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面接

(コンコン)

Q1:どうぞー。

(ガチャッ)

Q2:失礼します。

Q1:いやぁーこんな山奥までご苦労様。

Q2:あ、いえ・・・。

Q1:疲れたでしょ?こんなはるばる
   山奥の小屋へアルバイトなんかの面接に来るなんて。

Q2:いえ、前々からここでバイトしようって
   決めてまして・・・なのでお気になさらずに。

Q1:あ、そう?じゃ、とりあえず掛けてもらって。

Q2:あ、はい失礼します。

Q1:いやでも珍しいよね?
   君みたいな大学生の子が山小屋でバイトしたがるなんて。
   アルバイトくらい他にもたくさんあったろうに。

Q2:前々から興味があったので。はい。

Q1:へぇ~そいつは嬉しいねえ。
   じゃあ早速なんだけど、どうしてここで働こうって思ったの?

Q2:死に場所に最適かな・・・と。

Q1:はい?

Q2:はい?

Q1:・・・・・・。

Q2:・・・・・・。

Q1:・・・はい?

Q2:・・・はい?

Q1:・・・はい?

Q2:・・・はい。

Q1:いやいや“はい”じゃなくってさ。ん?え、何今なんつった?

Q2:死に場所に最適かな・・・と。

Q1:どういうこと?

Q2:いやまあ、単刀直入に言えば・・・死にに。

Q1:死にに?

Q2:ここへ。

Q1:来たの?

Q2:はい。

Q1:働きに?

Q2:死にに。

Q1:死にに?

Q2:死にに。

Q1:働かずに?

Q2:働きながら。

Q1:働きながら?

Q2:はい。

Q1:死ぬの?

Q2:ええ。

Q1:働きながら?

Q2:はい。

Q1:働きながら!?

Q2:はい。

Q1:働きながらぁ!?

Q2:はいッ!!

Q1:・・・・・・。

Q2:・・・・・・。

Q1:・・・・・・。

Q2:・・・・・・。

Q1:いやだからさぁ・・・あのね、うんえーっと・・・
   あのー君さ、言ってることおかしくないか?

Q2:そう・・・ですかね?

Q1:いやそうだろ。働きたいんじゃないの?

Q2:はいもちろん、働きたいです。

Q1:働きたいの!?

Q2:はい。

Q1:死にたいのに!?

Q2:はい。

Q1:・・・ええええええ!?

Q2:いやあのですね、
   ちゃんと僕の話を聞いていただきたいんですよ!!

Q1:いやいやいやいやいや!!

Q2:僕・・・もう人生に疲れちゃって・・・。

Q1:いやいやいやいやいやどうしたんだよまた
   急にブルーになっちゃって・・・!!

Q2:いやなことばっかで・・・なんていうかその・・・
   いきがいも何もなくなっちゃって・・・。

Q1:・・・なんかやなことでもあったのか?

Q2:だからもう自殺するしかないって・・・考えたんです。

Q1:君さぁまだ若いんだから。

Q2:でも・・・自殺するなんて
   結局は・・・逃げてるだけなんですよね。

Q1:・・・・・・。

Q2:そんなんじゃいけないって事に気付いたんです・・・。

Q1:君・・・分かってるじゃないか。

Q2:だから・・・もうどうせなら
   精一杯働いてやろうって・・・そう思ったんですッ!!

Q1:そうだ!!

Q2:精一杯働いて死のうって!!

Q1:ぜんぜんそんなことなかった!!

Q2:でも山小屋だったら・・・山の上だったら
   飛び降りてきれいさっぱりさせられるかなって・・・
   そう思ったんですッ!!

Q1:いやダメだろそれ!!自殺になっちゃうだろ!!

Q2:人のために汗水流して働いて疲れて死ぬ・・・
   なんて素晴らしいアイディアなんだ!!そう思いませんか!?

Q1:なんなんだよなんか怒るに怒りづらいよ!!

Q2:働いて疲れて死ぬ・・・つまりこれは
   自殺でも他殺でもない・・・自然死なんですよ!!

Q1:いや過労死だよ多分それ!!

Q2:だからポックリいきたいんです・・・ポックリーッ!!

Q1:ポックリーッ!?

Q2:ポックリポックリーッ!!

Q1:なんなんださっきから君は!!

Q2:・・・・・・。

Q1:だいたいなぁさっきから行きたいんだか
   生きたいんだか逝きたいんだかはっきりしないんだよ!!

Q2:・・・なのでどうか!!
   どうか採用してくださいお願いします!!

Q1:ダメだ!!

Q2:どうしてですか!!

Q1:ダメなもんはダメだ!!

Q2:お願いします!!精一杯汗水流して働いて
   死んで生まれ変わりたいんですッ!!

Q1:回りくどいんだよ!!
   死にたいんだったらもっとストレートに死ねッ!!

Q2:はい!!

Q1:あっ、死ぬな!!

Q2:はい!?

Q1:なんか勢いでつい口走ってしまった!!
   死んだら元も子もないだろって言ってんだよ!!

Q2:働かせてくれないと・・・
   どっかの崖から不幸を先立ちますよッ!!

Q1:分かった分かった一旦落ち着こうかっっ!!なっ!?なっ!?

Q2:ということは・・・採用していただけるんですね!?

Q1:ここで死なれちゃ困るからだよ!!
   別に死んでいいって許可出したわけじゃないんだからな!?

Q2:ありがとうございます!!

Q1:はぁ・・・。

Q2:今日から働いて死ねるように精一杯頑張りますんで
   どうか一つ、よろしくお願いいたします。

Q1:え、今日からもう働くつもりでここに来たのか?

Q2:そのつもりでした。
   差し支えなければ是非シフトに組んでいただいて結構ですんで。

Q1:・・・・・・その働く意欲をさぁ

Q2:はい?

Q1:なんていうかこうもっとその働く意欲をさぁ・・・
   もっとプラスな事に変換しようとは思わんのか?

Q2:いえ・・・もう心に誓ったことですから。

Q1:・・・・・・仕方ない。じゃあ早速、
   いきなり力仕事になっちゃうんだけどさぁ、
   倉庫の中の非常食を補充したいから、
   そこに積まれてるダンボールを倉庫に運んでもらえるかい?

Q2:はい!!

Q1:じゃ早速運んじゃおうか。よいしょっ

Q2:ふんっ

Q1:よいしょっ(ドサッ)

Q2:ふんっ

Q1:よいしょっ(ドサッ)

Q2:・・・・・・。

Q1:よいっしょ。(ドサッ)

Q2:なんて重たい荷物なんだ・・・
   こんなのさえ持てないなんて・・・僕は・・・。

Q1:ん?

Q2:なんて無力な人間なんだ・・・。

Q1:・・・ええええええ!?

Q2:死にたくなってきた・・・。

Q1:君さぁ・・・
   こんなんでへこたれちゃってたらこの先やってけないって。

Q2:死にたい・・・。

Q1:ほら一緒に持つの手伝ってやるからさ。な?

Q2:鬱だ・・・。

Q1:・・・・・・。

Q2:死のう・・・。

Q1:じゃあもう死んじゃえばいいんじゃないか?

Q2:はい・・・?

Q1:働いて死ぬために働きに来たのに・・・
   働けなくって死ねないんなら・・・もういっそここで
   死んじゃえば楽なんじゃないか?

Q2:・・・・・・。

Q1:だってそうだろ?
   なんかこういうこと言っちゃうのもなんなんだけど、
   やっぱりそんなんだと雇えないんだよ申し訳ないけど。
   君にはちょっとガッカリだなぁ。

Q2:・・・・・・ぅ。

Q1:ん?

Q2:違・・・ぅ・・・僕は・・・・・・
   僕はこんなところで・・・死ぬワケにはぃかないんだ・・・・・・。

Q1:・・・・・・。

Q2:うああああああああああああああああああああああッ!!

Q1:ッ!!

Q2:俺はああああああああああああッ!!
   俺は・・・こんなところでくたばっちまうような
   ヤワな人間じゃねえんだよおッ!!!

Q1:!?

Q2:俺は絶対あきらめねぇ・・・
   死んで生まれ変わるその日まではぁッ!!!

Q1:いやだから生まれ変わるとかそんなんないから多分!!

Q2:うぉぉぉぉぉぉ絶対死んでみせるからなぁぁぁッ!!

Q1:だから死んじゃえよいっそここで!!

Q2:いやだぁぁぁ死にたくない!!

Q1:あるから!!崖あるからすぐそこに!!
   自殺の名所っぽい崖いっぱいあるから!!

Q2:・・・・・・ぃ。

Q1:東尋坊みたいなとこあるから・・・。

Q2:死にたくない・・・。

Q1:・・・死ねよ!?

Q2:死にたくない!!

Q1:じゃあ死ぬな!!

Q2:死にたい・・・。

Q1:死ね!!

Q2:死にたくない!!

Q1:死ぬな!!

Q2:死にたい!!

Q1:死ね!!

Q2:死にたくない!!

Q1:死ぬな!!

Q2:死にたい!!

Q1:死ね!!

Q2:死にたくない!!

Q1:死にたいッ!!

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