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2021年、3LA売上ランキング発表(20-1)

こんにちわ、3LAというレーベル/レコ屋を運営している水谷です。
2021年もたくさんの注文をありがとうございました。2022年もどうぞ宜しくお願い致します。
http://longlegslongarms.jp/

前回までの記事はこちら。

ここから先は売上20位以上になり、レーベルリリースが多くなります。それは当然なのでそこにいくつか解説的なものを付け加えられたらと思います。


3LAディストロ売上ランキング - No.20〜11

20. Ramblin' Roze - Howl of The Coomb
19. Never Before - SAVAGE
18. SPAWN - Live at Moonah Arts Collective

中華ストーナーNever Beforeの音源はめちゃ良かったです。このRamblin' Roze、Never Before、SPAWNは中国のドゥーム/ストーナーレーベルSloomweepからのリリースをまとめて入荷したものです。SPAWNのみ2021年リリース、他は過去作だったりしますが関係ないですよね。ツイートもリリースでないものでたくさん拡散されるは稀ですが、いくらRTしても売上にはそんなに反映されない。でもいいんです、買ってくれる人に届けばね。中国に関しては、政治的には間違っている。それは承知の上で民間レベルでどうコミュニケーションしていくかっていうのは大事な話。

17. SPOILMAN - SOLID GREEN
正直1stがバカ売れしたのは何かの間違いだと思っていたんだけど、2ndは更に誰もいない方向に迷いなく直進。「Christmas Song」と銘打っておきながらクリスマス感のさっぱりないジャキジャキのギターリフ、「Bolero」というタイトルでも全然3/4拍子ではないジャンクロック、SPOIMANの嘘つきっぷりが発揮されたタイトル回収する気が全く見られない全10曲。前作以上に中低音のファット感が減退、ジャンクさだけが更に膨張。誰も真似したいとも思わない孤高のサウンド。何もかもが正しさを要求されるこの世界で、誰かを騙してしまう可能性がある音楽だけがロックである。これは結構いいレビュー書けたと思った。


16. envy - All The Footprints You've Ever Left And The Fear Expecting Ahead
名盤LPの強さよ。はっきりいってenvyのLPはかなりの利益を齎してくれました。僕のレビューは2021年時点からこの作品を見たもの。Emo/Screamoシーンに大きすぎる影響を残したenvy、だからこそ自分はその丸パクリじゃ意味なくて「他の誰かから影響を受けて生きていくのは当たり前のこと、誰かのひねり出した回答に乗っかるのではなく、自分がアウトプットできる表現が大事。」このメッセージと共にレコードを売っていきたいのです。envyだって自分たちの真似みたいな音楽をいまさら新しいバンドから聴きたくもないと思うのですよ。envyを超えていきましょう。(もしくは迂回せよ)



15. Cerce - Discography 2011-2013
ほぼ2021年前半期の売り上げでランクイン。Cerceは2021年に新作をデジタルリリースしていて、これのフィジカルリリースに関わりたいなと思ってるんだけど無理かな...。『Cowboy Music』も是非聴いてみてください。インタビューを通じてバンド側とも何か関係性が築けたようにも思えます。


14. xonto - robota
在庫数がもっとあれば全然上位10位にも入ってきたであろう国内2021年リリースの中でも有数の良作EP。重心を低く保ち畝るベースとドラムのグルーヴとノイズとメロディと、サイケデリックに空間を埋めていく混沌のギターサウンド、その洪水の中でトーンを抑えたボーカルの刻みがリズムとしても作用しており、これが思いの外ノれる。ハイテンションとダウナー、整然と混沌、静と動、あらゆるコントラストがその両極を行き来するのではなく同じ空間に共存するというサウンドにも特徴があるし、コードワークも流石...と褒めたくなるけど褒めすぎてはいけない。大袈裟な表現じゃない、リアリティに向き合っている歌詞もいいですね。2022年は新作が聴けるんでしょうか。激情をよく知った上で、そこにとらわれない表現をしている人たちの音楽はこの先ずっと楽しみにして生きていけそう。



13. quiqui - 町の鈴生り
アルバムリリースのタイミングに合わせて急に旧作編集盤は売れまくり、海外からのオーダーもあってランキングに返り咲きました。2018年リリース、3年目で全てを売り切りました。レーベル側はもう在庫なしで、もしかしたらどこかの店舗で在庫は残っているかもしれません。バンドは在庫持っているはずなので物販で是非確保を!僕的にはもうこの編集盤の楽曲群も過去の話、『もう少しの暦』の完成度の礎になったと思います。



12. Gensenkan + zeami - Split
zeamiは活動停止してるらしい(?) このスプリット、凄く好きなんだよな...。GensenkanはKomusoにも通じる激情の中にある静けさを、隙間を歌うことの出来る数少ないバンド。音の隙間、言葉の隙間に表現がある。一方のZeamiは歌詞の響かせ方、楽器の響かせ方が見事で、エモバイオレンスの匂いも。どちらのバンドも音はしょぼいはずなのにかっこいいと感じるし、どちらのバンドもボーカルがリリシストなのも良い。方向性は全然違う2バンドなのに、時代との距離の取り方というか、どちらも孤独な感じがするのもまた良いのかもしれない。次の作品を...本当におねがいします。



11. Tenue - Territorios
海外レーベルとの共同リリース、その結果今まで以上に鮮明に浮かび上がったのは日本国内と国外での温度差。いや、それ自体はネガティブでもポジティブでもない、違いがあるということが大事で、日本がすべて国際標準に合わせていく必要は全くない。それでも3LAとしてはこの海外メインの文脈に共鳴している国内リスナーに音楽を届ける必要はあると思う。リリースでの3LA在庫分も店舗分も売り切れていると思いますが、不思議なほど話題にならなかった音源で結構考えさせられました。バンドはスペイン、ガリシア州の文脈を組んでおり、Ictusの名作「Imperivm」にも通じる1曲30分の長尺大作の1曲でのアルバム。長い時間をかけて意識の底へと降りていく、その「時間」がまさに、我々には必要だったのだと納得させられる。



3LAディストロ売上ランキング - No.10〜1

10. ...AND ITS NAME WAS EPYON - Discography
初めて入荷したカセット+ZINEから既に本気でガンダムをScreamoの思想に組み込んでいた信じられないバンドだった。海外の文脈で古くからエヴァンゲリオンやウテナ、lainなどジャパニーズアニメがその引用となっている例は多々あったけれど遂に自分が向き合わねばならないタイミングだった。でもインタビューしていく中で、きちんと腹落ちできた。これはふざけているネタじゃない。同時に、誰かに理解してくれよと懇願するようなものでもない。わからなくいい。自分自身の問題なのだと。



9. Svdestada - Azabache
進化したSVDESTADAのアルバムは、遂にピアソラ要素をも取り込んでしまったのか。かつてネオクラストの中にはストリングスを編成に加えたバンドがいくつか存在していた。しかし、スペインではそれはストリングスではなくバンドネオンでありタンゴだったということなのか。そうか、彼らが再び自身のアイデンティティと向き合った上で出した答えがこのサウンドなのだとしたら、そこにスペイン伝統のミンストレルは存在していたという仮説は成り立つのかもしれない。そう考えると、より詩的になっていた歌詞、伝統的メロディに回帰した音階、それらを現代に提示する彼ら自身のネオクラストサウンド...う〜〜ん、参りました。2020年代で未だ"ネオクラスト"を続ける奴らの本気です。



8. snag - Death Doula
海外メディアで多くの賞賛を得たsnagの2ndアルバム。賛否のある現行のScreamo、もう聞かないと言う人もいる今のScreamo。そこに対して"正当な評価"なんてものは無いと思う。そんなものは嘘だと思う。いま現実で起きていることに対して、反応し表現していくことの結果が正解だったかどうなのかなんて誰にもわからない(メジャーレーベルはそこを自分たちがいかに正しいかという文脈を作り上げるためにメディアを操作する)、いま2000年代のScreamoがようやく正当な評価を受けているように、リバイバルじゃないsnagのScreamoもまた、すべてが過ぎ去った後、うまくいけば評価され、うまくいかなければ忘れ去られる。評価がいいねの数で決まるような世の中になりませんように。



7. Stubborn Father - Stubborn Father
2019年にリリースされたStubborn Fatherの1stアルバムを仕様を変えて再プレスしました。メンバーチェンジを経て新体制となってからレコーディングされた新曲「有形」をボーナスディスクとしてDisc2に収録した2枚組、限定150組でのリリース。Disc1の内容は初回プレス時の内容の通りで変更はありませんが、フロントジャケットを変更。歌詞カードの仕様に関しても各曲の独立性と作品全体の繋がりをより明確に表現。これはもう本当に大変な仕様です。でも数が少ないからこそここまではしなくては。自分たちを削って味わってもらう、指宿産鰹節のようなこのダシで最後まで楽しんで欲しい。



6. lang - cahier
2020年にリリースされ、現在国内ソールドアウトとなっているlangの『cahier』が、Dog Knights Procductionsの手により12インチとしてリイシュー、というわけでいちおうLPのほうは2021年リリースなのでした。CDの仕様も大変でしたが特製ジャケットを再現したLP版もDog Knightsの理解度高し。今年はboneflowerとのスプリットもリリース。だんだん国外にも足場が出来てきている感があるので、早く海外ツアーが出来れば良いなと思っています。日本語のScreamo、それは日本独自進化した亜種Screamoだと思うのですがそれがどこまで通じるのか見たいのですよ。



5. NO MAN - ERASE & DEVILS CAST LONG SHADOWS

pg.99と共にUS激情の立役者とも言えるMajority Ruleのメンバー3人にMaha Shamiが加わって結成されたNØ MANの2020年作品『ERASE』と2018年作品『DEVILS CAST LONG SHADOWS』を収録したディスコグラフィーCD、もはやそんなに需要はないかもしれない、とすら思いつつリリースするしかねえという気持ちで出しました。そこは信じなくちゃいけないんだよなって改めて思いました。売れたからね。



4. blue sketch. - 懊悩の魍魎
リリースではなかった作品の中では一番売れました。3LAで流通も担当したのが大きい。日本国内のシーンどころか、現行のUS/EUにも存在しない彼らのサウンド、90年代ハードコアの進化系として"有り得たかもしれないもう一つの可能性"を突き詰めていく彼らのハードコアは、全てが軽薄化していく現代にとってあまりにも重い。これも中々好きな文章でした。アルバムが待ち遠しいね。



3. Daitro - Complete Discography
これ出せたの本当に嬉しかった。1stプレスは売り切れ、2ndプレスもほぼ売り切れ、すこし店舗に在庫残っているかもしれません。自分の思いは全部URLのほうに書いちゃってるんですが、残すべき作品はちゃんと歴史に残していきたいですね。3rdプレスはすぐには必要ないとは思っていますが、今以上に2000年代激情が必要な時代はあるのだろうか?いまが最後かもしれない。この先だんだん、彼らの表現すら共鳴されなくなると可能性がある。70年代の初期パンクのように、80年代のUSハードコアのように、それがジャンルのある一時代のものとして認識されるというのも寂しいようだが歴史に残るとはそういうことだ。Daitroや2000年代激情はきっとそうじゃない。伝わらなくなったら忘れ去られるものだと思う。



2. quiqui - もう少しの暦
岐阜羽島から世界へ。静寂の2020年代に鳴り響く唯一のエモ・エクスペリメンタル・スクラムズ。もうみんなわかってくれただろうか?quiquiがきっちり一歩踏み込んでいったってことを...。「町の鈴なり」のリリース時の売り上げ枚数とは桁違いの数字、リアクション、そして実際の賞賛を頂きましたがその全貌はまだ手の内を明かしきれていません。ライブを本当に見て欲しいところです。激情出身、だけどその終着駅はどこなのかってワクワクさせてくれるほど未知数。計算高くもなく天然なんだけど、個人的にはメッセージが歌詞じゃなくて音になっているってのが一番なんです。



1. SWARRRM - ゆめをみたの
SWARRRMの6thアルバム『ゆめをみたの』、CDリリース後Dog KnightsからもLPリリースへ。もうこれ以上あるわけないってくらい当然のように一番売れました。『こわれはじめる』でも完成形にみえていた(それでもバンドはその先にすぐに進もうとしていたが)が、突き詰めるということがどういうことなのか、極めるということがどういうことなのか、深化するということがどういうことなのか、本当に刺激となって考えさせられる。それは全ての人を満足させようとするものではなく、自分自身たった一人を満足させようという自己中心的な願い。そのプライベートな欲望が極まることで生まれる芸術が誰かを突き動かすことにもなる。メッセージソングなどという安い言葉ではなく、そこからメッセージを感じずにはいられないパワーストーン。このバンドはどこまでいけるのかって、そして自分はどこまでいけるのかと奮い立たせる。そんな存在ってアーティストに限らず、自分の人生の中であとどれだけ出会うことが出来るのか。そう思うともっと音楽を掘りたいし、色々なものを知っていきたいと思う。知らないことが多すぎる。冒頭の「答えが」はブラストビートと歌がぶつかり合うグラインドコアというSWARRRMそのものを体現。そしてラストトラック、「みたされて」まで壮絶な美しさの中で流れ、そしてそれらを破壊して終わっていく。完成させそうなところで崩壊していく様の中で、この先があることを確信させてくれる。

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2022年、楽しみに生きていきたい。

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