スカイベリー

食わず嫌いは直せるの? 究極のフルーツサンドを求めて三千里

フルーツサンドってお好きですか?
ゴロッと迫力あるフルーツと真っ白な生クリームが「萌え断」なキラキラフードで、いまちょっとしたブームなのだそうです。

いかにも女子が好きそうな食べ物ですが、わたしは、自ら進んで食べたいと思ったことがありません。
パンは好き。
フルーツも好き。
生クリームは大好き。
なのに、これらがセットになると広がる「コレジャナイ」感があるのです。

よく考えれば、材料はほぼショートケーキと同じです。いったい、わたしの中に、なんのこだわりがあるのか? はるかむか~しに、一度だけ口にしたことがあるのですが、これがたまたまおいしくないもので、高級フルーツサンドなら感動して涙を流すのかもしれない、とも思います。

いやでも、そもそも、なぜパンにフルーツをはさむの?

それを言ったら、ホットドッグだって、「なぜパンにソーセージをはさむの?」となりますが、これは、パンという“主食”とソーセージという“おかず”を一緒にしているから許せるような気がします。和食の“丼もの”と同じカテゴリーなのだと考えればいい。

丼ものとサンドイッチが、どちらも主食とおかずを同時に食べられるメニューなのだとすれば、丼のタネやツユダク感で好みが分かれるように、フルーツサンドもフルーツやクリームの量によって、納得できるものがあるのかもしれない。

こだわりの習慣というほどでもないのですが、どちかというと、白黒ハッキリさせたい性格なので、気になることがあるとそのことばかり考え続けてしまいます。「何を、どうすれば」わたしが食べられるフルーツサンドになるのか。これは、探すしかない! できれば、わたしもおいしく食べられる「究極のフルーツサンド」をみつけたい!

現在通っている明日のライターゼミで、「自分のこだわり」について書くというお題が出たので、謎を解くべく、数十年ぶりにフルーツサンドを食べてみました。
今回はその結果をレポートします。

 メルヘン

まずは、100種類以上ものコレクションがあるというサンドイッチ店から。
「フルーツサンド大好きです!」という、友人・Iちゃんに勧められて挑戦してみました。

(仁王立ちのイチゴと乙女なキウイみたいな立ち姿…)

クリームの量:少ない
1切れの幅:4.2cm
パンの幅:1.2cm
(※計測はmame。実際のサイズとは違う可能性があります)


イチゴとオレンジの酸味と、キウイのツブツブ感、3つの味と食感が楽しめます。パンは後味の良さを追求しているとのことで、とてもさっぱりしています。
なるほど、これがフルーツサンドのスタンダードなのですね。

 神戸屋パン

大地と水の恵みを受けた小麦粉の、本来の味を楽しめるというパン。「メルヘン」のものよりもパンに厚みがあります。

(三角サンドは持ち運ぶ間に姿が変化してしまいます…)

クリームの量:少なめ
1切れの幅:3.8cm
パンの幅:1.6cm
(※計測はmame。実際のサイズとは違う可能性があります)


「パンがおいしい!」

一緒に試食してくれた友人4人(全員20代前半)が口を揃えて歓声を上げました。フルーツサンドを食べまくるはずが、パンに感動するとは……。でも、確かに、本当にパンがおいしい。フワフワと柔らかいのはもちろん、すごく香りがいいです。

さすが、おいしいパン屋さんのパンはおいしい。
当たり前の結論が出てしまいましたが、やはり、パンの味は全体を左右する可能性がありそうです。この辺りに突破口があるのかもしれません。

 ポンパドール

横浜生まれの焼き立てパンのお店です。
ちょうど「フルーツ・マルシェ」を開催中とのことで、普段はないフルーツサンドが並んでいました。

(とうとう、ひとりで立てなくなりました…)

クリームの量:少ない
1切れの幅:4.3cm
パンの幅:1.2cm
(※計測はmame。実際のサイズとは違う可能性があります)


こちらはもっちりしたパンに、キウイ、ピンクグレープフルーツ、マンゴーがはさまっています。今までイチゴメインのサンドイッチを食べていたせいでしょうか。何かが違う。
複数の果物が入っている場合、1種類ずつかじるのがいいのか、一緒に食べてマリアージュを楽しむのか、悩んでしまうのですが、グレープフルーツは主張強めでした。やはりフルーツ同士の相性も大切なようです。

 フタバフルーツパーラー

果実店「フタバフルーツ」とコラボレーションしたフルーツパーラーです。フルーツミックスサンドは豆乳入りクリームとのことで、見た目もこってり重量感があります。つまんだ時にもずっしりしました。

クリームの量:多め
1切れの幅:3.7cm
パンの幅:1.5cm
(※計測はmame。実際のサイズとは違う可能性があります)


お味はというと、とても繊細な甘さで、小さめフルーツが食べやすい。豆乳のコクなのでしょうか。クリームにとても味わいがあって、パンとよくなじむ感じがします。こじんまりしているのに、腹持ちがよさそう。
このサンドイッチには、バナナ、キウイ、イチゴ、パイナップルがサンドされていました。ここで、あ、何か気づきそうな気がします。

 やわらかシロコッペ

名古屋発祥のコメダ珈琲が作った白くてしっとりしたコッペパン。なんと、フルーツをはさんだフルーツコッペパンがありました。

クリームの量:少ない
幅:6.7cm
高さ:5.7cm
(※計測はmame。実際のサイズとは違う可能性があります)


中にはみかん、パイナップル、マンゴーが入っています。オレンジではなく、みかんという辺りがコメダらしい。
このコッペパン、名前のとおり本当にしっとりしていてやわらかいです。具の味を邪魔しないコッペパンの偉大さを感じることができました。
ですが、何か違和感が残ります。

ずっと感じていたもやもやの原因が、この後、具だくさんのサンドイッチを食べることで判明しました。

 フルーフ・デゥ・セゾン

こちらは、ちょっと変わり種。クロワッサンのフルーツサンドです。市場から直送されたフルーツを使用しているとのことで、今回は、上からバナナ・キウイ・オレンジ・リンゴ・イチゴ(季節や仕入れ状況によって変わるそうです)が入っていました。今まで食べた中で、一番種類が多い。

クリームの量:少なめ
パンの幅:6.8cm
長さ:10.0cm
(※計測はmame。実際のサイズとは違う可能性があります)


フルーツがおいしい! とてもみずみずしくて、さくさくいけます。クリームが少なめなのは、こんな効果を狙っているのかも。そして、ここで発見。

バナナは違う。

果物としてのバナナは大好きですが、フルーツサンドの中に入っているバナナは「コレジャナイ」感強めの存在でした。
バナナのヌッタリ感がそうさせるのかもしれません。どうやら、他のサンドイッチに感じた違和感は、これが原因だったようです。つまり、ヌッタリ系果物は、わたしが追及する「究極のフルーツサンド」には合わない可能性が出てきました。

 八天堂

トロトロのクリームパンで有名な八天堂に、イチゴ入りクリームパンが!
イチゴクリームではありませんよ。クリームパンの中に、そのままゴロンとイチゴが入っているのです。

クリームの量:超多め(といっていいのかどうか)
幅:6.2cm
高さ:3cm
(※計測はmame。実際のサイズとは違う可能性があります)


えっと、これは……クリームパンです。
フルーツ入りの大福が、イチゴが入っていようと葡萄が入っていようと、あくまで“大福”なように、クリームパンの中に何が入っていても、やっぱり“クリームパン”。
思いがけないところでクリームパンの主体性に出会ったような気がしました。

 フルーツダイニング8010

栃木県は宇都宮に本店があるというカフェの人気メニューが期間限定で出てますよ、という情報を得て、恵比寿駅で購入しました。(催事は5月31日まで)
手の熱だけで溶けてしまうというオリジナルの生クリームが、ああ、もう、すごい!

クリームの量:特盛
1切れの幅:5.3cm
パンの幅:1cm
(※計測はmame。実際のサイズとは違う可能性があります)


そして、こちらの特大イチゴ。「スカイベリー」という品種で、果実が大きく、甘みと酸味のバランスがよいという特徴があるのだとか。ビニール袋を開いた途端に広がる、幸せな香り!

これはさすがに、文句なしに全面的に「おいしい」と言えそうな予感がします。

「クリームおいしい! イチゴおいしい!」

一緒に試食してくれた友人4人(全員20代前半)から、感動の声が漏れました。大量のフワトロな生クリームは、口に入れた途端、スルンッと溶けてしまいます。そして、イチゴが本当においしい!

ただ。

だからこそ。

別にパンではさまなくてもよいのでは……という素朴な疑問が消えない。

サンドイッチ=主食とおかずをセットにした“丼もの”と思ってかじってみたら、デザートだったという意外性を受け入れるかどうか。わたしの度量が試されているのかもしれません。意外性というか、裏切られた気分というか。

そんなことを考えつつ、サイトを見ていて、気になる一文を発見しました。

「8010では、フルーツサンドは食事としてご提供させていただいております。デザートは他多種ご用意してございます」

し、食事? こんなにスイーツ感あふれる食べ物が!?

友人に聞いたところ、
Iちゃん(フルーツサンド好き)「全然主食でいけます! しょっぱい・しょっぱい・甘いの順にループすれば、無限に食べられそう!」
Mちゃん、Kちゃん(フルーツサンド初体験中)「ええええー、これはデザートだよ」
Hちゃん(フルーツサンド経験あり)「食べられるけど〜、その組み合わせは無理があるよ」
と、意見が分かれた上、おやつ代わりに鶏肉の柚子胡椒焼きを食べながらサンドイッチをつまむIちゃんの食生活にまで疑問が飛び火してしまいました。

早く話題を変えねば。
ということで、できれば「フルーツサンドはヘルシーでバランスの良い食べ物」という結論が出るといいなと思っていたわたしは、管理栄養士でもあるHちゃんに聞いてみました。

わたし「栄養のバランス的にはどう?」
Hちゃん「え⁉ バランスってなんの? これ、炭水化物と脂質しかない」

だよね~。泣
栄養学の分類上、果物は炭水化物に分類されるそうで、パンとフルーツの組み合わせだもん。当然の結果でした。

おいしいフルーツサンドの条件

ここに挙げた以外にもいくつか食べたので、10種類以上のフルーツサンドを試したことになりますが、これ以上書いてもムダな気がしてきたので、この辺りで一度まとめてみます。

フルーツサンドがあるお店はだいたい2種類に分かれます。そして、それぞれに特徴がありました。

・パン屋さん系:パンがおいしい
・フルーツ屋さん系:フルーツがおいしい

普段、わたしは校閲レディとして仕事をしており、新人ライターの記事を読んでは「対象への愛が足りない!」と編集視点からのアドバイスもしているのですが、このまとめはヒドイ。「おまえはどないやねん!!」と返ってくる刃がとても痛いです。
ああ、みんな、ごめんね……。

「究極のフルーツサンド」の条件

なかなか理想の品と出会えないので、パンの厚みとクリームの量を軸に表にしてみました。

表にしたことではっきりしました。わたしでもおいしく食べられそうな「究極のフルーツサンド」の条件は、ピンクの位置のようです。条件は下記のとおり。

・パンは薄め
・おいしいパン
・生クリームは多め
・フルーツはイチゴなどの酸っぱい系

生クリームが多くなればなるほど、感覚としてはデザートに近づきます。そこで、パンを薄くして“主食”感を減らし、主食でもなく、丼ものでもなく、純粋にデザートとして食べれば、おいしくいただけるのではないかという仮説をたてました。これなら、「おまえはどっちに分類されるねん」という、立ち位置がはっきりしないことへのもやもやも解消できそうな気がします。

甘さ抑えめクリームだと、“主食”感が強くなってしまいそうなので、バランスが重要だと思われます。

ただ、すべての条件を満たすには、自分で作るしかありません。調べたところ、フルーツサンドを作るコツは、

・果物の水気をしっかり切ること
・マスカルポーネチーズを加えるとプロっぽい味になる

の2点。
そして美しい萌え断を作るには、

・パンを冷やす
・ナイフを温める

といいそうです。
そんなヒントをかき集めて、サンドイッチ作りがスタートしました。

「究極のフルーツサンド」を作ってみた

具材は潔く、イチゴの一択。
ただ、クリームは3種類用意して食べ比べてみました。
① マスカルポーネチーズ入り(さっぱり狙い)
② カスタードクリーム入り(甘いスイーツ感狙い)
③ 生クリームのみ、特盛で

そして、サンドイッチに使ったパンは、高級生食パン専門店「乃が美」の食パンです。「焼かずにおいしく」にこだわったという食パンを買いに行って、いきなり問題発生。

1斤まるごと!

条件1の「パンは薄めがいい」が、いきなりぐらつく展開になってきました。わたしとしては12枚切りの食パンよりも薄めがよかったのに。自分でカットするなんて、それは、きっと……。

そんな、大人の事情により、画像はありません。

試食の結果は、こんな感じでした。
① さっぱりしていて食べやすい
② 甘すぎました
③ パンとの相性がよかった

その他の気づき。
・カットする時、イチゴが逃げるので、萌え断にするにはさらなるコツが必要。
・イチゴの並べ方で景色が変わる。
・クリームが多いと自立できない。(だからお店のパンは厚めなのですね)
・クリームが多いとイチゴがどんどん沈んでいくので写真撮影は手際よく。
・パンの耳はない方が食べやすい。(食いちぎる時にえらいことになります)

生でもおいしいを謳っているだけあり、「乃が美」のパンは本当においしくて、生クリームとの相性もすごくよかったです。マヨネーズにも合いそうなので普通のサンドイッチなら最高の出来になりそうな気がします。今後、パンを使った料理をするなら、絶対このパンがいい。

そこじゃない感満載のコメントしかできないのが心苦しいのですが、「究極のフルーツサンド」作りに挑戦してみて、違う気づきもありました。

フルーツサンドに人生の教訓を教わる

先ほどのチャート図にもあるように、サンドイッチひとつとっても本当に幅が広くてさまざまなんですね。そして、どの味にもファンがいます(たぶん)。
いつ行っても売り切れのお店もあり、フルーツサンド人気も肌で感じました。そして、きっと誰も、これが主食かデザートかなんて気にしていない。

それより、おいしいものは、ただおいしいと楽しめばいいだけ。フルーツサンドはファジーさを抱えた存在なんだと、認める勇気さえ持てば、すべて解決する、はず。

結局、白黒はっきりカタをつけるよりも、わたし自身の寛容さを試される結果となった、「究極のフルーツサンド」を探す旅。
それでもやっぱり最後に言いたいんです。

イチゴはイチゴのままがいい。


ムダに長い駄文を最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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