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濃密すぎる3年+α

残念。今年も北海道勢が初戦で2チームとも敗退してしまいました。

私の祖先は北海道、さらに祖先は宮城。

なんとなくですが県民性・道民性がわかるので、なんとなくわかります。

なかなか勝てない。でもしょうがないって思ってしまうのです。

「北国は優勝できない」を打ち破る

だからこそ、高校野球史に燦然と輝く、駒大苫小牧高校の夏2連覇。

3連覇がかかった年も準優勝。世間からは「2.9連覇」と表現されていました。

私の実家は北海道の南部にあります。だからすごい親近感があります。本当にこれは偉業です。

子どもの頃から(もう50年近く前ですが)とにかく高校野球は見ていましたが、大会の日数を重ねるごとに北国代表校は姿を消していきます。

ある年、第3のふるさと(一時期住んでいたこともあるので)、宮城代表の仙台育英が決勝戦まで勝ち進みました。あと一歩。しかしそこでも勝てなかったとき、「これは北国はしばらく優勝するのは難しいか」と感じていました。

それを覆したのが駒大苫小牧高校でした。

決勝戦では、春の優勝校・済美を破っての優勝。北海道が優勝する、というのは普通では信じられないことでした。

雪の時期が長い冬場は外での練習がほとんどできません。なので私は「室内練習場が完備されている学校じゃなければ、北国では勝てない。ということはお金の潤沢な私立高校しかチャンスはないのか」と思っていました。

その固定観念を、駒大苫小牧は打ち破っていました。雪上ノックを敢行していたのです。

衝撃の連続

佐賀からやってきた監督だからこそ見えたこと、できたことが多々あります。

私も北海道人の血が流れているので、なんとなくではありますが北海道の人の人間性が分かりますが具体的に言葉にできないところがありました。

この本ではそれが言葉で説明されています。多くの方の証言をもとに書かれているので、説得力もあります。

そして迎えた2004年の夏。優勝候補を次々と破り、春の優勝校・済美高校を最後に破っての優勝。

選手は北海道出身者。

これは現実か。そんなことがあっていいのか。

東京在住の私も熱狂しました。

しかし、その裏にあったもの

早稲田実業との決勝戦については何度もドキュメントとなりましたが、田中将大選手はもうこれについては多くを語りたがっていないように感じます。

この本を読むと、その理由の一端がわかる気がしました。

百分の一のプレーで負けたのなら千分の一、万分の一までこだわる

あるプレーについて、

そのような捕手のカバーが試合で生きるケースは年間一度あるかないかだろう。同じ疑問を持った平川が香田に問い質すと、こう返されたという。
「それが実力なんだよ。その一回あるかないかわからないプレーのために、それができる選手じゃないとダメなんだ」

果てしない練習量、が連想されます。

不祥事にも見舞われました。

高校野球で不祥事が明るみに出る場合、その約八割は控え選手の親による告発だと言われている。しかもチームが好成績を出したときに集中する。駒大苫小牧のケースはさておき、チームが活躍すればするほど自分の子どもが試合に出られないという不満は大きくなるし、そういうタイミングの方が自分の発言が「爆弾」になることを親も理解しているからだ。

クラブの運営は本当に難しい。そう思わざるを得ません。

3連覇をあと一歩で逃した後は、

初優勝から七〇〇日余り、ようやく勝ち続けることから解放され、憑き物が落ちたようにさっぱりとした表情をしていた。
「楽なんだよね、やっぱり。……負けて。優勝と準優勝がこんなに違うものなのかって。人は『何で勝てるんだ』とか聞くけどさ、俺だってさっぱりわからないよ。もうそんなことも聞かれないだろうし。そういうストレスから、やっと解放されたよ」

そして突然の辞任撃になります。

「俺が大人の常識で動く人間じゃなかったから、あそこまで高校野球に純粋になれた。何かあったとき、大人を出したら選手はついてこなかったと思うよ。俺は自分の教え子に恥じるようなことは一切していないから。大人社会から見たらバカなやつに映ったかもしれないけど、だから俺は優勝できたんだよ。それは何回も思った。ただ、だから、辞めなければいけない人間なんだろうなとも思った」

ここまで詳細に描くことができたのは、「監督と筆者の熱」、これに尽きると思います。

映画化希望

ここまで物語ができあがっている以上、実写化で映像化してほしい。

全然違うジャンルですが、この本を読んだとき、私はアビエイターを連想しました。

はちゃめちゃなんだけど物事を強引になし遂げていく。主人公のものすごい熱量、それらが重なって見えてしまいました。

アビエイターぐらいすごいキャストでやってほしいなぁと思ってしまう。それほどの物語だと思いました。

最後までお読みくださいましてありがとうございました

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