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KOPE's逆噴射大賞19:投稿作品ライナーノーツ/あるいは反省会

ほう、とため息をひとつつき、再び手書きの地図に目を落とす。
自由商業都市・note市の大通りのひとつ、小洒落たサロンやカフェーの並ぶ「エッセー通り」。その喧騒を抜けて三叉路を左。暫く進むと次の通りに出る。ここが「小説通り」。右に曲がりまた真っ直ぐ行けば「ダイハードテイルズ・シアター」が見える。
ここまではよし。目的地は近い。

だが劇場前を過ぎてふたつ目の路地……つまり進むべき道をのぞき込んだとたん、俺の足はぴたりと止まってしまう。そこはそれまでの清潔な町並みとは大きく様子が違っていた。薄暗く、建物は苔生し、雑多な荷物が野放図にはみ出ているという有様で、言うなれば「街の裏の顔」といった雰囲気が強く漂う。
俺はためらいと戸惑いのまま、もう一度地図に目を落とした。
……迂回路は、ない。手が汗ばみ、鼓動が高くなる。意を決した俺の足が一歩進むごと、ビール瓶や吸い殻、空薬莢などのゴミが触れる。木箱に腰掛け一服していた老爺が、値踏みするようなじとりとした視線をよこし、くくくと忍び笑いを漏らす。
本当にこの道で合っているのか?また確認。合っているな。残念ながら。

歩き始めて間もなく、目当ての建物は見つかった。目立つからだ。
テレビの西部劇に出てくるような木造の店構え。「酒。食事。パルプフィクション。BAR Mexico」。素っ気なくそれだけが書かれた看板を確かめ、深呼吸をひとつし、両開きドアを勢い良く押し開ける。

パルプ書きを募集してるっていうのは、ここかい
俺はカラカラに乾いた口を開け、できる限りタフを装って言葉を絞り出した。
ざわめきがたちまち小さくなり、無数の目がこちらを向く。振り返ったのは外観から想像できるような客層……19世紀末アメリカ風のガンマンや紳士、だけではない。
現代的スーツのビジネスマン、カジュアルスタイルの者もいる。あちらにあからさまな裏稼業者がいるかと思えば、こちらには詰め襟制服の者。全身タイツにエネルギーラインを光らす、SFあるいは特撮じみた者もいれば、剣士にカンフー行者、魔術師風などファンタジックな装いの者。老若男女、動物、妖物、奇々怪々。
ただ、野心に満ちたギラつく眼だけは一様に同じだった。

さて、勢いこんだはいいがどうしたものか。
俺の背を一雫の冷や汗が流れたその時、奥の暗がりからやおら大きな影が立ち上がった。
その人物が一歩、二歩と歩みを進めると、次第にその姿が明らかになる。一際体格のいい、真の男という言葉が具現したようなタフガイ。
彼は店のちょうど中央で足を止め、口を開いた。
よくきたな。おれが逆噴射聡一郎だ。


やあ、元気してるか。俺だ。
皆さんは逆噴射小説大賞2019を存分に楽しんだだろうか。
かのイベントを引き金として10/8を境に第二次パルプ作家大爆発がnoteに発生、彼らの生み出したパルプフィクションが大気を満たし地球の環境を激変させた。
そして今や彼らは一月の振り返りを済ませ、来年に向けてのPractice、あるいは連載の再開、あるいは新規連載の検討という新たな地平へ進出せんとしている。

それに習い、俺も振り返りと反省をつらつらと書いてゆくことにしたのだ。


🥕🐷🍲🐮🥬


一作目:イモニ・ウォーズ2119

芋煮だ。
そういうことだ。

未来なので芋煮重機も人型にパワーアップ。それが鹵獲され牙を剥いた。三日月をつければ何でも仙台名物さ。
なんにしても芋煮どうのごときでマジに戦ってる、それだけの話だ。
一応地域間対立というテーマは二作目に繋がると言えなくもないか?

これを投稿した時は完全に冷やかし賑やかし勢のつもりだった。だから相当ふざけている。
しかし思ったよりも好意的な反応を頂けたため俺は完全に調子に乗り、残り四作も書いてみることにしたのだった。


⛩🏖🏯🎡🏔


二作目:Gravedigger: or Last Tourist

ベースになったのは「書き出しだけ大賞」なる企画に応募したこのツイート。
まあ、この時点では「観光資源」は争奪しようがねえだろ!というしょうもない一発ギャグである。
確か名古屋は何でも持っていくという岐阜の方の怒りのツイートを見て思いついた……んだったはず。
時間は過ぎこのアイディアの存在はすっかり忘れていたが、ネタ出し中の
・ディストピアものやりたい
→しかし舞台が失敗した社会主義国では平凡だなあ
 →なら成功した世界での新たな問題というのは?
  →完全オートメーション化社会
   →余暇を持て余す人で溢れるな
    →娯楽……観光!
という連想ゲームの最中このツイートを思い出し、お話にしてみたというわけだ。

投稿した五作の中では最もスキ数が多く、発想がいいというホメホメの言葉も複数頂いてしまった。嬉しい。ありがたい。

ゆるキャラロボット兵器の解説の下りはちょいと冗長かもしれない。冒頭で二つも説明パートが入るのはスピード感が無くなって良くないな。
いちいち解説しようとする癖は早めに直さなくては。

なお具体的なプロットがある訳ではないが、冒頭800字は本編の少し昔の時間軸のつもりで書いている。
勝者無き戦いは続き……文化はもはや残滓しか残らない。そしてそんな世界を埋葬者、あるいは最後の観光客が周る……そんなイメージだ。

……いつの間にかポスアポものになってるな。
観光パンク部分を大事にするのなら、いっそイモニウォーズに合流してしまうのがいいかもしれない。


🐴🕵🏻🏜🧟🧛🏻


三作目:We“can't”sleep:保安官補佐パトリックの覚書  『Snake oil ①』

西部劇×ホラーだ。ピンカートン探偵社の一員、パトリックが奇っ怪な事件に挑む。
プロットを組む練習としての色彩が強い一作で、解決編まで一応のプロットを作った上で書いてみた。唯一章タイトルまでついているのもそういった事情だ。

とにかく掴みとしてフックを作ることも第二のテーマだったが、どうにも「何処かで見たなあ……」という印象が拭えない。キャラクターたちもあまり個性が立っていないし。一人称でそれは痛い。

お話としては平々凡々であまり言うことはないが、それ故に習作にはちょうどいいかもしれない。練り直してみよう。


🚂🌡✈️📞💂‍♂️


四作目:『英雄は帰らじ』

読んでの通り、ファンタジー×WW1というコンセプトの作品だ。
「魔法でボンガボンガ爆破できたら、実質砲兵の仕事が出来るのでは?」という思いつきから「魔術の煌めきだけが失われていない」というフレーズにたどり着き、そこから後はすぐ完成した。元ネタは言うまでもなくマティーニおじさんの例のやつだ。
あとちょうど異修羅の物理書籍を読み、ファンタジー世界で戦記物をやりたくなったのもある。なに?あれとは似ても似つかないなって?泣くぞ?

読み返してみると騎兵が機関銃を知らず無策で薙ぎ払われる割に開戦後数年経過している事になっていたり、毒ガスも使われていたりと、象徴的な要素を入れることに夢中になるあまり考証が不誠実なものになってしまっている。
ファンタジーゆえの事情を組み込む必要もあるだろう。塹壕を魔術で水攻めとか、土の術で均すなどの対抗策が取れるのではないかとか。飛行機や戦車の役割をやれる生き物が既にいるのでは?ではそれらへの対策ももうあるのではとか。

もし続けるとしても大幅なリファインと練り練り作業が必要そうだ。


👨🏻‍🍳🔪🦀🐟🦐


五作目:星鮮士の刃

宇宙生物、漁獲(と)ってスシ。バトル描写のプラクティスという意味合いが強い一作。

最後の一発をどうするか悩みながら、夕食のはらこ飯(鮭の炊き込みご飯イクラ載せ。そろそろシーズンオフが近いので早く宮城へおいでよ)を食べていた時に閃いたアイディアだ。
「イクラはまるで……はらこ飯はBowlの中の銀河……はっ!宇宙漁師!」
離せ、おれは正気だ。

プロト版の解説にも書いたが、ストーリーラインは宇宙の……スシ屋!が星々を巡って無茶振りを解決してゆくバトルコメディだ。
だが、応募版ではインパクトを重視し、なんのため戦っていたかが判明する所でカットした。

タイトルはわりと気に入っている。星、生、聖、製…鮮、戦、潜、選…
仮題の時点では「星界の生鮮の聖戦」とかいうクソみてえなタイトルであったことも告白しておく。
真面目なバトルものと勘違いさせるために「の刃」と付け足したが、ちょうど流行中の鬼滅と被っているのに投稿した後に気づき、微妙な気持ちになった。たぶん無意識に影響されたのだろう。鬼滅面白いから読んでね。


◆◆◆◆◆


結びに

この一月、自分で考えた物語を形にして発表する、という行為に取り組んで色々と発見があった。
引き出しの小ささ、説明癖、キャラ立てが出来ていない、会話が苦手、など……
振り返ってみると実に三本が戦争モノ(と、言えるのか?)。ここもインプット不足が露呈しているポイントのひとつかもしれない。

一言で纏めるならばとにかく経験不足だ、という事だろう。
逆に言えば(逆噴射と掛かってます、どうですか)やるだけ上手くなる時期ということでもある。Practics……Every day……今はこの新しい趣味にじっくりと取り組んでいこうと思う。

そろそろ長くなってきたしこれくらいにしよう。
また何かのおりにお目にかかる機会もあるかもしれない。その時までまたな。


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