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IADS説明会を開催しました!

先日、歯科学生さんに向けてInternational Association of Dental Students(通称IADS)の説明会を開催しました。

全国各地から14名もの学生さんが参加してくれました!

一歩踏み出そうとする後輩たちの姿を見て頼もしく思っています。

開催後にも「聞きたかった...!」とのお声も頂いたので、アップデートを加えながら当日お話した内容を記事にしてみました!

5,000字弱のボリュームですが、どうぞ最後までご覧ください!!

70th Annual Congress のハイライト

Annual Congress (通称AC)とは、歯科学生と卒後2年以内の歯科医師たちが企画運営する年に一度の学術大会です。
※春季にはACよりも少し規模感の小さいMedial Year Meeting (通称MYM)があります。

どちらの大会も学術目的のScientific Program と交流目的のSocial Program がメインコンテンツとなっています。

こちら9月に私が参加してきた70th Annual Congress のタイムスケジュールを見ていただくのが手っ取り早くイメージ湧くかと!

この中から私が参加したプログラムの様子を一部紹介していきます。

┗Lecture1: Satisfy the Planet and Satisfy the Patient

まずは予防歯科の講義。専門的な内容かと思われがちですが、IADSの大会は学部1年生から卒後2年まで幅広く対象にしているため概論的なトピックが多いです。

歯科からアプローチできるSDGsは?という問い。3.健康と福祉にフォーカスされがちですが、こんなにも様々な角度からアプローチできるとか!

今回の大会コンセプトがGreen Dentistryだったことからも分かる通り、世界は【持続可能性】をかなり意識している様子が伺えました。持続可能という大枠があって、手法として環境保護やDXやAIなどホットなトピックが挙げられるイメージ。

アカデミアもビジネスも最後は「その研究や事業がどのような影響を社会に与えるか?」が問われます。そうした点からも今後持続可能性が見込めない研究や事業は評価されにくく、また将来的には淘汰されていくでしょう。

今回の大会参加者はアフリカや中東などいわゆる発展途上国出身者が多かったのですが、その辺りの感度は日本と比較して圧倒的に先進的な印象を受けたのが正直な感想です。

┗Lecture2: Tooth transplantation

続いては歯の移植に関する講義。天然歯を用いて欠損補綴することで、プラスチックや金属などの材料を削減できる点がGreen Dentistryなんだとか。あらゆる見方ができますね〜

親知らずを抜歯して欠損部に移植する様子を動画で見ました。


今回は座学だけでしたが、以前に参加したチュニジア大会では外科系のワークショップもやっていました!

┗Workshop1: Public Health Bootcamp

来年からPublic Healthを専攻する身として、めちゃくちゃ楽しみにしていたワークショップ。

序盤は世界各国でのケーススタディが解説されました。

日本の8020運動が取り上げられてちょっと誇らしい気分に
ニュージーランドの病院では砂糖添加飲食物の販売が禁止。1つの病院での取り組みが国策になった例です。


ケーススタディの解説後は5人1組のチームでのディスカッション形式でワークを行いました。

私のチームはトルコ、スーダン、日本、パレスチナ、エジプトで構成


与えられたテーマは歯学部教育と歯科保険制度の2つ。各チームの代表者が自国のケースを提示し、チームメイトが様々な視点から掘り下げ、皆で課題を洗い出し、改善点まで考えて発表しました。

私が代表者になったため日本の歯学部教育や歯科保険制度について話合うことに。6年制の手厚い学部教育や国民皆保険制度にはチームメイト達も驚いていました。一方で、過疎地域の歯科医師不足など、どの国でも共通の課題もありました。

特に臨床教育に関しては、学部卒業後は一般歯科医としては即戦力という認識の国が大半で大きなギャップを感じました。とは言え彼らの心中にも不安はあるようで、卒後研修までクリニック単位で提供されているのは学生目線ではかなり羨ましいとの本音も暴露。まあ何事も一長一短、違う環境から学べることは多いと改めて痛感しました。

┗Workshop2: Laser Magic in Daily Dental Workflow

もう1つのワークショップはレーザーを用いた軟組織形成。なんて言われると難しそうですが、現在研修医の私もレーザーを用いて歯肉を切除した経験は全くありませんので!

最初はレーザーに関する講義があります。繰り返しになりますがIADSの学術コンテンツは幅広い層を対象としているため初歩的なところから教えてもらえるので安心です。

国試前に勉強したな〜と思いながら。

さて講義が終わったら実際に器具を用いた実習です。

柔らかめのお肉と少し硬めのトマトを用いて練習しながら組織の硬度による違いを学びました。
私も実践しました!


隣ではインプラント模型を用いたワークショップもやっていましたよ!

┗Culture Exchange Fair

交流プログラムも充実しているのがIADSの醍醐味。文化交流会では各国のお菓子やドリンクを持ち寄り参加します。

甘党のアラブ人たちに大人気だったかりん糖
朝からレクチャーを受けるとは思えない盛り上がり。こういうノリは万国共通?笑


┗空き時間は5つ星リゾートでのんびり

個人的にはここが一番好きなところなのですが、IADSの大会は興味のあるものに参加すればOKなスタイル。程よい空き時間があります。

今回の会場はオールインクルーシブの5つ星リゾートだったのね、レストランやカフェはもちろんホテル内の全ての施設が利用し放題でした。

海辺のテラスでイタリアンビュッフェ


インフィニティプールでのんびりバカンスタイム


まとまった時間がつくれたら外出してレジャーを楽しむこともできますよ!

世界的名所にてダイビングもしてきました


他の国際交流との違いって?

海外に行ってみたい大学生にとって、大学主催の研修プログラムや自分で申し込む短期留学など様々な選択肢がありますよね。

結論から言うと...IADSの大会は研修プログラムと短期留学の良いとこ取り!同じ学問を学ぶ友人を作るには絶好の機会です!

<大学主催の研修プログラム>
助成金が手厚いため自己負担額が格段に安い!!!航空券分ぐらいの価格帯で行けるプログラムが大半の印象です。
デメリットを挙げるなら自由度の制限。規定のプログラムに従う必要性があり、自由に行動することはほぼ不可能。また大学はローカルの人で構成されているコミュニティなので出会える人の幅も限られています。

<短期語学留学>
こちらは留学エージェント等を介して自分で全て手続きが必要です。語学学校に通うと日中は授業がありますが、昼過ぎには終わるので自由な時間はかなり多いです。
程度に偏りはあれど国籍の比率は配慮されています。私が半年間留学していた実体験からですが、2週間の短期留学で異国の友達を沢山作れる人ってかなり稀な気がします。と言うのも3ヶ月以上の滞在で来てる人が大半なので周りは既に仲良くなっている状態。ここに2週間で馴染めるのは相当なコミュ力の持ち主です。
またこちらはメリットでもありますが、本当に多様なバックグラウンドの人がいます。歯科業界の友人に出会える確率はほぼ0と言っていいでしょう。

これらと比較してIADS大会の特徴を一言で表すなら「世界中にいる同じ学問を志す友人と旅行感覚で出会える」

コロナ禍が明けた学生最後の春休みにはIADSで出会った友人たちにもめでたく再会できました!

ルーマニアの友人とドイツのデンタルショーでばったり再会!
チュニジア大会以降コンタクトを取り続けている親友に会いにポーランドまで!ご家族にもお世話になりました
オランダから私の地元の京都に遊びに来てくれました。抹茶ビールで乾杯!


生涯に渡る友人ができたことが、結局は何よりの財産になっています。

伝え続けたい国際交流の必要性

最後に私から皆さんに1つの問いかけがあります。

あなたが『私たち』と認識できる人って誰ですか?

家族ですか?友人ですか?日本国民ですか?それとも地球全体ですか?


現在進行形で渦中にあるウクライナとロシアの戦争、イスラエル軍とハマス軍の衝突、スーダンの内戦。遡るとトルコでの地震、パキスタンでの洪水、レバノンでの爆発事故。ここ数年でも沢山の悲劇が起こりました。

どんな風に心が動きましたか?


どれも遠い国での出来事です。それは私にとっても同じ。でもどれも他人事とは思えなかった。なぜなら全て私の友人たちが当事者として関わっているからです。

IADSを通して50カ国以上に友人ができました。中には長年の親友と同じぐらい大切な存在もいます。彼らの家族が、友人が、母国が被害に遭っていることを知ると、本当に胸が痛くなります。私の力なんて微力なのは分かっていても、何もせずに傍観する選択を取ることの方が辛いです。力になれる方法を探し、行動を起こします。何より私はこの先も絶対に忘れることはありません。すべて『私たち』に起こったことであるから。

「視野を広げることが大切だ」など教訓めいたことを言うつもりはありません。私たちは自分1人の力では他人の痛みすらも想像できない愚かな生き物でありながら、世界の平和を望んでいる尊い生き物であることを自覚することが必要です。

『私たち』の拡張が連鎖する。少しずつ、でも確かに平和をもたらす手段であると私は信じています。


いただいたご質問

最後に説明会に参加してくださった皆さんからの質問を掲載します。

Q. 専門知識が乏しい状態で参加しても得られるものはありますか?

私は学部2年生のときに参加して十分楽しめました!交流系のプログラムも充実してますし、勉強系も手を動かすワークショップは細かい理解は必要ないです。ただ正直に言うと、私は当時レクチャーの内容理解に関してはさっぱりだったと記憶しています。(私立の学生さんは学習進度が速いのでもう少し分かるかもですが...!)。それでも私は学部2年生で行ってよかったと思っています。1週間程度の研修で得られる知識量はたかが知れています。それよりも猛烈な憧れや目標に出会えることの方が遥かに大きな財産です。だからとりあえず行ってみよう!

Q.ある程度の英語力が必要なのでしょうか?

スコアで示される英語力よりもコミュニケーション力やコミュニケーションを取りたいという意欲の方が断然大事だと思います!
ただより多くを学びたいということでしたら、受けたいレクチャーの専門用語ぐらいは調べてから行くのもいいかもしれないですね!

Q.1人参加も可能ですか?

私は過去3回すべて1人で参加してます!現地でお友達は作れますよー!ただ1人行動になってしまう時間がない訳ではありません。私は寧ろそれがありがたいのですが...(笑)異国の地で1人行動は不安という方は日本からお友達と一緒に参加しましょう!

Q.開催情報はどこから入手できるのでしょうか?

IADSの公式Instagramから入手できますよ!またIADSには日本歯科学生連盟が団体加盟しています。日本の歯科学生は無料で所属できる団体ですので入っておくことをおすすめします!

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