アバターは自らの「男性性・女性性」を引き出すきっかけ ―物理女性が男性アバターをまとったら

土曜日の配信で、初めて「1時間以上男性型アバターをまとってしゃべる」体験をさせて頂きました。
男性アバターをまとうことで、逆に美少女をまとう「バ美肉(バーチャル・美少女・受肉)」について私なりの結論を得ることができたということで、軽くまとめてみることに。

すべては自分の内にある

アバターやバ美肉は自らの中にある「男性性・女性性」を引き出すものでもあること。美少女に「なる」のではなく、「発掘する」ものであるということ。
そもそも物理女性
の場合、VRコントローラーを上にあげると腕がお胸に接触する。その状況で「男性になる」のは無理。

これが私の結論でした。
仮に俳優さん並みに完璧に演技していたとしても、演技のベースは今まで観たものや経験から成り立っています。
ウチの「アバター電話相談室」初回配信で、小林先生が「自分が今まで生きていた歴史や思考はアバターの中に必ずある」というお話をされていたことからも明らかです。
ではなぜ「アバターは自らの男性性・女性性を引き出すもの」と感じたのか、デザインプロセスと心理プロセスを追って考えてみました。

ちなみに私は現在仕事用含めて7つのアバターを駆動させていますが、今のところアバター間でのトラブルはありませんでした。


1.物理アバターコスプレ
物理アバターの特徴やお洋服の傾向をそのままアバターに落とし込んだもの。物理アバターにおける「ツッコミや批評」「wwwと草を生やす」ロール(役割)をあえて委ねたもの

2.3.4 物理ロールを抽出、アバター化する目的でデザインしたもの
メインアバターは、他者に優しくありたいなどの思考をアバター化したもの。とにかく優しく見えるように、見た目・ふるまい・声のニュアンスも細部まで気を使った

5.偶然の産物と非実在性青少年
アバター作成アプリ「Vカツ」で遊んでいたら、たまたま出来てしまったイケメン。このまま死蔵させるのは彼に申し訳ないと思い、「バーチャル息子」の立ち位置を思いつく。後日他の環境でも使えるように自分でモデリングした。カメラマンを任せていたので、まだほとんど動いてしゃべっていないアバター

6.今回のアバター デザインの過程で委ねたい物理ロールを発見したもの

7.完全なるモブキャラ 技術デモ等で使用する目的でモデリングしたもの
他者が使用することも前提に入れてデザインした

「男性」にはなれない。「美青年」という概念の視覚化にすぎない

「男性」になれないと直接的に感じたのは、腕を振り上げるとお胸に当たるからなのですが、アバターデザインを起こした当初はどう振舞いたいかもあまり分かっていませんでした。
アバターデザインを起こしていくうちにロール(役割)が固まっていき、「これは"男性"ではなく、自分の中の"美青年"という概念の視覚化に過ぎない。私の中にある"男性性"を引き出しているんだ」と感じるようになりました。

アバターデザインは「物理ベースの女の子アバターと対になるもの」としていたので、「物理要素+自分の中の何かを記号化・視覚化したアバター」と決めていました。

アバターデザインではなく、専属スタイリスト

デザインプロセスと心理プロセスはこんな感じ。

1.自分の物理要素を抽出して、ラフデザインに起こす
私はコンタクトにすると顔が濃く外国人に間違われることがたまにあるので、インド系キャラクターのように顔立ちは濃いめで目を大きく。ややくせ毛なので猫っ毛にするか、と軽い気持ちでラフデザインを起こす。

2.属性を視覚化するために、きちんと衣装デザインをする
ひとまずパーツをモデリングして、私の手持ちのお洋服に近いデザインで合わせてみる。普段使いのアバターとしては十分だけど、「どんな思考をしていて何が好きなのか」という属性がパッと見分からないので、きちんと衣装デザインをすることに。属性が分かっているとコミュニケーションしやすいですからね。
今回のケースでは他のアバターのように最初から「どう見せたいか」計算して作っていないので、私の好みがダイレクトに反映されている。これが性癖が出るというやつか・・・と遠い目になる。
この時点から、外部視点で自分の身体(アバター)を見ていることに気づく。専属スタイリストのような。

3.性癖ベースでデザインした属性に物理ロール(役割)が引っ張られていく
「高身長」「マント」という属性を付与したことで、私の中の「女の子を大事にしたい・女の子はみな可愛く庇護対象」ロール(役割)を委ねたいと思うようになる。
これは男性(性)や美青年における「支配欲」の一部であることに気づいてビックリ
する。
アバターをまとう・なじむ過程で男性性や美青年を獲得できるかな?思っていたのが、まさかデザインの時点で自分の中の男性性が表出してくるとは思わなかった。

デザインの過程で自分の男性性が表出していることを自覚してしまったので、「男性」そのものではなく、自分の中の「男性」「美青年」という概念の視覚化に過ぎない」と感じたというオチでした。とはいえ、腕がお胸に当たる、という物理的な影響がいちばん大きいですが・・・

まとってみて、さらに違う

2Dラフデザイン・モデリング・テクスチャ描き・ボーン(骨)入れ・スキニング(骨と皮膚の対応関係の設定)という過程をひとりで行い、最終的にVR機器経由でアバターをまとってみる。
「女の子に優しく」「女の子は庇護対象で可愛がりたい」属性は決まっているものの、今回の「男性アバターとしては」初めてコミュニケーションする方ばかり。
男性アバターだと、彼女たちに対してどう振舞うとちょうどいいのか分からない。いざ配信が始まると、初対面のような感じ。
彼女たちと「物理女性として」「同じ美少女アバターとして」どう接したらいいかは分かっているのに。
冷静に配信のオペレーターをしている裏でアタフタして、余計に男性から遠ざかってる気がする。違う、これは男性ではない。彼女たちの中身である「男性」にはなれない。仮に近づく努力をしたとしても。

と同時に、同じ美少女アバターをまとっていても彼らが思う「美少女」にもなれない、とも感じました。自分がかつて少女であった頃の記憶と経験、さらに物語の美少女をベースにしていても、やはり違う。
ただ、世界に優しくありたいという女性性は同じなのかもしれない。
ここで「ああ、美少女/美青年という"概念"をまとっているんだ、ホントに美少女/美青年になったわけではない」とハッキリ自覚しました。
小林先生が相談室2回目配信でおっしゃっていた「ヒトは美少女という概念を自分の中に飼っている」のはこれか、と感じた瞬間でした。

では美少年アバターをまとうのをやめたいかと言われたらそうでもなく、自分の「女の子を大事にしたい」という男性性のロールを託していこうかなと思っています。何事も実験実験!

自分でデザインしたか否か

属性を付与してデザインした結果、今回のアバターに自分の中の男性性を委ねたいと考えていることに気づく。委ねてもあくまで「女性としての私が思う男性(美青年)」であり、「男性」ではない。だから私はアバターで「男性」にはなれない。
なので、最終的に「男性アバター」ではなく「宝塚系イケメン」としました。

でも「男性」としてコミュニケーションして扱ってもらって、誰かから「男性として」深く必要とされることで、性自認の転換が起こりうる可能性はあるなと感じました。
「アバターごときで性自認変わるわけないだろ、俺は変わらなかった」というのは、「女性として」恋人・親友レベルの親密度で扱ってもらった経験が少ないから出てきた意見なのかもしれないな、とも。

今回は2Dデザインから3Dモデル完成まですべて私ひとりで行いましたが、「購入したアバターを使っている」「デザイナーさんにデザインしてもらった」場合はまた違う感想が出てくると考えられます。
これらの感想は、配信でまたいずれ扱いたいですね。

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