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油冷親子の淡路島極寒ツーリング


「オトン、今度の日曜日あいてる?」息子から久しぶりにツーリングの誘い。そう言えば前に一瞬に走ったのは2年前か…。

前日の天気予報によれば雨こそ降らないものの週末にかけて日本列島に今期最強の寒波が襲来するらしい。

まだ行き先も決まってなかったので、なるべく寒くない場所はないかと、

「関西 ツーリング 暖かい」

なんてキーワードで検索してみる。ヨメに「どこが一番あったかいかなぁ?」と聞いてみると

「そんなん大阪市内が一番あったかいに決まってるやん」

なるほど、それもそうやな…

山間部は凍結する恐れがあるので絶対に避けたい。大阪から日帰りで気軽に行けてちょっとした旅行気分も味わえる所といえば

「やっぱり淡路島かなぁ」

目的地は淡路島に決まった。

ツーリング当日。

息子と2人で自宅から離れた所に借りているガレージに向け2台のスーパーカブで出発した。近所の人は普段スーパーカブしか見てないので、2人が大型バイクに乗っていることを知らない。カブで出掛けるのに大層な格好だと思われてるだろうなぁ。

お天気はまずまず。日差しもあるのでもしかしたら暖かいのかも?と錯覚してしまうがフルフェイスの隙間から冷気が容赦なく入ってくる。明らかに昨日までとは違い空気はキーンと冷えている。さすが最強寒波だ。

ガレージからバイクを引っ張り出して少し離れた場所まで押していく。ここは住宅街のど真ん中なのでエンジンの音で苦情が来ないための配慮である。

チョークを引きエンジンを始動。気温が低いのでいつもよりも長めに暖気運転。お互い燃料が少なかったので近所のガソリンスタンドに寄ろうと打ち合わせ、私が先にスタンドに向け出発した。

給油を終えたところでスマホに着信が来た。

「オトン、今どこ?」

「いつものガソリンスタンドやで」

「あかん、クラッチ切れへんわ」

息子のバイクは乗るのが久しぶり過ぎてバッテリーこそあがっていなかったものの、クラッチフルードのリザーバータンクが空っぽになってしまっていたらしい。

幸い家にフルードもエア抜き用のシリンジやチューブもあったのでガレージまで持って行くことにしたが、ブリードプラグを緩める8ミリのメガネレンチだけはない。そんなサイズのメガネレンチは滅多に使わないので持っていなかった。慌ててホームセンターまで買いに走る。出発時間を遅めにしていて良かった。

ガレージに戻って大急ぎでクラッチフルードを補充しエア抜きを済ませいよいよ出発だ。ここまでで予定していた出発時間を1時間半もオーバーしてしまった。まぁトラブルも含めてツーリングなんですけどね。

気を取り直して淡路島に向けて出発。阪神高速神戸線を西に進む。摩耶の合流手前で少し渋滞したが順調に京橋サービスエリアに到着。

油冷マシン2台でツーリング

さすが最強寒波である。ヒートテックのタイツ、フリースの裏地のナイロンパンツ、さらに上からジーンズを重ね履きしているのに下半身から冷えてくる。今まで季節外れの陽気が続いていたので身体に堪える。もちろん気温も低いのだが風も強いので体感温度はさらに低い。京橋サービスエリアを出ると一気に淡路島まで走るのだが、これだけ風が強いと明石海峡大橋が心配になる。

心配は的中した。明石海峡大橋を通過する頃に風は更に強まり横風にバイクごと持っていかれそうになる。バイクの車重プラス乗り手の体重、300kg近い重量にもかかわらず簡単に横に流される。風の力は本当に侮れない。極度の緊張から肩がバキバキに張っていくのがわかる。後ろを走っていた息子は途中から車線を変更して抜いて行った。怖くないのだろうか?後で聞くと

「ホンマ今日の風はヤバかったなー、途中でオトンの方振り返ろうかと思ったけど怖くてよう振り返られへんかったわ」

なんや、やっぱり怖かったんかい。

淡路インター出口を降りて今日の目的地である釜揚げシラス丼のお店までは下道を走って30分の距離。前回来た時はあんなに凪いでいた海。今日は打って変わって荒れ狂っている。波消しブロックに激しく打ち付けられた波が白い飛沫を散らせてまるで東映のオープニングのようだ。雲行きも怪しく風も更に強くなっている。

こんな荒天なのに海沿いのパンケーキ屋には今日も行列が出来ている。恐るべしパンケーキ、恐るべしインスタ映え。映えスポットを横目に極寒のサンセットラインを寒さに耐えながらシラス丼を目指して走る2台のバイク。行列に並んでいる人にはどんな風に映ってるんだろうか。

程なく目的のシラス丼のお店に到着。外観はオシャレなカフェ風。思っていたシラス丼のイメージとは少し違うな。駐車場にバイクを停めていると店内からおじさんが出てきて店内まで誘導してくれる。カフェ風の外観とミスマッチ感が拭えないおじさんが出てきたので少し戸惑うが、看板を見て納得。このカフェは漁師さんが経営しているお店だそうだ。道理でカフェ風の店内なのに魚料理が充実している訳だ。誘導してくれたおじさんは現役の漁師さんだったのだ。

窓越しに海が見えるロケーション
念願のシラス丼

昼食を済ませて駐車場に戻りエンジンをかける。すると2台とも同時にストール。あれ?おかしいなぁ。いつもは1発で始動するのに調子が悪い。息子が「オトン、これはエンジンが冷え切ってるんやで。油冷エンジンの細かいフィンが冷たい風に吹かれて冷えたんやわ」なるほど、海に近い吹きさらしの駐車場なのでシラス丼を食べてる間にすっかり冷え切ってしまったようだ。改めてチョークを引き暖気運転をする。

折角近くまで来たのだからと海岸を見に行くことにした。そう、2週間前にコーヒーを淹れて飲んだあの海岸である。

数分で以前訪れたことのある海水浴場に着いた。ほんの2週間前は波も穏やかで風も心地よかったのが嘘のように荒れ狂っている。また海辺でコーヒーを淹れようと今回はシートバッグも新調してコーヒーセット一式を持ってきたのだが、こんな天候ではコーヒーを淹れるどころの騒ぎではない。余りの風の強さに駐車場に停めたバイクのギアを1速に入れた程である。

コーヒーも飲まず、冷え切った身体で早々に帰路に着く。帰りの高速道路は益々冷たい風が吹いていて、少しでも気を抜くと身体が浮き上がってしまいそうで必死で姿勢を低くして走る。ミラーに映る息子のバイクはカウルが付いているので風の影響はあまり受けていないようだ。

途中、お土産を買うために淡路サービスエリアに寄るとチラホラと白いものが舞い始める。さらに気温が下がったような気がする。これは早く帰らないとヤバい。

そしていよいよ恐怖の明石海峡大橋。電光掲示板には「風速13m 横風注意」の表示が!道路に設置された吹き流しも真横を向いている。覚悟を決め前傾姿勢のまま橋を渡る。左からの強風でバイクごと右に流される。まるで空気の壁があるみたいだ。必死でハンドルを左に切りながらバランスをとるが、もし急に風向きが変わったらと思うと胃が縮む思いだ。ミラーに映る息子のバイクはカウルが付いているため正面からの風の影響は受けないものの横風に対してはネイキッドよりも抵抗が大きいのか、時折右に大きく流されミラーから消える。

さらにこの橋には数カ所の継ぎ目があり、中でも本州側と淡路島側に近い2ヶ所の継ぎ目は幅も広く金属製なので、バイクで通過する時必ずハンドルを取られるのだ。強烈な横風と金属の継ぎ目。何の嫌がらせやねん!と心の中で叫びながらなんとか橋を無事通過した。

通過した喜びからか息子が勢いよく追い越し車線から抜いていった。橋を渡り終わるとすぐにトンネルに入る。トンネルは風も吹いていないし外気温の影響を受けないので暖かい。バイクには大変ありがたいのだ。

トンネルを抜け山陽道と第二神明の分岐に差し掛かる。大阪に帰るにはこの分岐を左に行かなくてはならない。しかし橋を無事に渡り終えた安堵からか、息子のバイクは山陽道方面に直進していった。

すぐ間違いに気付いたのか、分岐を過ぎてすぐのゼブラゾーンに息子が停車したので後に続いてハザードを点灯して止まった。

「もしかして間違った?」

と聞く息子。

「大丈夫、このまま進んでも神戸線に戻れるから」

間違っても迂回路があるので、ここは無理に戻らずそのまま進むことにした。実はこれが大正解だったのだ。その日は月見山から湊川の間で事故が起きていて渋滞が発生していた。山陽道から神戸線に迂回するルートはまさにその渋滞ゾーンを回避できる神ルートであったのだ。

神戸線に戻ると渋滞のため月見山方面からの車の流入が絞られているせいか、普段は混む生田川付近も車の流れはスムーズだ。神戸に入った途端、淡路島とは明らかに空気の温度が上がっているのが体感できる。ムワッと暖かい空気に包まれたような感覚だ。やはり淡路島は本州から離れた島なんだなぁと納得した。気温や匂いなど車では気づかないことが体感できるのもバイクツーリングの醍醐味だろう。極端に暑かったり寒かったりするのはやっぱり辛いけど…。

帰宅して夕方のニュースを見ていたら、全国各地で最強寒波が猛威を奮っていた。新幹線は不通になるわ、過去最高の積雪量を記録するわ、わざわざこんな日にツーリング…。よく無事に帰って来れたもんだとホッと胸を撫で下ろしたのだった。

おわり

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