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嘘で曇った眼鏡のレンズ

口元を覆ったマフラーから上昇する呼気が
嘘を並べて二枚のレンズを曇らせる
銀のフレームが視界を切り取る
白濁したぬるま湯の世界
吐息でみるみる凍る長い前髪が
嘘を隠すように揺れている
心地良い加減に浸かり
真実を知ったビニールのアヒルが
ぷかぷかと泳いでいる
「あ」と発した唇は後に続かず
雑踏に紛れるコートの裾が揺れるのを
控えめに追うだけだった
コートの隣には
踵を小気味よく鳴らした長い丈のブーツが
くるくると踊るようにステップを踏んでいた
芯を巡る血流の温度が低下するのを感じながら
コートと長い丈のブーツが向かった反対の方向へ
逃げるように踵を返した
今日はコンタクトレンズを止めておいて正解だった
眼鏡は嘘で私を守るのに丁度良い

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