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第6章 暖簾スキャナー

第6章 暖簾スキャナー


暖簾、目をやる。
文字にてあらためて認知する目的地。

たどり着けば通例
呑気に口を開けて、旅人前。

悠然と建ち構えるのが、正しい姿。
目的地として、在るべき姿。

入江さんへ

やっぱり女の子でした。

想像以上にやわらかくて、怖いの。

皮膚を介しているはずなのに
じかに五臓に触れているようなの。

だから、
ひとつも間違えてはいけない気がします。

産まれたのは土曜日のお昼で、ちょうど
毛糸を編みたいくらいの時間帯でした。

数珠は後日、お返しします。

1998.11.16



毛筆の丸文字なんて、
母の手記以来だ。


入江さんへ

斑(ぶち)の留鳥が白と黒。
交互させ空を飛んで来ました。

あまりに不規則な波形、
描いて来たものだから

本当に空って整備されてないのね、と
玲ちゃんに話しかけてみました。


そうだ、玲ちゃんの目の色。
そちら側からだとあまりわからないでしょう?

私と同じ鉛丹の色をしています。
紋様はまだみたいです。


ああ、成長というのは
なんて、じれったいのでしょう。

はやく見たくて仕方がないのですが
眼のむだづかいだと思うので控えます。


この娘の開眼を待つうち
会いに伺います、安芸の宮島。


数珠をお返しします。

1998.11.25


暖簾の文字を私の頭、くぐると同時
脳内、母の描いた情景駆け巡る。※


入江さんへ

玲ちゃんが返事をせず
ただまん丸な目をしてこちらを見ます。

空の整備されない理由など
明白であったからです。

せっかく鳥たちは、空に選ばれたのだから
自らの行動を制限するなんて
たしかに勿体無い話でしたね、反省です。

ところで
玲の名前は、宝玉の音色と同義です。

鶺鴒等に
空への共鳴のはじまり
知らせるため


嗚呼どうか、鈴を鳴らしてくださいませ。


その総本山にて。

1999.11.14の①


注文のベルを鳴らす。
みっちゃん総本店にて。


玲はきっと、私を拒む数々の青を渡り

旭日の紋様
鉛丹の色眼

以って、色即是空。

鈴の鳴るところに返るのみ。

1999.11.14の②

何を言っているのか。


眼下、頼んだDXスペシャル。
どう見ても"実存している"。

お好み焼き島に撒かれた
数々の青ネギ、無論、私を拒んでいない。

拒むのは母のみだ。

母は知ることができない、この青き極上。



・・・暖簾下のように口を開く。

『いただきます!』


ん〜!うま〜!
うどんにして、よかったあ〜!


https://www.okonomi.co.jp/menu.html


★次回更新、乞うご期待!


※補足

このときまさにCTスキャンを感じた。
”暖簾のスキャナーポテンシャル”
を感じざるを得なかった。

ので、タイトルに選ばせてもらった、
そのくらい衝撃的な体験だったということを
私自身が覚えておきたかった。


次は号外。一旦ヘラやすめ。

私の広島シーンを写真付きで
楽しんでいただけるスタイルで。

そういえば私は広島の地に赴いた時も
ショートボブだったように思う。



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