書評:『おしえて! さかなクン3』(さかなクン)

おしえてさかなクンシリーズの最終巻。こちらもなかなか為になることが満載である。まさに、大人の教養。例えば、ノドグロという魚をよくお店では見るが、そういう魚は図鑑にはいない。なぜなら、地域によってノドグロと呼んでいる魚の種類が違うからだ。北陸でノドグロならアカムツ、太平洋ならユメカサゴ、もう一つはタマガシラという話。どれも美味しい魚であるそうだけど、違うノドグロを食べて、「北陸のノドグロは美味しい」と言っているのは、ちょっとあれだ。ちなみに、私は知らなかった。

第3巻は、その他という感じの種類なので、色々出てくる。リュウグウノツカイ、ヌタウナギ、金魚まで出てくる。魚じゃなくても、イカやタコもよく出てくる。

古代魚の話も入っていて、監修の中坊さんの話も興味深い。

魚と肺のある陸上動物はどちらが先なのか私は知らなかったが、肺が先にできて、肺を持つ魚がいて、それから魚になったらしい。だから、魚も哺乳類も先祖をたどると一緒らしい。安部公房の小説に、人間にエラをつけるという話が出てくるが、あながちフィクションでもないようだ。

似たようなネタだと、この巻ではないが、サメの卵生・胎生というのも気になっていたが、謎が解けた。サメには、卵で生まれるものと、魚なのに、お腹から赤ちゃんが生まれるものの二つがある。「赤ちゃんで生まれたら哺乳類じゃないか!」と思っていたのだが、そうではないのだ。卵をお腹の中に入れていて、赤ちゃんが大きくなったら出すのが胎生のサメである。あくまで、栄養分は卵だけというのが多い様子。ちょっと、哺乳類とは違う。なるほど、ちょっとした工夫で、卵生と胎生など変わってしまうのかというのは、目から鱗であった。

さかなクンの本を読んで思ったのは、魚というのは何かに似ているなあと思ったのだが、これは、例えば、ワインなどによく似ている。ワインというのは世界中になって、膨大な数があるので、全てのワインに詳しい人などいるわけがないが、自分はほとんど知っているという自称ワイン通がいる。大抵において、この手の自称専門家は偽物である。ワインというのは、年代によっても味が異なるので、世界のワインを全部知っている奴など、物理的に不可能なのである(そもそも、ボトルコンディションだってある)。

魚類や海の生物も同様で、数がとてつもなく多いので、全部知っている人はいないわけで、たまたま、その地域の魚に詳しいというのがほとんどであろう。日本という大きさであっても、アブラボウズの話であり、ノドグロの話になるように、同じ名前で違う魚を指していたり、同じ魚を違う名前で呼んでいるのが現状である。なのに、全部の魚を知っているようなことを言う人がいるのが面白い。大抵の場合、この人は、自称魚通である。

さかなクンは、魚の博学である。さかなクンの博学の面白さは、魚を食べている面白さである。さかなクンは、魚の研究が好きだが、研究した魚は食べる。魚の命を大事にするさかなクンだからこそであるが、これだけ、実際にみて、触って、食べている人間は少ない。魚の味の違いがわかる男が、さかなクンなのである。

私の中では、一緒にお寿司屋さんに行きたい人no1がさかなクンである。

この人と一緒に寿司屋に言ったら、絶対に面白いと思う。
いろんなネタがあるような店でカウンターじゃないとダメだろうけど。

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