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更年期と思ったら、そうじゃなかった1


「結論から言うとね、あなたは更年期じゃないのよ。まだまだよ~!」

婦人科のH先生はそうおっしゃると、初診の前回での採血検査の結果…血液中の女性ホルモン分析の検査結果の数字を私にわかりやすく説明してくださった。

「生理は女性ホルモンといわれてるふたつのホルモン…来るべき妊娠に備えて子宮のベッドをふかふかにするいわゆる卵胞ホルモンと、そのお片付けの生理を引き起こす黄体ホルモンがあるんだけど…ちょっとね~あなたの場合は、黄体ホルモンが普通の人の3分の1位しか出てないの。だから、お片付けが中途半端な状態で次の月の準備が始まっちゃうから、不正出血が半月以上続いてしまうのね~」

するすると吸い込まれるように先生の言葉が私の中に入って来る。今まで私の中に散らばっていたの無数の点と点が一本の線でつながっていくような気がした。

実をいうと、この採血分析結果の数字を見るのは初めてではない。生理痛がひどく婦人科に通っていた十代の頃から、通う婦人科の病院を変えるたびに何度も言われていた。どこか遠いことのような気がしていた。自分の身体のことなのに。

今は、他人事が自分事として吸い込まれていく……
今までこんなことはなかった。
この差は一体なんなのだろう?

初潮は早かった。小学4年生の春だった気がする。女子だけ集められて生理の話を聞いた時に想像したような鮮血色ではなかった。焦茶色の滲みで最初生理の経血とは気づかなかった。何か漏らしたのかと思った。親に叱られる。ばれないよう必死で風呂場のたらいで石鹸をこすりつけても落ちなくて、半泣きになったところで母が気づいた。その晩にお赤飯を炊いてくれたけど、面倒なことになったと途方に暮れていた。とてもじゃないがめでたいとは思えなかった。

小学校では誰にも言えなかった。一番仲の良かった友達にすら。小学校高学年というと性への好奇心が芽生えてくる頃で、いろいろ厄介だなと思えることを目にするようになって来た。小さな布袋に入れた生理ナプキンを教室で囃し立てる男子グループにぶちまけられて泣きながら拾い集める先輩たちを目にしたり、女の子同士でも「あの子は“きた”んだって。マセてるから…」とか噂されたり……と暗澹たる光景ばかりだったから。親の仕事の都合で都市部の小学校に転校した時、生理に対して明るくさばけたように話ができる教室の女の子達に圧倒された。

このころは身長が伸びるのに伴って成長痛で身体中……特に脚がきしむように痛かった。それに重なるようにして、だんだん生理痛もひどくなっていった。

最悪だったのは、中学生の時。鈍くずんずんとした痛みが下腹部にわいてくると、「あぁ……そろそろか……」と悟る。そのうち思いっきり足で踏みつけられたような言葉も出ない状態になり、自分の顔から血の気が引いていくのがわかる。手が震えて止まらなくなり鉛筆の芯をばっきばきに折りまくった結果、半分卒倒しそうな状態で保健室へ行き、生理痛の痛み止めをもらう……これが月に一~二度あるのである。もう体育どころではない。生理痛だと説明しても、本当に全くない人もいるみたいで、“嘘休み”と影口をたたく人もいた。

そんな生理と和解できたのは、大学卒業後自分で稼いだお給料で婦人科に通えるようになってからだった。ちょうど低用量ピルが婦人科で買えるようになった頃で、生理痛軽減のため婦人科で処方してもらった。薬の名は「アンジュ28」で、保険外の自己負担で一カ月あたり3千円。いろいろ物入りな20歳代にはちとキツかったけど、CD1枚分であの痛みから解放された喜びたるや……

ちなみにこのピル服用について、当時付き合っていた彼氏には言わなかった。「ピル飲んでる」というと「遊んでいる」と思われるのが嫌だった。それに万が一失敗して妊娠した時のリスクを考えると、黙って服用が一番の選択肢と思えた。

数年おきに休薬期間を置きながら種類を変えつつ低用量ピル服用を続けてきたけど、ある一定の年齢になると血栓ができやすくなるとの臨床データがあるとの説明を受けて、低用量ピルの服用を止めた。

その数年後、市から出た子宮頸がん検診の無料クーポンを握りしめて婦人科で検診を受けた結果……がんはなかったけど子宮筋腫が見つかった。ほんのペン先くらいの小さなやつがぽこぽこと10個くらい。

「これってやっぱりピル服用のせいですか?」と思わず訊いた。
「逆です。ピル飲んでたからあまり深刻にならなくて済んだんです。」
そうは言われたけど……いまいちよくわからなかった。
基礎体温表つけましょう。規則正しい生活を送りましょう。
そういわれて頑張ったけど、2カ月位で挫折した。
引越しを理由に通院もぱったり止めてしまった。
ダメダメぽんである。

が、展開が変わった。





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