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棒アイドル #毎週ショートショートnote

 ある日の午後、たくさんの木の棒を抱えて夫は帰ってきた。
「一体何を始めるつもり?」
棒を前に、夫は語り始めた。
「木は時間の経過とともに色が変わる。暗い色味から明るい色に変わるものもある。そこに物語があるんだ。サンドペーパーをかけたら次はオイルで磨く。木目は美しいし、節があればそれも面白い。パイン、オーク、ラバーウッド、ウォールナット、マホガニー…名前もカッコいいだろ。俺はな、コイツらを棒アイドルとして売り出すんだよ」
「棒アイドル?そんなもん相手にされないわよ」
「やって見なきゃわからんさ。万物に美を見い出すのが日本人なんだよ。棒の個性にあったストーリーを考えて、萌えるイラストもつけてアピールする。刀剣男子やウマ娘だって、最初はバカにされたに違いないし…」
私を無視して夫は話し続ける。「俺には見える。ピカピカに磨きあげた棒をうっとり見つめる女の子たちが!」
聴いているうちにわたしもその気になってきた。いやいやそんな…。

(410文字)


たらはかに様の企画に参加させていただきます。
今回の出来ですか?
いやいや、そんな…。

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