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書評:『習近平が尖閣を占領する日』(日高義樹)


米国共和党に近い日高さんの2021年の著書。Kindleで読んでみた。

まあ今回も刺激的な内容であるのだが、日高さんの著書の怖いところは、過去のものを見てもあながち間違っていないことである。おそらく、CIA系の米国の世論操作も混じっている(米国の共和党系シンクタンクからすれば、それが仕事であるし、ポジショントークでしかないが)とはいえ、米国の外交姿勢や、米国の軍事を考えるに日高さんの本を時々読むのは理にかなっていると思うので、時々買って読ませてもらっている。

今回もその内容をザクっと振り返ってしまおうと思う。

中国は尖閣諸島をとりたいらしい

「尖閣諸島のような岩山をとってもしょうがない。平和を乱すのか」というような話を大声で叫んでいたハリウッドの俳優がいたように思えるが、こういう人が、中国共産党のお金にまみれて、買収されている人である。

その有効性はともかく、習近平は、台湾をとるための前線基地として尖閣諸島が欲しいという話。尖閣諸島に漁船で色々持ち込んで、岩山の下に秘密基地を作る。揚陸艦に乗る兵士を地下に貯めつつ、航空基地を岩山をくり抜いた地下に作って、基地にするんだそうだ。

で、尖閣の基地をベースに、沖縄基地を攻め取るというシナリオを日高さんは提示している。

実は、米軍の沖縄基地には米軍はほとんどいないという話。海兵隊の半分はオーストラリアのダーウィンに引き上げてしまい、もう半分は中東に出てしまっているので、沖縄基地に陸軍・海兵隊兵力は置いていないという話。でも、沖縄には基地としての機能はあるからレーダーはあるし、補給物資はあるし、兵器は置いてあるという状況。

中国が豪華客船に陸軍を詰め込んで、沖縄に上陸して、沖縄米軍基地を占領してしまうというシナリオを日高さんは提示している。豊富な兵器や基地設備も中国軍に使われてしまう。日本危うしである。

一方、中国が台湾を落とすことができないそうだ

一方で台湾は国防を固めており、中国が台湾を軍事的に占領することは、日高さんによると、叶わないらしい。

米国のトマホークミサイルが、台湾に配備されることが決まったらしい。トマホークミサイルは、海面スレスレを飛んでいくのでレーダーで捕捉ができない。これで、中国沿岸の基地も壊せる。

また、台湾は中国に届くICBMを自分で開発して、台湾の山々に発射基地を整備し、配備が完了している。いざ、台湾と中国が戦争になれば、三峡ダムに大量にミサイルをおみまいして、長江は大洪水で、中国経済は崩壊という。

また、台湾は、米国で退役したディーゼル潜水艦をたくさん持っており、中国近海に潜ませている。船で中国が台湾に攻め寄せようものなら、これらの潜水艦が大活躍して、全ての船を沈めてしまうとのこと。海兵隊を揚陸艦に乗せて、台湾侵攻などとしようとしても、海の藻屑、だそうだ。

同じように、中国の輸送船を沈めれば中国の通商破壊は簡単であり、中国経済は輸出入を止められるとすぐに崩壊するから、継戦能力がない。

米国軍はやっぱり強い

日高さんの本では、米国軍、特に米国海軍は常に強いのだが、まあ強いんだそうだ。その中身を追ってみよう。

まず、戦略爆撃機の話。WW2から、米国にはB-52が大量にあってこれが大活躍して、東京大空襲などで大量に日本人を虐殺してきた。ベトナム戦争においても同じだが、このB-52というのが優秀らしい。その次に、B-1などが出てきたけれども、お金ばっかりかかるので、しばらくB-52で良いらしい。

戦術というのは、兵器同士の戦闘である。F-15がドックファイトで負けないみたいなのが戦術戦闘機。戦略爆撃機というのは、街を壊して、相手の経済力や生産力を破壊できるので、戦略爆撃機なのだ。

米国というのは、戦略爆撃機を大量に用意して、相手国の経済もろともぶっ潰すということを得意にしている。なにしろ、経済力が強いから。なんだけど、結構、戦略爆撃機をたくさん持つのはお金がかかるから、普通の戦闘機に精密な爆弾をつけて、全ての戦闘機を戦略爆撃機にするというのが、現在の米国が進めている構想でほぼできているらしい。

その次に潜水艦。米国には、原子力潜水艦で、トマホークミサイルを満載した潜水艦が多いんだそうだ。これが海にうじゃうじゃいて、いざとなったら、中国の空母も沿岸基地もをミサイルでぶっ潰すんだそうだ。米国の空母を守っているのも潜水艦。

一方、中国の潜水艦は、すでに太平洋で米国に沈められてしまっているとのこと。中国の潜水艦が米国の空母に魚雷を撃とうものなら、ほぼ自動的に空母の反撃により沈められるのが中国の潜水艦であるらしい。海中の戦いに勝てねば、中国の海の覇権はないとのこと。

続いて、超音速ミサイル。中国の方のものがよく話題に出るが、トランプ大統領がちゃんと予算をつけて米国のもほぼ完成。すごく早いミサイルと、滑空体とがあるらしく、まあこれもすごいらしい。

ただ、米国の核兵器は老朽化が進んでいてやばいらしい。管理さえもちゃんとできていなくて、動くかわからないとのこと。これを小型化、近代化すべく動いているということらしい。

さらにグアム基地の話。もはや、中国のICBMがグアム基地に届くので、巨大な基地に戦力を集中させるのは危険でしかない。中国のミサイルで飽和攻撃されるから。だから、ICTを活用して、戦力を分散しつつ、分散して米国軍は戦うらしい。

世界中が習近平の敵である

バイデン就任直後に、米国の核ミサイルの基地がサイバー攻撃を受けてハッキングされたらしい。犯人は多分中国。バイデンは怒って、空母を大量に中国の近くに派遣して、どんぱち演習をやったとのこと。そもそも、日高さん曰く、バイデンは習近平に買収されていたのであるが、買収されたバイデンさんも老獪で、大統領になった瞬間、習近平を切った。泣きべそ習近平である。

欧州は欧州で、ナチスドイツの虐殺があるので、ウイグルの大虐殺を許さない。ので、欧州と中国もダメ。

欧州から独立した英国は、香港を踏み躙られた。条約や約束を守らない中国に心底怒りを感じている。

そもそも、WHOを買収し、コロナウイルスを作り出し、世界中にばら撒いた習近平は世界中から嫌われているとのこと。

東南アジアに活路を求めても、欧米市場を失った中国が東南アジアの小さな市場で経済を取り返すこともできぬとのことらしい。

米国はアテにならない

この辺りから、共和党トークが入る。

バイデンはばらまきをしまくっていて、低所得者層の買収政策をとっているとのこと。バイデンに信念も政策もなく、世論と議会の票に左右されて右往左往するのは有名な話だが、今の米国民主党はそれがひどいとのこと。

政府の財政支出に歯止めがかからず、金融緩和もすごい(注:この本は2021年6月ぐらいの本なので、その後、バイデンの政策が民主党上院で認められず予算が通らないとか、インフレでFRBが金融緩和を見直しつつある話は考慮に入っていない)ために、色々破綻しそうという話。

かつての米国で言うと、WW2に入っていくルーズベルトが、同じような大きな政府政策を取り、戦争で大きな需要を作ろうとした。バイデンは、同じようなことをしようとしていると言うことらしい。

∴日本は軍備を整えないといけない

この手の安全保障の本の結論は常にこれだが、日本は軍備を整えないといけない。

そもそも隣に中国があって、尖閣諸島を奪って基地にして、沖縄を占領しようとしている。中国から太平洋に出ようと思えば邪魔なのは台湾と沖縄群島であるので、中国としてはそうしてくるだろう。

日高さんが言うには、台湾の核軍備を日本が助けるべきだ。

それから、米軍はいつまでいるかわからないので、その後を日本の自衛隊がその穴を埋めなくてはいけない。東南アジアについても、中国の影響力が強まっているが、日本が頑張らないとまずい。

そのためには、日本を再軍備に向かわせる強い指導者が必要、と言うことで、話が終わっている

感想: 習近平はヒットラー レベルでやばい

欧米の習近平の捉え方が、ほとんどヒットラーレベルになっていると言うことに、日本人は敏感になるべきであると思った。それは、中国というのは日本の隣にある面倒臭い国ではあるが、かと言って、都合の悪いものは見ないということをしていて良い状態ではすでにない。

尖閣諸島に地下基地を作られ、沖縄米軍基地を占領され、台湾をじわじわ取られると、香港・韓国に続いて、台湾、日本というのが中国に侵略され、現状の香港のように踏み躙られるのは、火を見るより明らかである。

そんな中、隣に面倒な奴がいるので、なあなあにやっていこうとしているといずれ無理が来る。中学校のクラスに、中国という暴れん坊のいじめっ子がいるとして、米国という体のでかい学級委員が暴れん坊を成敗しようとしているときに、日本というガリ勉君は、暴れん坊に暴力を振るわれないように静かにしているのではなく、体のでかい学級委員に同調して暴れん坊の始末をする側に立たなくてはいけない。

めんどくさいから中立、などという中途半端な態度をとっていては国は滅びる。何せ、体のでかい学級委員たる米国は、面倒臭くなったら学区外にお引越しして転校してしまうかもしれないのである。

日本としては、
・全力で国防力を強くする
・沖縄に陸軍の戦力をおく
・島嶼部に中国艦船を狙うミサイル網を配備する
・潜水艦戦力を整備する
・独自にミサイル戦力を整備する
・台湾を全力で助ける

などやっていかないといけなんだろうなと思っている。

そして、小金欲しさに中国市場を捨てきれない経営者がいるとすれば非常に危うい。ポートフォリオの一端として中国事業を持つのは良いが、中国市場を強化するのは危なすぎる。中国がないと成り立たない事業も危ない。それは、生産も市場としてもである。中国の比率を下げていくのが王道であろう。

中国市場を無視するか、キャッシュカウとし、資金を引き上げて、親米の東南アジアの国々に拠点と市場を移していく、投資先を変えていくと言うのが日本企業の生き延びる道であろうと思う。

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