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学びのツールから心の拠り所へ:「進化思考」と私の一年間

1 はじめに

「人生を変えた1冊があるとしたら?」 
もし誰かに聞かれたら間違いなく、その1冊は進化思考。最初手にとった時には思いもしなかった1冊の本との出会いと本との向き合い方や本で説明されている進化思考の取り入れ方、本で変わっていった生き方についてまとめてみました。
進化思考に興味のある方や自分の生き方を変えてみたい方の参考にしていただければうれしく思います。

2 進化思考に出会うまで

「時間があれば出来るはず?」

家庭科教師として学校で働いていた時「自由な時間さえあれば何でも出来るはず」「学校を辞めても何とかなる、時間はいくらでもあるのだから」という思い上がりです。
自分で集客する苦労もなく生徒達に授業や実習を担当し収入を得る生活のありがたみはフリーランスになって初めて身に染みた事でした。

退職までの長い時間、自己啓発系の様々なセミナーにジプシーのように通いつめ、時間と労力を注ぎ込み、コーチングやカウンセリングなど様々な資格を取った自分を過大評価した自信は退職後に「何をしても誰からも反応がない」という厳しい現実にさらされて、木っ端みじんに吹き飛びます。

自信を失いかけた頃、知り合いから灘中学で取り組んだ探究学習についてまとめる仕事をいただきます。学校で取り組んだ時は「やれる事は精一杯やった」と思っていたものの原稿にまとめるといろいろな課題が見えて来て「もっと何か出来なかったのか?」と考え始めました。

ちょうどその頃、偶然に出会ったのが著者の太刀川英輔さんが出演していた「進化思考」についてのオンラインイベントでした。「探究学習に役立つのは、これかもしれない!」そんな期待を胸にアマゾンで早速本を注文し夢中で読みました。

パタン。今でも読み終えて本を閉じた時の感動ははっきりと思い出せます。
進化思考はこれまで出会った思考のツールのどれよりもパワフルで緻密だと感じました。特に知的好奇心が高く生物や進化などに興味を持ち読書好きな子が多い灘の生徒達にはぴったり! 「なぜ、この本と灘にいた時に出会えなかったのだろう」出版年を見て、退職直後の出版だった事に気づき心底残念に思いました。

3 学びのツール

「これさえあれば大丈夫?」

読後、進化思考の学びの場でのツールとしての可能性に気が付くと様々な考えが広がります。進化思考はアイデア発想にも役立つ思考法です。
実習が多く作品製作にオリジナルのアイデアを求める事が多い家庭科では必ず役に立つはずだと直観しました。どの学校でも「アイデアが出て来ない!」「創造性なんてない!」という声を生徒達から聞いていたからです。

進化思考には創造性教育についても書かれています。多くの人が自信を持てない自分の中の創造性は個人のセンスの問題ではなく誰でも育てる事が出来るという内容です。「子ども達に豊かな創造性が育まれたら、どんな未来が待っているのだろう」想像するだけで胸が高鳴りました。

また探究学習でテーマを決めた後にどうリサーチしていくか迷っている子達への道しるべにもなると感じました。探究学習の取り入れは試行錯誤の連続で、テーマ決定後の学習については個人任せの部分があり何かの方向性を示せればと思っても、どうすればいいか迷っていたからでした。

この学びのツールとしての進化思考の可能性などについては進化思考の内容も含め下記の記事にまとめています。よろしければお読みください。

4 ひとりでやった進化ワーク

「本当に役に立つ?」

探究学習の原稿依頼から探究に興味を持ち、子ども達の学びとママをつなぐ活動にシフトした私は探究をカリキュラムのメインに据えたマイクロスクールでインターンとして参加し始めました。

1か月が経った頃、元家庭科教師の経験を生かし「コネクト」という時間の授業案を考えてみないかと言われます。保育領域という指定を受け遊びをテーマに考え始めますが、どうしても教師時代の授業案しか浮かびません。

「そうだ! 進化思考で遊びを進化させてみたらいいかも!」進化思考には読者が自分で取り組めるよう50の進化のワークが載っていて、それを1人でやってみる事にしたのです。「本当に進化思考が役に立つか」自分でやる事にしたのです。

それはとても不思議な体験でした。一応ワークの手順通りにやってみたのですが正解が分かりません。「こんなやり方でいいの?」「本当にこれで合ってる?」何度も自問自答を繰り返しながら、それでも今までの遊びのイメージががらっと変わるのを実感していました。
ただ、その内容を授業案に反映するのは難しく家庭の事情などでインターンを辞める事になりマイクロスクールでの遊びの授業は幻となりました。
マイクロスクールに興味を持っていただいた方は下記のマガジンを参考にしていただければと思います。

5 進化の学校でのワーク実践

「今しかチャンスはない?」

「このままでいいの?」進化思考の本を使い、ひとりでワークした内容を活かせなかったモヤモヤが心の中に残っていた頃、進化の学校という進化思考を参加者と一緒に実践できる場の事を知ります。

家庭の事情でどこかに定期的に通うような活動が出来なくなり個人で以前から興味のあった絵本を使ったワークショップを開いてみようかと思っていた時でした。

進化の学校について調べれば調べる程、不安が増して行きます。受講料、参加者と自分の世代ギャップ、受講時間の長さ、それにも増して不安だったのはオンライン受講でのいろいろな操作についていけるかどうかでした。

それでも「自分ではよく分からなかったワークにもう一度しっかり向き合いたい」「自分の直感を信じて進化思考の本当の力を体験したい」「絵本を進化させて自分にしか出来ない絵本のワークショップを創りたい」心の中に渦巻く気持ちを抑える事は出来ません。

「今しかチャンスはない!」締め切りギリギリに進化の学校2月期の申し込みを終えた時には期待と不安で胸がつぶれそうでした。

実際の進化の学校でのワークはハードな内容でしたが本当に密度の濃い素晴らしい体験となりました。ただワークを通して何よりも実感したのは「正解はない」という事です。

人はどうしても「正しい答え」を見つけようとします。でも自分で決めた対象を進化させた先は誰も見た事がない、誰も知らない内容です。そこに正しさはありません。ただ、そこで出て来たコンセプトが本当に生き残れるかは進化思考のワークにどう取り組んだかで変わると思います。

実際に絵本を対象に進化させ、受講前には想像すら出来なかったコンセプトを創り出す事が出来ましたが著作権などの問題でオリジナルの絵本のワークショップは未だ開催出来ていません。

この絵本を進化させた経験は下の記事にまとめています。よろしければお読みください。

6 女性のための場づくり

「女性にこそ知って欲しい?」

絵本のワークショップ開催は実現しませんでしたが、身をもって進化思考のすごさを実感したのに何かしないわけには行きません。
「進化思考を1人でも多くの人に知ってもらい、何かに役立ててもらうために自分に出来る事は何だろう?」 考え抜いた末に進化の学校の参加者の中に女性が少なく思えた事、進化思考という名前が女性にとっては難しそうに思える事などから、女性向けに気軽に参加出来て、進化思考のさわりの部分を伝える事が出来、体験してもらえるイベントをやってみようと決心します。

オンラインで開催するのは初めて。誰かにオリジナルのイベントに参加してもらうのも初めて。初めてづくしのイベントはFBで繋がっている方達への”モニターのお願い”にこたえて下さった方々の協力もあり無事開催出来ました。

そして参加していただいた皆さんの進化思考を使ったアイデア発想の様子やイベント後にいただいたフィードバックから進化思考を活用出来る可能性がさらに広がります。

7 心の拠り所への変化

「ただのツールでしかないの?」

オンラインのイベントは”女性のためのアイデアカフェ”と名付け、気軽に参加出来て安心できる場で自分で決めたテーマについてアイデアを出していく内容にしました。そのアイデアを出す思考法として進化思考のさわりの部分を紹介させていただきました。

下の図にあるように進化思考は変異というアイデアをたくさん出していくプロセスと適応という丁寧にリサーチをかけていくプロセスを繰り返していく事で最終的にコンセプトを磨きあげていくプロセスを取ります。

変異というプロセスは「無数のアイデアを発想する」とありますが、実は変異のリストに載っている9つの項目は何かを考える時の視点としても使えます。それに気づかせてくれたのもアイデアカフェでの体験でした。

「進化思考」より抜粋 (アマゾンサイト)

それまで変異はアイデア出しにこそ使えても、人が抱えている課題解決にはつながらないと思い込んでいたのですが違ったのです!

特に驚いたのが欠失の視点でした。「今まで、それをしないとダメだと思っていた事が、しなくても別に問題ないと気が付いた」という参加者からのコメントです。

そこで自分が昔抱えていた親子問題に、この変異と適応をあてはめてみたのです。「あー、これだったんだ」「この視点や観点があったなら、もっと家族の関係を全体から俯瞰してみる事が出来たはず」「あんなにつらく苦しい日々を送る必要はなかったんだ」この腹落ちというか心底納得出来た経験は自分にとっての進化思考の存在意義を大きく変えるきっかけとなりました。

8 まとめ

「何を心の拠り所にすればいい?」

進化思考は学びのツール。そのイメージは今や全く違うものになりました。私にとっては変動の激しい社会を生き抜くためのライフツールに他なりません。

先の見えない不確実な世界で情報や価値観が分断されたような世代間ギャップの中で家族として生きていく時のライフツールであり、自分のキャリアやライフプランをアップデートしていく時のライフツールでもあります。

そして何より自分の前に何かが立ちふさがった時、その問題や課題に心折れる事なく自分なりの答えを見つけていける最強のツールとして不可欠なものとなりました。

この思考法を一度しっかりと体験しておく事は何よりの心の拠り所となり、どんな事が将来待ち受けていても「きっと大丈夫!」と安心できます。

今は、これだけ魅力的な進化思考を1人でも多くの人に知ってもらい使ってもらえるよう今後のライフワークとして活動が出来ればと思っています。

進化思考はどん詰まりだった私の1年間を大きく変えてくれた1冊です。そして、その進化思考を深く学べる進化の学校は、きっとこれからの社会を変えていく素晴らしい人たちの集まったコミュニティです。
その出会いをつながりに心から感謝して「進化思考と私の一年間」のまとめとしたいと思います。(ここで書いた内容は私見です。)〈終わり〉