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卒業文集

ある日、息子の小学校の担任から電話がかかってきた。

「卒業文集を書いてもらったのですが、その内容が少し良くないので書き直ししてもらえますか。」

良くないってなんですか。

「いや、あのーご家庭のことを、えーっとこれは保護者の方も見るので、息子さんに渡しましたので確認いただき書き直して提出していただけませんか。」

と先生は濁していた。

お父さんはお母さんと仲が悪くなったのでいっしょに住んでいません。

これを見たとき内容的にはそれほど驚かなかったが、今まで息子は自分から元夫については口にしたことがなく、子供なりに色々と考えていたこと気づけなかったことがとてもショックだった。

文集どうする?

「それは本当のことだし、だからといって別に寂しいとかそういうことじゃないんだ。だから書いてもいいかなと思ったんだよ。だからこのまま直さなくていい」

息子自身がそう思うのであればと直さなくても思ったけれど、先生の言う通り文集は確かに保護者も見る。そういう話は子供たちは気にしなくても、保護者の間で噂になるということ。息子が好奇の目で見られるのではないか。この先通う予定の中学校は、その小学校の半数がそのまま通う。

そう考えたとき、書き直したほうがいいよと言ってしまった。

結局無理やり書き直しさせてしまったのだが、ずっとこれでよかったのかなと心の中で引っかかっている。

息子のためといいながら本当は私自身の保身だったのではないか。本当は書きたかったことを大人の事情で書くことができなかった息子はどう思ったのだろう。

今となっては、どう思っているのかはわからないし、あえて聞くこともないと思っている。

元夫とは年に1回くらいは会っているようだ。
大人になった息子と大人の会話をしているのだろうか。

私たち元夫婦が元に戻ることは決してないが、父と子としてはいつまでもいい関係をつづけてほしい。