人生いろいろ⑭ 青春篇(部活小噺)

前回に続きまして、大学生時代の部活、スピードスケートの話です。
大学二回生から関西学連の役員になり、大学という垣根を超えた幅広いネットワークをつくり自由人を決め込んでいたところまで書きました。で、大学2年生もあっという間に冬場1月を迎え、幹部交代の時期になりました。私達の学年から主将、主務、会計等の役職者が出るのですが、私は学連役員の職責がエスカレータ的に重くなるだけなので特段気にも留めていませんでした。

そんな中、事件が起きました。主務は問題なくKに決まりです。が、主将候補の前年度副主将のSが突然「辞める」と言い出したのです。これは彼が無責任な訳でもなんでもなく、途轍もなく責任感が強い男だっただけに起きたハプニングです。そもそも先輩方が彼を主将候補に挙げ、副主将に据えていた理由は私達同期の中で一番人望があり、かつ上下との橋渡し役も十二分にこなせる人間性を持ち合わせていたからです。ただ、彼は文系特有なのか元来の性格なのか物事を超真面目かつ難しく考えすぎる傾向があり、またもうひとつの難点としては肝心なスケートの実力が伴っていないという点がありました。後者については私達としては私達の部活の主将がエースでなければならないという認識はまったくありませんでしたし、本人がそうなろうと相当努力している、それでも現実は厳しい、という事情は痛いほどわかっていました。なので彼の成績が上がらないことに関して我々も彼と同じく歯痒い思いこそあれ、彼が主将として不適格だなんて誰一人思っていませんでしたし、新主将は彼しかいないと勝手に決め込んでいました。それが突然の退部宣言です。彼の潔すぎる決断、本当に冗談だ、と思ってましたし、百歩譲って主将を受けないまでも辞めなくたっていいじゃん、と思ったのですが、なんとも正義感の強い男です。主将を引き受けないからにはここに残る訳にはいかない、という心境だったのでしょう。なんとも不器用な。。。この辺は今の私に伝染してしまったような気さえしますが(苦笑...)。

そんな訳で、先輩方も「もうどうしようもないからオマエ達で話し合って決めろ」と、一切は私達の代に委ねられました。最初はSも交えて議論しましたが先のような結論。残った人間で何とかするしかないね、ということで、我が家で緊急ミーティングをすることにしました。その旨をみんなに伝えたときには既に私の腹は決まってました。
「で、どうする?」
もちろんみんなうつむいたまま。
「じゃあ、俺やるよ」
という訳で、主将と関西学連(+選手)の兼任が決定。壁は高いほうが登り甲斐があるというか、人の上に立つこと、組織の全責任を負うこと、と言うと大袈裟な感じになりますが、やったことがなかったんですよね。人として、(苦手なことではありますが)いつかは経験しなければならないこと、そう思うと願ってもないチャンスにも思えてきたのです。

とはいえ、あまり実感がまだ湧かなかったのでしょう。幹部交代はしましたが、まだ四回生の先輩も卒業していない訳ですし、チームとして大きな変化はない訳です。そんな中、二回生の2月だったか冬季合宿を名古屋で行った際に神様が私に微笑みました。前のnoteに典型的な短距離選手MKさんの強烈なバンクの話を書きました。依然それを身に付けられずにいたのですが、愛知県の晩連に参加した際に、当時注目の高校生AT君をマークしてリンク上の休憩時間も彼の後ろでスケーティングを見よう見まねでトレースしていたのですが、彼が仲間と突然遊び始めて急加速。「え、待って!」という感じで慌てて追いかけたところ思わぬスピードがついてしまい普段のコーナリングではとても曲がり切れない状態に。そこで「やばい!!」と思ったら身体が勝手に動いたんです。今までかからなかった「バンク」がかかったんです。これは衝撃でした。なんというか「恍惚」という感じの約0.5秒間。それがまるで1分間のように感じられました。相当派手にコケて大怪我することを確信していただけに、無事だったどころかまさかキャーリング(バンクをかけてのコーナリングを当時こう呼んでいました)を覚えるとは。で、偶然の産物、この一回だけだろうと思っていたら、何度かトライしたんですがどうやら身体が完全に覚えてくれたようなんです。これにはコーチのC大学OBさんも随分喜んでくださり、合宿最終日には全体練習にも関わらずキャーリングの個人特訓を受けました。京都に戻った後も他大学の選手から「hello!さん、コーナリング変わりましたね」と。京都府の役員さん達も何があったんだろう?と不思議そうでした。そんな訳で、主将として迎えた二回生の後半シーズンは来季に向けて期待の残る形で進んでいきました。

あれ、2回で終わらなかった・・・。
もう1話、いや2話書かせてください。やっぱり、この話は長くなります。。。


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