閑話休題(キャリア形成上の価値基準)

確か連載コラム初回に「ワタクシ転職します宣言」をして、私なりのキャリアの切り拓き方について書いていくつもりが、そこまで行き着くのがこの連載コラム何話目になるかわからない超スローペースになってしまいました。案外自分のルーツを辿るのはおもしろいものですね(笑)。そんな中、なぜ今回転職するのか、社内の近しい方々にご報告した際のメールが案外反響を浴びているようなので「閑話休題」という形で、一回だけ差し込みます。

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今年2月の国際学会@サンフランシスコに参加した辺りから自分のあるべき場所を再考し始めたのですが、私のオリジンは1988年の湾岸戦争にあります。

それまでは情報工学を大学で専攻しようと考えていまして、その時点では将来的にS社を目指すという選択肢もあったかもしれません。
が、88年に勃発した湾岸戦争で、重油にまみれた水鳥をTV画面越しに連日見るなどするうちにテクノロジーの負の側面を否応なく突き付けられました。
自分の進む先は情報工学でいいのか、と真正面から自分と向き合ったときに「違う」と判断し、大した考えもなく理系を選んだ自分を恨んだりもしました。
そんな中、ふと思ったのが「テクノロジーによるマイナスをテクノロジーによって少しでもゼロに近づけることができるのでは?」ということでした。
このふとしたひらめきがきっかけで、K大学の入学案内を端から端まで再読した際に「衛生工学(今でいう、地球環境工学)」が目に留まった訳です。
当時高校一年生でしたが、ここからは迷いなく受験勉強に打ち込むことができました。
そして入学・卒業。就職先には環境エンジニアリング会社を選びました。いろんなことがあり勤務先を総合シンクタンクに移したりもしましたが、ほぼ環境一貫というキャリアだと思っています。そして、あるとき統括室という部署で次期中計を作ったりしたのですが、「現場に戻れ」とお達しがあった先が原子力安全事業本部という部署の「廃炉推進グループ」でした。

私は広島出身なので、「原子力」・「核」に猛烈なアレルギーがいまだにあるのですが、●●重工USAの元社長を同社の客員研究員として当時招聘していまして、その方に「私は原子力否定派なんです」と持論をぶつけたところ、「hello!さんが仰る通り、原子力は危険である。だが、それゆえに相応の見識・スキルを持った人材が意思決定・オペレーションに当たらなければならないんだと私は思うよ」とお返事をいただきました。
その方には私のメンター的に何度か相談に乗っていただきました。同じ部署のメンバーにも原子力との向き合い方を相談しながら、少しづつ業務に対して前向きになり、気付けばグループのトップセールス&重要PJのプロジェクトマネージャーを務めていたという感じです。

現職のIさんから「是非(力を貸してくれ)!」とお声がけいただいたのが実はそのタイミングだったのです。なので相当迷いました。気持ちとしてはブレない自分でいたい反面、やはり、「宇宙」・「起業」という言葉に胸躍る自分と、原子力でキャリアを終えなくてすむかもしれないという安堵。言ってしまえば半分以上は「逃げ」なのですが、やはり人間ですから心は揺れます。
そういう状況で、お客様に対して「貴社のサポートを是非我が社で!」と言えなくなってしまったのです。
半年間だましだまし並行検討していましたが、最後は前に進むしかないと盟友Iさんの援軍に回ることに決めました。
本当に急なことで、グループメンバーからも相当驚かれましたし、正直ご迷惑もおかけしました。

で、実際一年足らずS社でお世話になってみて、いろんなことを学びました。
宇宙分野に限らず、S社という超巨大企業で勤めること、ベンチャーとして起業する覚悟、今までに見たこともない事業領域(AI、IoT、Robotics、・・・)などなど。
数え上げればキリがないのですが、チームの運営方針は様々、ここはCEO的ポジションにあるIさんが決めること。
ただ、世の中的に見た際に宇宙事業には放っておいても優秀な人材が集まるのです、S社の内外を問わず。
私のような門外漢が敢えてBDを務めなくとも、このポジションにエンジニアをあてがうもよし、S社事業に精通している内部の企画系・マーケティング職の方をあてがうもよし、はたまたS社内にいない宇宙人材をリクルートするもよし。
一方で、一年前に放り出してきた廃炉事業には人材が集まらないのです。もう世間の関心も完全に薄れていますし、国は原発をベースロード電源と位置づけていますが、国民誰一人としてそれを望んでいない。
この辺りは人によって立場が分かれるので私の意見は表明しませんが、少なくとも福島のあの事故炉をどうするのか、本当に廃炉するのであれば誰がどうやって進めるのか、今みたいに国民の顔色を窺いながらダマシダマシやるのではダメだと私は思うのです。
そうしたときに私のオリジンに鑑みて再考すると、「あー、宇宙よりも廃炉のほうが私にとっては大切だ」となった訳です。
まだ現場を離れて一年経過という状況でしたので、私を必要としてくださる方々が幸いいらっしゃいました。

価値観は人それぞれですし、何が正しいかなんてわかりっこないので、迷ったときは自分がピュアだった頃の感性を思い出すのが一番腹落ちするのかな、と思っています。
それが原子力発電ではなくて環境一般でもよいのかもしれませんが、最終的にこの選択をしたということは、広島出身の私に「オマエは原子力・核の問題を何とかせい」と目に見えない存在から言われているような気もします。
思えば、大学の研究室も「放射線衛生工学講座」→総合シンクタンクでは「廃炉推進グループ」へ、そして今回のご縁です。
あまり深く考えずとも、「抗う必要なし」という感じすらします。
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なるべく原文ママとしましたが、一部デフォルメしています。それでも書きすぎなくらい書いていますが、こういうことでもない限り書くことのない文章かと思いますので、敢えてこの形で残させていただきました。

内容(私の思考や選択等)については賛否両論だと思います。そこよりも、各々の価値基準をどこに置くか、どうすれば自分の心に偽りなく生きられるか、という視点でお読みいただければ幸いです。

とぼけた昔話ばかり書いているhello!ですが、結構マジメに自身のキャリアを切り拓こうと日夜もがいております!

と言いながら、次回はまた連載コラムで柔らかい話に舞い戻ります(笑)。ではでは。

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