『日本語の作文技術』#7
「あなたの文章には不思議なリズムがあって、ひと文字でも直すと全体が崩れそうだから修正は自分でやってください」
かつて一緒に仕事をしていた編集長から言われた言葉だ。
たしかに、文章を書くときにリズムはとても意識している。でも、“不思議”とは?
それが心地いいものだったのか、気持ちが悪いものだったのかは、いまも分からない。ただ、サラサラいきすぎないようにとだけは言われた。
「読みやすさ」はどうやって決まるのだろうか?
視認性を上げるには「読点」を使うのがよいけれど、無秩序にテンを多用したら意味不明になってしまう。
曖昧になっていた「テン」のルールを学んだのが、この本だ。
新聞記者として、多くのルポを書いてきた本多さんが解説する日本語文法は、淡々と事例を積み上げていくものだ。まず、どういうものが「悪文」なのかが分かる。
「悪文」とは、意味が取りにくい文章だ。
一度読んだくらいでは意味が分からない。誤解が生じる。そうなる原因のほとんどが、テンの位置と、修飾語と被修飾語の位置関係によって起きているという。
テンの位置については、「息継ぎするところ」とか、「感覚的に」といった大雑把な説明しか聞いたことがない気がしていたので、この本で説明されていることは目からウロコだった。
日本語文法に特化した本なので、構成や取材方法などは出てこない。この本の目的はこう書かれている。
目的はただひとつ、読む側にとってわかりやすい文章をかくこと、これだけである。
初めて読んだのは20年くらい前だが、文章を書くときは、いまもこの本で学んだことをベースにしている。
かつては就活生のバイブルと呼ばれていたが、いまはどうなのだろう?
決して読みやすい本ではないし、読んで愉快になれる本でもない。それでもメールやチャット、SNSなど、「書く」ことが圧倒的に増えた今日には、必須の教養本にしてほしいと思うくらいおすすめの本だ。
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