ケンティー、あなたのことなんて大嫌い!嘘だけどね!

2011年の冬、札幌
私は修学旅行のバスの中で、バスガイドさんに無茶振りをされていた。
「今クラスで流行ってる歌を、福山雅治風に歌え」車内は静まり返った。外からしんしんと雪の降る音が聞こえるくらいだった。
そんな中、私は手を挙げた。最近聞いた、耳に残るあの曲。
バスガイドからマイクを奪い取り、息を吸い込む。
「ワイルドもぉ〜ん地球のぉ〜裏側じゃぁ〜〜ん♪」
まぁまぁウケた。「ワイルドとかマイルドとか、意味不明」「Mステで言ってたけど、マリウスくんって日本語話せないらしいよ」「世界って本当に195ヵ国あるのかよ」なんて、車内を温めながら、バスは進んでいく。

SexyZoneなんて、朝のワイドショーでしか見たことなかった。
顔も名前もわからない。なんか外国人の子がいる。年下の男の子たちだが、今の時代は山田涼介。彼に勝てるのかなぁ
単語帳片手に朝食を食べながら見た、そんな記憶。

2013年、地元を離れ大学生になった私は、友人作りに勤しんでいた。
バスの一件があってから、私はクラスのジャニオタと仲良くなり、関ジャニの大倉くん→関西ジュニアの重岡くんとハマっていた。
「珍しく関西ジュニアが好きな女がいる」と噂になった私は、無事ジャニオタコミュニティに所属することができ、コミュニティメンバーのお家を行ったり来たりすることになった。
そこで私は生まれて初めて、「少年倶楽部」を見ることになる。

2014年2月5日、いつものように友人宅で「少年倶楽部」を見ていた私は、度肝を抜かすことになる。
SexyZoneの曲が始まって数分後、ケンティーのズボンの真ん中が裂けていたのだ。
あまりにも長い脚。それに耐えかねたのだろう。ああ!大きく動いたらダメだ!穴が広がったらどうするの!
私は心の底から笑い転げた。聞けば、彼は私と同じ歳だそうだ。大学にいる同い年の男の子といえば、酒やらタバコやら女やら。バイトで必死に稼いで買ったおしゃれ古着やバレンシアガを、大切に大切に着ているというのに。

彼は全身黄色のスパンコールの衣装で、ズボンが裂けているのだ。日常ではあり得ない状況に、涙が出るほど笑った。
そして、繰り返し繰り返し見た後、ハッと。彼はトラブルの中でなお必死にショーを続けようとしている、ということに気がついた。
私は10年ほど吹奏楽部だったので、「The Show Must Go On 幕が上がれば最後までやり遂げなければならない」精神・「お客さまのため、自分を犠牲にしてでもショーを中断しないこと」を理解していた。
ズボンの穴は大きくなっていく。ほぼみんな気づいている。笑っている客もいたかもしれない。隠す術もない。その時どうするか。
「それでも笑顔で絶やさずアイドルでいること」

私の中で何かが弾けた。

この人は信じられるアイドルだ。来週も必ず見よう。彼は、これから起こるピンチをどんな風に乗り越えるのであろうか。
私は笑い転げていた体勢を直し、静かに正座して、涙を拭いてからテレビに釘付けになった。

そこから私のセクガル人生が始まった。
まずはジャニオタコミュニティメンバーに先日の大穴ケンティーを見せ、私と同じく転げ回っている3人を捕まえた。
4人で初めてライブにも行った。生でケンティーを見た。プロ意識で吹っ飛ぶほどの衝撃を受けた。ビリビリと感じる覇気のような。
生のケンティーを感じたくて、東京まで何度も遠征した。

SexyZoneが3人体制になった。男Never give upの「何が起きているの」に「こっちのセリフだわ!」と突っ込んだ。

その後も、何が起きているのかよくわからないことがよく起こった。
よくわからないことは、わかるところだけ信じることにした。

その中で勉強したり、バイトに行ったり、就活したり、彼氏ができたり、別れたり
私たちの日常は何の滞りもなく進んでいった
「推す」ことでしか、彼を救うことができない。オタクの無力さも知った。

2017年4月、私は就職と共に上京することになるが、「SexyZoneのLIVEに当たってしまったわ〜(チラッ)」と言っては友人たちは度々東京にやってきた。
もはやライブに行くことは、大切な友人との儀式であった。

学生の頃は金銭的に諦めていたこともあったが、毎年「SexyZoneに会えるかもしれない」という事実は、私を確実に生かしてくれた。
横アリまで向かうあの道が、終わった後のあの空気が、友人の表情が、どうにか私を励ましてくれた。
その道が東京ドームに変わったとき。どんなに嬉しかったことか。

ドラマが決まったとき、バラエティーが決まったとき、歌番組でバズったとき
なんか、自分じゃないのに、とても嬉しいこと

会社にどうしても行きたくないとき、ちょっと人生が嫌になったとき、
離れたところにいたくせに、絶対に励ましてくれる、大切な人

彼がSexyZoneを辞めると言ったとき。
ちょうど私も人生の大きな決断をしていて、「ああ、わかるよ、そんな時期だよね」と思った。
お顔がそんなにかっこいいのに、泥臭くて、自己肯定感が低くて、プロ意識が高すぎるあなたが、このまま30代もSexyZoneでいてくれるのか、ずっと少し不安だった。

「決める」こと。「決める」タイミング。
素晴らしい決断だった。
寂しすぎるけれど、私は全く後悔はありません。

今後の人生で、
「手羽先を見たとき手羽先ダンスしちゃおうかな」とか
「ピチピチのレザーのズボンにブラシンかよ!と思ったり」とか
「スタバのモバイルオーダーの名前KTTにしちゃおう」とか
「ストップって言うときセクシーストップって言おうかな」とか
今までみたいに、なんてことないタイミングで
あなたのことを思い出して生きていくんだろうなぁと思います。

話したこともないけれど、
一緒の時代を生きられて本当によかった。
最高の20代をありがとうございました!

お疲れさまでした。
私も最高の30代を迎えます!