#毎週VALIS感想 - 009 ◇ カトラリー Covered by CHINO

有機酸さんによる、ピアノのリフレインが印象的な曲だ。停滞した日々と「終わり」の予感、それに纏わりつくジレンマ。全曲を通してテンションはほぼ一定で、サビの一段高いメロディーもグッとくる。後ろで鳴っている様々なサウンドで家事や食器を表現していてすごい。

曲調や歌詞の内容をうまく表現した、無機質な中にほんの少しの温度を持ったCHINOさんの歌声がとても良い。個人的には、山下さんの初期のMixにとても良く合っていると思っている。CHINOさんの歌声の魅力に、スッと耳に入ってくるという点もあると思う。我を押し殺したような今回の楽曲に非常にマッチしている。

ストーリーの内容もややシニカルで、普段感情があまり揺れ動かなかったCHINOさんのイメージ(=楽曲の持つ印象)とは対称的なものになっており、その感情すらも図られたものなのではないかと一瞬ゾクりとするほど異様に浮かび上がってくる。

全編を通してテンションが大きく変動する楽曲ではないけれど、曲が進行していけば様々な箇所に細かい表現が散りばめられている。生憎ぼくの語彙力ではそれらを明文化することができないのが非常に悔やまれるが、徐々に揺れ動く心を表現しているのかなとか思える。

CHINOさんにも、終わらせるかどうか悩んでいた日常が過去にはあったのだろうか。そしてもし仮にあった場合、それを言い出すことはできたのだろうか。後悔や疵はあるのだろうか。イラストの無邪気な笑顔が、ストーリーとも合わせて奥行きを感じさせる。

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