うる星やつら(2022)の再構成についてあれこれ


どうもこんにちは。ワタシ、ラブコメ、ダイスキ。
仮にも令和の若者であれ私が最初に高橋留美子作品に触れたのは「らんま2/1」。キッズステーションのアニメ再放送というあるあるです。

そこから他作品も履修しだし「境界のrinne」はリアルタイムで完結を見届け現在連載中の「MAO」も楽しく拝見しております。

でも一番心を鷲掴みにされたのは「うる星やつら」。とにかくパワフルでクレイジーなキャラクター達の時代を超えた魅力に私はすっかり虜に。大学を1年留年したのは絶対に原作全話と旧アニメ全話を見まくったせいです。そうだと言っとくれ。頼む。

そして2022年元旦、まさかのリメイク発表。驚かされるばかりですが湧いて出た物は味わう主義なので毎週楽しく見ています。

そしてリメイク版も一つのターニングポイントである「君待てども…」まで放送されたのでこれを機にリメイク作品の感想を原作、旧アニメを引用・比較しながら少々語ろうと思います。

opとedについては一言一句素晴らしいことを言ってくれた先駆者様がnoteにいらっしゃるのでそちらにお任せします。リンク?自分で探しな!

第1話A 『かけめぐる青春』

まず第1話。これは再解釈がお見事です。
基本は原作通りだけれど、あたるとラムの鬼ごっこをよりコミカルに見せる、ブラが取れたタイミングは決着の直前、という改変ポイントは旧アニメと一緒だが今回は結婚!結婚!と喚き散らかし電撃を喰らわせてもなおすぐに立ち上がってくるあたるにラムが本格的に興味を持つ→叫んでいたのは自分との結婚だと勘違いし(丁寧に「しのぶ、結婚するんじゃあー!ラムー!」→「えっ!?(しのぶ、だけ叫んでないので聞こえてない)」という会話まである)、執念で勝利をもぎ取ったあたるに頬を染める……という初見の方にも分かりやすい「惚れた」描写が追加されている。これまでの作品群だと「プロポーズは神聖なもの」「負けたのだから勝った者のモノになる」という初期の不条理な、あたるの凶運がラムを招き寄せてしまった感じに描写されていたのだがここはラブコメとしての再構成らしく見事。旧アニメ版のやたらめったら戦車描写が追加されてるのも嫌いではないが第1話としての総合的な決定版はこの1話で良いと思う。

第1話B 『絶体絶命』

で、今作ではレギュラーではないメガネ達モブが目立ってしまう&さすがにあたるが可哀想に見えるからか『悲しき雨音(町に石油の雨が降る)』はカットし、ラムが無理やり押しかけてくるオリジナルパートを挿入してからこの話。まあ大した話ではないんですが初期の初期のみの「あたるとしのぶが両思いなので、ラムは寝取ろうとしてくる天災のような邪魔者」な三角関係が一番目立つ話をピックアップするとこの話になったと考えられる。
ラムに気合が入っていたAと比べるとこちらはやけにしのぶが可愛い。幸せになってほしいものだ……。
旧アニメの街が火の海に包まれているレベルの脚色も嫌いではないがまあこんなものだろう。もっとテンポアップしても良かったまである。

声優についてはあたるはアララギさんじゃねーか!という先入観さえ取り除けば言うことなし。ラムは先代をトレースしながら平野文氏の声にあった「古風な品」がない事が返って原作の天然かつ身勝手で男を寝取ろうとする滅茶苦茶な女の声に近くなって原作重視のこのシリーズにはむしろこちらが正解だと思う(旧アニメはこの古風な品が漂う声がむしろ「電撃ぐらいで浮気を許してくれるヒロイン」というパブリックイメージがついたように思えるので…「ビューティフルドリーマー」の偶像じみたラムもあの声あってこそギリギリ成立したと思う。今作の声なら絶対ならない。なおどちらも素晴らしいことに違いはない)。
しのぶは島津冴子のような高音で喋る人いるの?と思ってたら内田真礼が凄かった。中二病でも恋がしたい!から知ってたのに…。
後のキャストも特に言うことはない。皆立派なプロだ。チェリーも言われなきゃ高木歩とは気づかない。

第2話A『あなたにあげる』

サクラさん登場回。原作の回想をアバンに持ってこられた事で初回視聴の時はアニオリと誤解しそうになった。この方が自然な流れになっておりアニメにおける話の組み直しの大切さが分かる。後は大体原作通りなのだがこの話も別にめっちゃ面白い!という話でもないのでまあヨシ。旧アニメでは死神も病院も全カットしてドタバタのまま終わったのが今回は死神がいようが懲りないあたるというオチを付け足してエンド。でもここは看護師が入ってくるよりサクラさんが病室に入ってきたら飛び起きてナンパする、の方が良かったと思う。
サクラさんの沢城みゆき氏は先代に似せる事を欠片も意識してないのでフラットに演技楽しそうだな〜ぐらいのテンションで見れた。

第2話B『幸せの黄色いリボン』

なぜこの話をセレクトしたのかまだ自分の中で腑に落ちてない一本。じゃあ代わりに何するのと言われても困るが。チェリーが変なアイテムも作れる高僧だと言う事を伝えられるエピソードだからだろうか?
佐藤せつじ氏のメガネエミュは素晴らしかったが。他に語る事と言えばラムの落下アングルの良さやPVでも聞いた「一生離れないっちゃ」は良かった……。

cパートでは面堂の顔見せ。うむ、宮野真守!!!宮野真守がまともなキャラクター演じてるアニメ見るの久々だ……。

第3話A 『トラブルは舞い降りた!』

もう一回前回の再放送したパートはいる?とは思いつつ面堂という喧嘩相手が出来る事であたるがより活発にキャラとして生き生きしてくる、三角関係解消からの四角関係勃発!を原作より踏み込んで強調していく様は再構成ならではである。また、しのぶの席が窓側になった事でラムが窓からスッと入って空中から机に着地、という滑らかで美しいシーンが入ったのはアニメならでは。これは面堂、惚れてもお前は悪くない。




「いつわり」「つわりです」は忘れてたのでクスッと来た。
旧アニメも見直したが所々作画があえてバース崩した金田系作画でどこに気合入れてんだ……と思いつつ「夫を見殺しにする妻がどこにいるっちゃー!」はこっちの方が良かったかも。後サブタイトルも「面堂はトラブルとともに」の方が好き。

第3話B『迷路でメロメロ』

概ね原作通りだったAと比べるとこちらは改変が多い。原作では皆無だった面堂がラムに惚れる過程を他原作の「ツノる思いが地獄を招く」を引用しながら描写しそのまま四人が一方通行の思いを持ったまま鍾乳洞に入りサブタイトルという話の流れはお見事。そしてなんと後半の展開(イソップ童話が元ネタ)をオールカットという判断には、今話でやりたい四角関係のわちゃわちゃと趣旨がズレるからだろう。最後の爆発で結局もう1回抱き合うオチやクラマ姫の顔見せまで済ませたのは続き物のアニメっぽいな。「くらいよせまいよこわいよ〜!」じゃなくて「くらいよー!せまいよー!こわいよー!」なのは初披露だったからかな。

第4話 『口づけと共に契らん!』

個人的にこの子は4クールならオールカットでも良くない?設定も倫理観ないし…と我ながら酷いことを言っていたクラマ姫回。
だが「星座をめぐる」をカットしたので「面堂は気取ってるだけで所詮あたると同レベル」というのを示すにはこの回が必要という措置には唸った。なるほど…!四人でテニスしてる状況に一切説明がないのは気になったがまあ原作でも説明無しに休日の遠出は四人で遊びに出かけるようになったからな……。
また、とにかく状況に振り回されなんだかしのぶにフラれて可哀想な子に見えなくもなかったあたるの女相手に対してのカス、クズっぷりを魅せるのにもこの話は必要だったわ…!と更に唸る。その代わり4話にしてラムやしのぶが空気化してしまったが……。「契る」「ヤリモク」「校庭にラブホテル」「後腐れなくて」など最低の発言が令和に飛び交うアニメはここだけだろう。
再登場が初登場に変更されたのでクラマ姫は良かったね……気苦労が減って……。この後原作だと2回は出番があるがこのアニメだと出るのだろうか。
旧アニメだと学級会パートがオールカットでこちらはテンの登場パートをオールカット。尺調整は大変だなと思いつつ今回は作画節約回だな…と素人目にも分かるぐらいあんまりアニメが動いてなかった。水樹奈々様は貴方が何故これを…?

第5話A 『愛と闘魂のグローブ』

まさかの21巻のエピソードを拾ってきた珍しい構成。これはシンプルにBの「君待てども…」に備えてあたるの好感度を上げておくための推知だろう。ここで改変して例え嫌いなラムでも女の子を殴らないプライドを貫き自分が傷つくことで視聴者やラムの好感度を稼ぎBのラムの行動に筋を通すため。そういう事はそんな無くてもいいんだけどあった方が見やすいからね、初見の方もいるし。
ここでサクラさんも保険医に就職(丁寧にセリフの半分以上を原作の保険医としての初登場回周辺から拾っている)。学校でワタワタするエピソードが1クール目はこれしか無さそうだしね。ラムの高校転入は下手したら2クール目以降かもしれない。
旧アニメだと尺埋めで呪いのボクサーパンツや呪いのトゥシューズまで生えてきたので完全にギャグ回だったが(セコンド服のラムは可愛い)今回はBへの導線なのでこれで良いと思う。そんなにオリジナルパートが面白かったかと言われるとノーコメントだし…。

第5話B 『君待てども…』

旧アニメでは「あたるがクラスメイトの偽のラブレターに騙されるが、ラムが助けてくれた。その時、あたるは初めてラムを可愛いと思ったのだ」というメインプロット以外を全部変更した「ときめきの聖夜」という作品だった為(こちらも素晴らしいが)実質初のアニメ化だろう。
しかし原作に忠実で真っ当な感動エピソードなので言及出来る場面がないぞ。俺だったらこうする的なアレも、しのぶにもあたるへの罠を目撃させてしのぶは「あんなやつ知らない!偶には恥かけばいいんだわ」も見捨てるがラムは見捨てられない……という対比シーンがあったらもっと良かったな〜ぐらいしか思いつかない。あ、おと子(変装)が黒髪じゃないのは驚いた。

(追記)ラムのカップルの手繋ぎを羨ましがるアニオリ描写で、今回はAとBで「手」繋がりなんだなと改めて気がついた……。なるほど……(無理矢理な手を使った愛の表現)(自発的で手を使った小さな愛の表現)

5話までの総合的な感想だと絵コンテや演出の硬さはやはり感じる(旧アニメが自由すぎると言われたらそれはそう)。しかしその硬さが脚本の良い形の再構成に繋がってると考えたら一長一短であるな……。でも弁天やおユキさんが「君待てども…」の後まで出てこないのも思い切ったな…と思いつつ旧アニメも出番の順番をいじりまくっていたのでまあそういう物だろう。
またキャラクターデザインの浅野氏や美術設定からは「レトロ」と「ポップ」を両立出来ないかと考えているのが見られる。レトロさはともかくポップさはうる星やつらから感じた事がなかったので目の付け所はやっぱファンとプロは違うな〜と感じましたわ。また良くも悪くも原作初期〜中盤と旧アニメ(特に押井監督時代)で色濃く残っていた『バタ臭さ』が令和の画面によって脱臭され原作後半並みの爽やかな画面なのも新しい「うる星やつら」を見せてもらってる気分だ。
脚本の柿原優子さんはるーみっく作品では『境界のrinne』のアニメでも脚本を執筆していたがそちらはほぼ原作通りだった為こういった丁寧な再構成の仕事も出来るとは感服である。『境界のrinne』は今回のうる星やつらと同じくエピソードによって30分1話、15分2話、10分3話と尺の構成を変えてたのでこちらも面白いが短いエピソードは3本立てでお願いしたい。場合によっては勿論混ぜても面白ければ。
と、書いてたら6話は3本立て!やったね!(「あたるの引退」はメタネタ劇場の話で旧アニメのザ・メガネ大劇場だった「さよならの季節」を超えるのは無理なのでサッと尺調整にやるの、正解)

おまけ オニヅカタイガーコラボCM

近未来(宇宙)のショッピングデートとかいう最終回後のその後の2人でないとやらなそうな事を映像付きで見せてくれてありがとうございました(涙)。
「あたるが素直に褒めるかよ」という意見に関しては概ねその通りなんですがまあ人間少しは成長しても良いんじゃないですかね……という期待込みで受け入れました。褒めてるのはスニーカーが似合ってるというだけだしね。

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