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【備忘録】プレーのタイミングについて考えていること 「受け手主導型・出し手主導型のタイミング」

「センスがある・ない」「フットボールIQが高い・低い」というところに想いを馳せた結果、【タイミング】【スペーシング】いわゆる「時間・空間をいかに操れるか」は超大事ですね、となりました。それぞれ【見る】ということと密接に関係している要素ですが、【見る】について話し出すと長くなるので今回は放置しておきます。またサッカーとフットサルでのタイミングの捉え方の違いも感じることがあるので、今回は【タイミング】についてここ2〜3年の指導を通じて得たことを深掘りしていきます。


①「タイミング」ということば

【time】名詞:時、時間 
    動詞:〜の時間を合わせる

 timing(タイミング)とは「動詞のtime+~ing」で名詞化され、「時間を合わせること」という意味になります。
 抽象的な表現になりますが【味方にとってやりやすいタイミング(気が利くプレー)】や【相手にとってやりにくいタイミング(いやらしいプレー)】でプレーできる選手は身体能力とは別に、センスがある・フットボールIQが高いと判断できる一つの要因かなー、となんとなく思ってます。現在、高校生を指導する中で、体の大きさや身体能力といういわゆる「アスリート力」を測るのと同時に、「気が利く、味方を上手くする、より良い状況を作り出せる」のような意図のあるプレーという、目で直接見えにくい部分も大事にしたいなと。選手の誰がいつどのぐらい伸びるのかなんて、指導者が伸びしろの限界を決めるべきではないですし、関わっている選手全員が上手くなってほしい、その上でサッカーにもっとのめり込んで欲しいという思いが年々強くなっている中で大事にしている視点です。

 その目に見えにくい要素の一つとなるのが「いつプレーするのか」即ち「プレーのタイミング」。「プレーのタイミング」とは、「タイミングを逃さない」だけでなく、「より良い状況を作るためにタイミングを待つ(フットサルのライセンス講習ではテンポライズと呼ばれてますね)」または「タイミングが合わなくてもまた違うタイミングを作り出すことができる」といった【タイミングを操る能力】と考えています。


 これはあらゆる競技だけでなく日常生活にも置き換えることができると思います。「タイミングを先読みができているか、周りの空気が読めているか」という部分ですね。例えば後輩とお酒を飲みに行った時に、何も言わなくてもジョッキがある程度減ってきたら3杯目までビールを頼んでくれて、4杯目で勝手にコークハイか梅酒ジンジャーを頼んでくれるような「気の利いたプレーのタイミング」があります。笑

②タイミングの合わせ方の違い

 独学でフットサルを学んでいた頃に感じていた違和感がありました。
 フットサル指導者の方々と話している時に、「ボールを持っていない選手の動きにボールを持っている選手が合わせる(受け手中心)」という発想がフットサルの基本となっているのだなと。
 でもサッカーの指導を中心に過ごしてきたその頃の自分にとってその感覚は当たり前ではありませんでした。なぜなら「ボールを持っている選手のボール状況によってサポートを変えるべき(出し手中心)」という考え方でサッカー人生を過ごしてきたので。
 もちろんエリアや状況に応じてケースバイケースはあり、また「サッカーとフットサルの指導者全員がそうである」と括ることはできません。でもサッカーとフットサルのプレーの判断基準の根底に「ボールを持っていない人」「ボールを持っている人」の関係性に違いを感じることが多々あります。
 これは簡単にいうと「スペースを空ける、使う」といった【スペーシング】という考え方にもつながる関係性です。

a.出し手主導型:「ボールを受けた、または持っている選手がフリーのタイミングで裏へ走る」のとb.受け手主導型:「裏へ走った味方へ出すために、ボールを受ける、または持っている選手がタイミングを合わせる」のでは同じ行動を取ったとしても発想が全く違います。良し悪しではなく、競技の特性、競技者の人数や広さの違いが発想に影響しているのかもしれません。(バスケットボールやハンドボールってどうなんでしょうか。)

③サッカーにおける【受け手主導型】の発想

 これが2019年、2020年、フットサルの指導に距離を置きサッカー部Bチーム(岡山県リーグ1部)の指導に専念していた2年間、追求したことの1つでした。いかにして「サッカー選手として、人として、一皮剥ける」ことでAチームに上がって活躍できる選手になるのか。そのためにどうすればいいのか。見えやすい表面的な「フットサルがサッカーに活きる」ではなく、見えにくいマインドセットの根底の部分、本質的な部分の発想を変えることで成長のための刺激を与えたいと思っていました。
 フットサルを指導してきた経験から「これまでのプレーに加えて、受け手主導のタイミングでもプレーできるようになれば選手はさらに成長できる」と思っていました。ただ、この大きなテーマに対し、試行錯誤した点があります。それは「How」の部分。「どのようにして」【受け手主導型】の発想を落とし込んでいくのか。
 時間はかかりましたが、辿り着いたのが「攻撃の13の原則」でした。特にサイドの原則「ポイント、ヨコ、サンニンメ」を突き詰めていくと、相手がサイドで強度を上げて奪いに来ても「3人目」がタイミングを合わせてプレーに関わるので、余裕を持ってボールと相手を意図的に動かせるようになっていました。(もちろん技術的なミスはたくさんありますが受け手を見ようとする積極的、意図的なプレー回数は増え、選手自身が見てなかったことを課題にあげることが増えました。)
 また「ワンタッチのタイミングは受け手主導」で浸透してくると「ワンタッチタイミング」と「ツータッチタイミング」、そして「出すフリからドリブル」といったタイミングを使いこなせる選手たちのプレーが明らかに変わったのを覚えています。出し手は常に受け手を見ていないとプレーが成立しません。また出し手だけでなく、受け手もワンタッチなら「足元(背後)」、ツータッチなら「背後(足元)」、ドリブルなら「その間に動き直し(スペースを空ける)」というように受けるタイミングを連続しないとどん詰まりになります。でもどんどん動き出しのタイミングが合うようになってくると、連続したマーク外しや複数人の連動したボールのない動きが増えていきました。
 こういった【タイミング】と【スペーシング】の意図が合う中で、連続する複数人でのプレーこそ「フットサル」ぽいなと見ていて思いました。

④まとめ「全体はバランス、細部は工夫と拘り」

 相手もいるサッカーという競技において「このシステムでbuild-upして、こうやって崩していく」という指導者のイメージと選手のプレーが合わないことは普通だと思います。(トップカテゴリーや上手い選手、プレッシャーを感じない選手たちが集まれば全く話は変わりますが大抵の指導者はそうではないはずです。笑)

 だからこそ「11人の攻撃をどう細かくデザインするか」よりも「11人という全体のバランスはざっくりと抽象的に、目の前の相手との駆け引きには拘りを持たせる」という発想でいいのではないかと個人的には思います。「全体は偏らせずにプレー原則によるバランスを重視する」ことは、逐一指示を出さなくても選手のプレーの意図が合うようになったり、合わなければプレーの目的と原則に立ち返って修正する自発的なコミュニケーションが増えます。(これが浸透すると試合中の指導者の仕事はなくなっていきます。。。)「ざっくりすることでプレーモデルに個々に与えられるプレーの余白ができる」と思っています。育成年代はこの余白が意外と大事。
 また目の前の相手との駆け引きとは「受け手主導のタイミングで動き出し→味方とタイミングが合う+守備者の読みの逆をいく」ような先手を常にとるプレーです。それらが連続していくと「駆け引きのあるサッカーは楽しいものである」と自発的に動き出す選手も増え、見ている方も「選手が何を考えて狙っているのか」という頭の中を読むのが面白くなってきます。さらにはその中から駆け引きのスケールが大きい大人な選手が出てくると、彼らは監督的発想も持ち合わせており、「90分のデザイン力」も高くなってきます。「90分のデザイン力」とは90分後にいかにして勝つかを考えてプランニング&相手チーム全体と駆け引きしながらストーリーの微調整ができる力です。(一昨年の夏の遠征時、バスの運転以外にほとんどすることがなかった気がします。遠征中、全勝とはいきませんが、試合を通じて自分たちでPDCAサイクルを回す姿を見て、もっと伸びるなと感じましたし、それはそれで楽しい経験でした。)

 「ボールを持っている人がフリーだから優先順位は裏をとること」だけでなく、「ボールを持っていない選手が受けるタイミングの主導権を握り、それに合わせて全体も動き出していく」という発想でプレーをしていくことで【見る】【意図を持つ(考える)】【味方のために走る】というサッカーで必要なプレーが勝手に増えていくのだなと思いました。
 「未来を先読みして良いタイミングを測れるか、周囲の空気を読みながら合わせて動くこと(スペーシング)ができるか?どうすればできるようになるのか?」今後も現場で追求していきます。

※ 自分の場合、Aチームの監督ではないのもあり、「自分のチームを作る」より「いかにして選手それぞれの特性を伸ばすかに向き合って考えることができる立場としての発想」という視点で考えたものとして参考にしてくださると幸いです。

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