する抑止力の中心になった。北朝鮮は、当然、日本の基地やグアムを核ミサイルで狙う。

という状況で、米国は、中国と戦う気もないし、大陸に興味もない。日本は、いつ米国にハシゴを外されてもおかしくない状況にある。

ちなみに、日本という国は政治的には完全に二流で、経済運営を政治家と官僚がやって来たが、国家のもう一つの仕事である安全保障は、米国に丸投げで、半分しか仕事をしてこなかった。大事な片方の仕事をしてこなかったわけだが、今の安倍政権の若き補佐をしている政治家には、日本の安全を守るという使命感がゼロで、誰も、何も国防のことを考えていない。

真面目に国防を考えると、日本は核ミサイルを独自に持って、反撃能力を持つことで抑止力を北朝鮮に対して持つべきである。憲法も改正して、いつ米国にハシゴを外されても、自分で自分を守る体制を持たないといけない。


という話でした。(ネタバレしすぎな気もするので、日高さんに怒られたら消します)。

私はこの内容が100%正しいのか分かりませんが、少なくとも、2018年ぐらいは、「トランプは北朝鮮と戦争しないだろうな」ということと、日本に核ミサイルが飛んでくる脅威は十分あって、それに対する備えは全くされていない、のが現状だということが分かりました。一番単純で有効な手は、日本の核武装で、それによる抑止力の獲得でしょう。技術的にはすぐできる話でしょう。でも、ちゃんとそれをやる政治家がいないのが現状。

核戦争も核兵器も私はいやですが、近隣に核ミサイルを持った国がある以上、有効な国防は必要な訳で、他に有効な手段がない場合、抑止力の獲得は残念ながら致し方ないことであるという感想を持ちました。

この本は、日本の安全保障を考える上で、知っていてほしい1冊だと思います。


この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

三谷四五郎

ビジネス書評

1つのマガジンに含まれています
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。