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I was a fool , but ... #推しとの出会い#真夜中インター


何故あんなことをしたんだろう。
何故あんなことを言ったんだろう。
何故あの日、行かなかったのかな。
何故あの日、声が出なかったのかな。

私の心の中にたくさんの私がいて、私は主人公で「私」を演じている。私はなかなかに難しい役で、思い通りに演じられない。このシーンでは、この表情、この声のトーン、この身振りでやってみよう思っていても、私の身体はままならない。喉は塞がっている。

嗚呼、今日ここまでのたくさんのたくさんの私。私の影たちは泣いて笑って走って見上げて、そして、俯いている。影たちは、めったに取り出されることがない。深い水の奥底に静かに沈んでいるのだ。

そこに、光が射す。

それが私にとっての読書だ。

作品を読むと、『私が馬鹿だった時のあの気持ち』が強烈に立ち上がってくる。
読書は体験を伴う。

素晴らしい作品に、遠くへ連れ去られる。




この夏、素晴らしい企画が立ち上がっています。
『真夜中インター』

大好きなnoteの友人が集まって文芸誌を出されるのです!「インターズ」は全員、私の推しです!

このnoteでは、私とインターズの面々との出会いを書かせてください。読んだ時のシチュエーション、読む前と後でどう変わったのか。私にどんな作用があったのかどう影響されたのか。4名さま分をランダムにご紹介します。引用部分は、心を撃ち抜かれた一文です。インターズのどの作者さまのどの作品なのかは、文末に書いておきます。想像しながらお楽しみください。






居心地のよい部屋に通されて、くつろぐ。


千と千尋に出てくるカオナシ。その後のカオナシがどうなったのか私は気になっていました。「あ…」しか言葉を発せず、千尋のあとをついて行き銭婆の家にたどり着きます。物語が終わった後、彼はどうなったのかな。

彼はきっと、糸を紡いでる。お茶の淹れ方を習って、部屋をきれいに掃除して、銭婆に時に叱られ時に褒められているに違いありません。真っ直ぐに関わって慈しんでくれる人がそばにいるようになったカオナシ。「あ…」以外の言葉を発するようになったかもしれません。

そのスラックキーギター、弾き出したのね。初夏の素敵な天気に、最高に合うのよ。風がカーテンを緩やかに揺らして。時間が緩やかに流れてて。何曲か弾いて、コーヒー飲みながら、叔父さんがさらっと由里に話しかけたの

台所のカウンターに立って読み始めたのです。軽い気持ちで。スクロールする手が止まりません。この作品を読みおわる時、手にはくしゃくしゃの湿ったティッシュを握りしめていました。

私は、カオナシでした。
自分のことを理解して貰いたいのに、外に出る言葉は「別に」や「大丈夫」でした。10代の私は、陸上部の部活を辞めて帰宅した日、心の中に大嵐を抱えているのに、心配する両親に一言も不安を吐露できなかったのです。

叔父さん、そう、そう、うん、うん、そうそう、ってずっと聞いてて。相槌の語尾が下がるんじゃなくて少しだけあがるの。3時間ぐらいかな。叔父さん、なんというか、話す人が安心できる相槌を3時間。そう、そう、うん、うん、って。未だに耳に残っているな、叔父さんの相槌

傷だらけになってしまった身も心も疲れ果てた人が、やっとやっと心に降り積もった言葉を少しずつ吐き出していく。そのシーンを読んで、何故か私もあの日に戻って、心のうちを話し始めたような気持ちになったのです。何度も繰り返して読みました。

小説なんだけど、くつろげるの。

鎖鎌とかキャバクラcoffeeとかパワーワードが散りばめられていて、ど根性カエルも出てきて、ほんと、大好き。私の中のカオナシが癒されていくのを感じました。




踏みとどまる力は、皿の上からもらう。


わたしの毎日はジェットコースターに乗っているように乱高下します。娘には発達障害の特性があって、機嫌が異常に悪い時があるのです。ひとたびbadに入ると、そこからなかなか脱することができません。激しくわあわあ言う娘の横で、わたしはそこへ引きずられないよう努めて穏やかに、ひとこと一言に力を込めて娘を制御しなければなりません。そんなことが出来る人はこの世にたった一人、私だけ。本当は、娘と一緒になって、床にひっくり返って泣きながら手あたりしだいに物を投げ散らしたいです。でも、しない。

ただただ見つめていたら、当たり前だけどアイスがどんどん溶けていったらしくて、内心焦ったそうなの。お兄さんが笑いながら食べ方を教えてくれて、ようやくひと口目を食べた瞬間、『こんなに美味しいものがあるんだ!』って椅子から転げ落ちそうなくらい感激したらしいの。

毎日をどうにかやり過ごしていくなかで、心の拠り所となるようなたった一つの楽しみがあるとして、それは『読むこと』です。私の生息している世界と地続きの創作に潜っていって、そこで飲んだり食べたりしています。
このシーンには心が飲み込まれます。
“母”が入信する前、子どもだった頃にアイスを初めて食べたエピソード。それを語る“娘”は後日死んでしまって、“親友”である主人公だけが残されます。
主人公が作るバニラアイス、どんな味なのかな?

評判どおり、美味しいですね。いい素材を使っているし、作り方も丁寧なのが伝わってきます。ただ、とても寂しい味がします。ここではない遠い時間の中にある感じがするからかな。あっ、寂しい味なのは悪いことじゃないです。それは深みでもあるから。

そうか、バニラアイスは美味しい、だけじゃないんだなあ。「遠い時間の中にある感じ」かあ。
そうやって読んでいると、その物語の中で月の光を浴びて銀のスプーンを手にし、アイスを掬い取って口に入れているかのようです。冷たさと甘さが呼び覚まされて広がりました。

もう、大丈夫。

どうにか、踏み留まりました。
力をもらいました。

パワー。
(なかやまきんにくんじゃないよ)




目を逸らし続けてきた気持ちに、note の作品を通して気づかされる。

私には、いまだにどうしても書けないテーマがあります。それは、母についての創作です。もう亡くなって随分経つけれど、大好きだったゆえに、心に広がる風景が痛々しくて取り出せないのです。言葉を紡ぎ出そうとしても、どうしても手が止まってしまいます。
そんな私の代わりに書いてくださったのではないかしら、というような小説があります。

受験のときにちょっとだけ通った塾の講師の人がお焼香に来たそのとき、わたしの悲しみは一気に溢れた。涙が止まらなくなって、息ができなくなって、祖父に連れられて会場をでて、葬儀場のトイレにこもって涙が出てきた。
「あんな人までちゃんと来てるのは、やっぱりわたしのお母さんが死んだからなんだ」

「分かる」
脳内に強く閃光が走ります。あの時の気持ち。
母が死んでしまった実感がなくて、スクリーンに映された映像のように人々が動いている式場でペコリペコリとお辞儀だけ繰り返していた私。

そのときだった。
そのときにはじめて実感したんだと思う。

このnote を読んで、母の死後、やっと涙が出てきた時のことを思い出してしまいました。(そのシーンは割愛します。やっぱり書けないや)ぎゅんとあの日に連れて行かれて、目の奥の痛みやら鼻の奥のツンとした感じが蘇りました。すごく暑い日だったことも。

大好きだった。

それだけが残りました。読んだ後に、気持ちよくもう一度泣きました。ありがとうございます。

強い語調ではなく、ポツポツと話すように語られる作品はいつも、私に歩幅を合わせて寄り添ってくれるかのようです。




天使の真顔がわたしを射る。

リアルの人間関係ではわりと呑気なお人好しタイプにカテゴライズされる私。場を壊さないように笑顔でなんとなくやり過ごすことも良くあるのです。でもね、皮膚一枚を隔ててその中には頑固で気難しい、眉が八の字になってる人がいます。フフフフ(謎の笑い)。

「まわりにいつも愛を振りまいてないといけないみたいじゃない?時々変なプレッシャー感じるんだよね、暗い顔出来ないっていうか」

大学生の時、道路交通量調査のアルバイトを親友と一緒にやりました。12時間ぶっ続けで手元のカウンターを押してると、体の感覚がなくなっていって、隣にいる親友の声と私の心とカウンターを押す指先だけが存在しているかのようでした。

その時です。
「ちーさん(←私のこと)、今、本当のことを話してるよね。本当の声だね」
って言いながら、親友が私の前に回り込んできました。目の前にある親友の顔は真顔。笑っていませんでした。いつもおちゃらけていて冗談で混ぜ返すはずの親友が、ふうっと真顔になって私のことを見抜いた瞬間でした。
キャー!

「期待に応えたりお礼したり考えなくていいんだよ?一方的に受け取るだけでいいなんてすごくない?」

この作品では、二人の若い子が海辺で風に吹かれています。
「誰に愛されていると思う?」
という問いに
「太陽」
と答えたあと、引用したセリフに繋がっていくんです。

目の前に広がるのは空と海。

私のまぶたの裏側にも、瞬時にあの日の陽射しと空の色が広がります。日が落ちるその前の、斜めに差し込む光。

照らされてる。

見抜かれてる。

本当の私。

…。

作品を読むと、柔らかく包んでいるようでその実、鋭い審美眼で世界を切り取る魂のようなものを感じます。
まさに、天使の真顔。
真顔で距離を取って、自分だけの世界を構築されている。そう思うのです。




あと書き

インターズの常人離れした創作への情熱に思いを馳せます。日々のルーティンに埋没してどんどん進んでいく日常に、踏みとどまって時間をこじ開け自分と向き合う。何もない場所に自分だけの世界を立ち上げていく。それは楽しくてしょうがない反面、身を切り刻むような辛さもあるのではないかと思います。その研鑽に敬意を表します。

「インターズ」に対する所感は、あくまでも、私の個人的なものです。作品を読む時、勝手なイメージを作って読み進めているかも知れません。どうかお許しください。

インターズの文芸誌が爆誕します。とても楽しみです。楽しみすぎて、こんなnote を書いてしまいました。もし興味を持たれた方は、是非ご予約ください。














答えあわせ

一人目
山羊的木村哲也さん🐐
サインください!

二人目
小野ぽのこさん
サインください!

三人目
野やぎさん🐐
サインください!

四人目
猫野サラさん
サインください!
みんフォトのこの絵、表情がたまりません。



ハトちゃん(娘)と一緒にアイス食べます🍨 それがまた書く原動力に繋がると思います。