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書評:『情報と国家 憲政史上最長の政権を支えたインテリジェンスの原点』(北村滋)

はっきり言って、この本、つまんねぇ

NSS 国家安全保障局の局長さんだった人の著書ということで、安全保障のことを学ぼうと思って買ったんだけど、がっかり。まあ、価値ないですね。

書いてあることといえば、警察の歴史ぐらいなもので、北村さんのこの著書は、まさに警察官僚。NSSの仕事など、センシティブすぎて書けないのか、ただの警察官僚がNSSをやっていただけなのかはよくわからないけれども、官僚が書いた本を買うのは馬鹿らしいからやめようと思いました。

あまり売れない本かもしれませんが、買ってもそのうち古本屋に安く並ぶので、定価で買う必要はないと思います。

この本に書かれているのは警察の歴史だけ

中身は、色々な論文とインタビューの寄せ集めで、まとまりもメッセージもありません。とても、本として出して良い代物ではない。著者というよりは、編集者がひどいんだと思います。

読む価値がありそうなのは、どこぞの雑誌のインタビューだけで、あとは、つまらない文章が続くだけです。戦略性のかけらもありません。

フランスの情報機構について書かれた論文があります。これは北村さんがフランスに留学していたときに研究しやつで、まあ日本にCIAやMI6は作れないだろうから、フランスを参考にするというのはありかもしれませんが、フランスの情報機関はこうやっているんだってね、ぐらいのものでしかない。オウム真理教の事件があったので、普通の警察では治らなかったことはよくわかります。が、国家の安全保障ではなくて、警察力の拡張でしかない。

あとは、ひたすら警察組織の変遷について書かれていますが、これぞ、the 官僚の書き物。井の中の蛙というか、まあ霞ヶ関で生きてきた人の書き物としか思えないですね。

WW2に負けた日本が、マッカーサーに国家警察を解体された。昔の内務省には、今の検察もあったんですねということがわかる。

それを、田舎の地方警察と、大きな都市警察に分解して、都市警察の方は、市長とかの首長の管轄にした。権限の分散をしたので、共産主義者のような国家の敵に対抗できなくなって、治安というのはまずい状態になった。

その後、都道府県の県警ができて、首都を守る警視庁だけできて、という流れがよくわかるんですが、そういう警察国家や治安の問題と、国家の安全保障というのは違うよねと思うわけで、この人、全然外交のことがわかっていないし、言及もされないわけで、まあ、口が硬いのか、何もできないのか、よくわからない著書でした。

知識として面白かったのは、

今の警察のラインというのは、

内閣総理大臣 = 国家公安委員長 = 国家公安委員会 = 警視庁・警察庁

みたいなラインと

都道府県知事 = 公安委員長 = 県警

といったラインがあって、国家の警察というものはほぼないというのがよくわかった。その中で、オウム真理教とか、都道府県を越える脅威もあるので、そこに対応する外事警察だけあるんですかね。

まあ、そんな警察について書かれた本です。

安全保障ってもっと視野が広いよねぇ

大丈夫なのか、日本は。と思っちゃいましたね。こんな警察官僚がNSSで。まあ、実際はもっと広い仕事をしていて、書けないだけかもしれませんが。

中国をめぐる軍事の話も出ていないし、台湾をはじめとした有事の危機感もないし、自衛隊と警察の連携の話もないし、国際分析もないし、日本の外交的な立ち位置もないし、お互いの秘密を擁護してインテリジェンス組織同士で情報交換しようよというのもないし、、、。

ただ、国内の警察の話をされて、内務省を解体したマッカーサーに対する恨みつらみをたくさん書かれてもねぇ。我々庶民には関係ないのだよ。大正生まれても、明治生まれでもないからさあ。

この国の中心部には、安全保障に関わる情報がないんだろうね。

国際的な感覚や、地球規模の情勢判断というもののもとで、安全保障は考えて欲しいもんだよね。

幕末の江戸幕府や、明治時代の政治家のように真面目に考えて欲しいです。

というのが感想でした。

安全保障を学ぶなら、官僚側ではなくて、自衛隊サイドで働いていた人に話を聞かないと、意味がないような気がしてきた。

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