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更年期と思ったら、そうじゃなかった! その2

いや、本当に変わった。私も……周囲も。

まず、変わったのは……なんと友人からだった。落ち着いて人当たりのよい年上の友人の様子の余りの変化について行けなくなった。
急に友人の喜怒哀楽が激しくなった。特に「怒」が。すぐ怒髪天を衝くような怒りモードに入るようになった。「お酒を飲んでる時に自分を見る目が冷たい」とか「LINEの返信が遅い」とかとか……今までだったら普通に笑ってスルーしてきたようなどうしようもない些細なことで、人が変わったようにキレるようになってしまった。ひぃぃぃ……!
結局この友人とは疎遠になってしまった。後から更年期の初期症状だったらしいと伝え聞いた。聞いたところで何ともしようがないのだけれど。

こんなこともあり、更年期はいつか来る……と言い聞かせていたところへ、私にも変化が訪れた。
まず、寝つきがものすごく悪くなった。
夜11時に布団に入ったのに、目が冴えて眠れず右に左に寝返り打ちまくって夜が明ける日が続くようになった。
それから、生理が1カ月に2回来るようになった。2週間後なので月の半分が生理で出血。その他不正出血も…ということが重なり、貧血勃発。ほぼ健康優良で続いていた職場の定期健診結果の通知でとうとう「貧血:経過観察要」のメッセージが。そりゃ月の半分以上出血していたら貧血にもなるさ。出血量も今までの倍近くに跳ね上がり、非常に多い夜用のパンツ型のナプキンでどうにかお仕事できるかなというくらい。
症状をネットで調べると「更年期」の言葉が現れた。
……私にも、とうとう……?
定期区間内の最寄り駅近くに更年期やエイジングケアに詳しい婦人科の腕のよい先生がいらっしゃる話を耳にし、とりあえずネットで調べた。なんと完全予約制だという。昼休みに急いで電話予約した。

この一本の電話からして、すでにもう「違った」……今までにない電話予約体験だった。
感じのよい明るい受付の女性の第一声。初診予約をお願いするも、最短で1カ月待ちという。思わず「おぅぅぅ……」と声が漏れた。あまりのがっかりな溜息に同情したのか、受付の女性の「少々お待ちくださいね」から電話先の相手が替わった。てきぱきとした慣れた感じの落ち着いた女性の声だ。看護婦さんだろうか?
具体的な症状と妊娠の可能性の有無、そして国民保険証か社会保険証か確認した後、社会保険であれば最近の定期健診はいつだったか、その結果は手元にあるか、そして初診は時間が掛かる旨と経血があると支障ある検査もあるので、予約した日に生理が来るようならあらかじめ連絡するようにと説明され、予約完了。何とも密度の濃ゆい予約電話であった。

そして当日。予約時間に病院を訪ねて吃驚した。
サロンのような明るい雰囲気に、ゆったりとした待合室。今まで見てきた繁華街の婦人科というと、待合室の隅から隅までみっちり埋まっていることが多かった。その上、西の女性はすごくおしゃべり好きな方が多くて、だいたい賑やかなこと甚だしいのだが、ここは一つの長椅子を独り占めできるほどゆったりでものすごく静かだったことが新鮮だった。
ラックに並んでいる雑誌のセレクトが……いい。地元の出版社の女性受けの良い人気雑誌やデザイン系の雑誌の旅行特集など、なかなかの浮世離れ具合が心地よい。女性週刊誌や健康系の雑誌はなし 。でも最新の治療法に関するブックレットはあった気がする。雑誌の表紙に医院名がドーンと持ち帰り防止のためマジック書きなんてよくある無粋なことはなかった。

初診の問診票を記入後、雑誌に読み入って行きたいお店をチェックしまくっていたところで、名前を呼ばれた。診察室前の長椅子で3~4名ずつ順番待ちをした。診察室は完全防音なので、中で何を話しているのかは全くわからないようになっていた。
15分くらい待ったところで、一人ずつ中へ呼ばれた。
中で待っていたのは大きな書見台のような斜めの板が乗せられた立派な台。30インチのペンタブでも余裕で乗りそう。何かこういうの……ルイ王朝とフランス革命を題材にした往年の名作……ベルばらの法廷シーンで見たような気がする……教会にもありそう。
この台にいわゆる婦人病……子宮筋腫や内膜症に更年期などの薄いガイド本がぶら下げてあり、待っている間気軽に目を通せるようになっていた。
一通り目を通したくらいのタイミングで、まず看護婦さんが到着。紙カルテ用紙を挟んだホルダーを台に立てかけてほほ笑まれたので、思わずほほ笑み返した。
「先生の診察の前に、お話聞かせてくださいね」
先生に診察していただく前の、看護婦さんからの聴き取りインタビューが始まった。看護婦さんにさくさくと尋ねられるまま、生理の初潮の話から始まって……生理痛やら何やら諸症状や今までの病歴など順を追って話していく。看護婦さんが丁寧に記録として書き綴っていき、さらに各詳細を聞きこんでいく感じ。大きな台で手元が見えないから何を書いているのかわからないところがまた良い。話しやすい。
もう10分以上話したのではないかというところで、話過ぎて口が疲れてきた。(待合室が静かだったのは、これで皆話疲れたからだろうか)
この後先生が到着。診察へ入った。
看護婦さんが聞き取って下さった内容を読んでから先生が診察に入って下さるため、何度も同じことを話す必要がなく話が通じやすい。
そして私も、看護婦さん相手に順を追って話し続けた結果、自分の中で整理ができており、客観的に説明を受け入れやすい心理状態になっているので、上向きのコップのようにどんどん先生の説明が入ってきた。

……さて、次は内診です。どきどきしますね。

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