Thank You♥Birthday - 現と虚とプリパラと、さなのばくたん。

レポ上がるの早くね?と思った皆様方、これは2023年のばくたんの感想文です。早いどころか1年遅れです。


■諸注意

※本文章は「さなのばくたん。 -ハロー・マイ・バースデイ- Powered by mouse」ならびに、名取さなのイベント、楽曲等に関するネタバレを含みます。
※プリパラの解釈文ではございません。ただしプリパラに関するネタバレを含みます。

※考察、解釈、自語り、メタ言及 (俗に言う"中の人"という観点を用いた、バーチャル人類に対する言及) が多数含まれています。苦手な方はお気をつけ下さい。

これは、ばくたんの感想文と見せかけて、プリパラと自語りの混じった怪文書です。
粒度の高い解釈は他のせんせえ方が公開してくれているので、本文章は、単なる独白とします。

名取には読んで欲しいけど読んで欲しくない。


■はじめに

せんせえ方のうち、少なからずの人達は、彼女が提示する "暗い要素" に関して触れるのを避けていたり、あるいは見て見ぬふりをしていたのではないかと思う。
「ば~ちゃるな~すの名取さな」の人格を主として、彼女のことを捉えた時、"暗い要素"に言及することが野暮なのは間違いない。全力で同意したい。
これまでの"ナースの名取"本人からしても、"暗い要素"に触れられることは決して本意で無いことだろう。


でも私は、2018年10月12日の1時頃に公開された"あの動画"を見て、本格的に名取のことを推すようになった肉人間。
名取の"暗い要素"が、大好きだし、そんな要素を創り出した彼女のことを一人のクリエイター、表現者として本気で尊敬している。
だから、「名取さな」という"一コンテンツ"を、そのクリエイターも含めて推している、というスタンス。


脚本・総監督の彼女(≠ナースの名取、患者の名取) は、"暗い要素"に翻弄されるせんせえ達を見て、ほくそ笑んでいることでしょう。
なので、全力で釣られ、翻弄されることにしたい。


■無限大ってことですか

「"名取さな"というコンテンツの物語が完結する所を見たい」という感情と、「"名取さな"というコンテンツを末永く楽しみたい」という感情が、私の中では併存している。

むかしむかし、具体的に言うならば2019年3月まで、「名取さな」というコンテンツは突然"動画"を上げた後、跡形もなく姿を消して"完結"すると思っていた。
仮に「名取さな」が今ほど活況を浴びていなかったら、そんな世界線があっても不思議ではなかったと思う。
でも、現実は異なる。2019年当時においても、突然姿を消すにはあまりにも有名になりすぎていたし、迷惑の掛かる範囲も増えていた。冷静に考えれば、跡形も消えるなんて荒唐無稽な話なのだけど、物語を進めるために彼女ならやりかねない、そんな危うさがまだ燻っていた時代だった。


つい最近までは、「患者」の病状が回復することをもって、「名取さな」というコンテンツが"完結"すると思っていた。

今回、2023年のばくたんは、キービジュアルの入院着等から伺い知れる通り、"暗い要素"が文字通りの"鍵"となることが予想されていた。
英題は「HELLO AGAIN MY BIRTHDAY」とされており、何かしら大きな動きを伴うであろうことは、疑う余地の無い状況であった。

でも、"暗い要素"の匂わせが、コンテンツ完結の合図だとは全く思わなかった。逆に、コンテンツを今後も継続して行くための儀式だと思った。

"暗い要素"による設定は「名取さな」の世界観を決定付けているが、同時に、その設定が活動の枷となる側面も見受けられるように思えた。
だから、場合によっては「退院して普通の女の子になる」可能性すらあるのではないか、とも考えた。
その他諸々思案は巡らせたけれど、結局のところは、「名取のことだし、上手いこと展開してくれるでしょ……」とだけ考えることにした。
「最終列車はまだ来ない」から。彼女なりの、コマの進め方を信じる事にした。


■ハロー・マイ・バースデイ

「ばくたん。」冒頭の「汝の願いを叶えたくば、まず汝と向き合うべし。」を見て、覚悟した。これ匂わせレベルじゃなくてガッツリ触れる奴だな、と。
でも私はバカなので、パラレルワールドの名取を見て「ああ、汝って別世界線の名取のことか~」と安心してしまった。

今見れば、パラレルワールド名取の悩みは、全て名取さなの活動の根底に繋がる話であった。特に、キョンシーパートに至っては、問題文に「騙し続ける」というワードが入っていたし、挿入歌が「全部ホントで全部ウソ」である。こんなに分かりやすくストーリーの行く末を示唆していたのに、ぼけ~っと楽しんでしまっていた。

そして急転直下。画面が暗転し、患者の名取がスクリーンに現れた。
患者の名取は「本当はナースではなく、なりたくて憧れている」「何年もみんなを騙してきた」と独白する。

当時はそれこそ「ナースの名取には包帯/動画は見えてない」だとか、あらゆる可能性が考えられていた。
でも、真実は簡単だった。都合が悪いから、その部分は"ナースの名取"にとって見て欲しくない部分だから、見えていないフリをしていたのだ。


締めくくりがこのツイート。
たった一文に込められた意味が、あまりにも巨大過ぎた。

ばーちゃるな~すの"名取さな"の一人称は"名取"だし、普通なら"今日は"と記すだろう。

でも、このツイートの一人称は "わたし" 。
"今日が"と表現することによって、"今日"を強調し、意味があることを示唆している。

そう。本人含めてみんなが、ありのままの「名取さな」を受け入れた今日が、誕生日なのだ。


■夢か現か嘘か本当か誰もわからない

フォニィという曲の歌い出しに、
「この世で造花より綺麗なものはないわ 何故ならば総ては嘘で出来ている antipathy world」というものがある。
造花が、即ち嘘が綺麗なのは真実だと思う。何故なら、その人の理想が詰まっているから。理想が汚い訳がない。

VTuberは全てが真実でも全てが嘘でもない。
現と虚がグラデーションのように入り混じっている。
でも、そんな綺麗さと汚さの入り混じった所に魅力を感じているのだ。


では「名取さな」はどうだろうか。
例えば、「わたしの なりたかった わたし を みつけてくれて ありがとう」というのは、クリエイターの名取さなの本心が入っていると思う。

ただ、どこまでが真実でどこまでが設定か、明確に線引きする気はもう無い。
全部が「クリエイターの名取」の真意だろうが、逆に全部が設定だろうが、構わない。
何故なら、「名取さな」というコンテンツが見せてくれるものが好きだから。現だとか嘘だなんてことは、些事でしかない。そう、「本当にナースかどうかは、今はそんなに大きな問題じゃない気がする」のと同じことである。


私の中での「名取さな」の構造解釈は以下の通りである。

ナースの名取さな:
・VTuberとして表に出てくる人格
・患者の名取さなの理想という"設定"の持ち主

患者の名取さな:
・ナースの名取さなを理想として演じている、という"設定"の持ち主

総監督の名取さな:
・上記のVTuber「名取さな」を作り上げたクリエイター
・ナースの名取さなを演じている本人 (俗に言う中の人)
・本音はナースと患者の名取を介してちょっとだけ伝えているけど、決してナースや患者と=の存在ではない

今回、スタッフクレジットに「監督:名取さな」「脚本:名取さな」と載ったことで、「クリエイターの名取さな」と「患者の名取さな」が同一ではないことが明示された。

これは、「名取さなの物語をもって、中の人の真の感情まで掘り下げるな。解釈出来ると思うな」というメッセージだと受け取った。
だから、こんな記事は本来、存在してはならないのだと思う。


■ちょっとむかしのわたしは

「はじめに」の項で、2018年10月12日の1時頃に公開された"あの動画"について触れた。
本文章を読んでいる方ならご存知かと思うが、アナログ信号の砂嵐のようなノイズと共に、「患者の名取さな」による独白が綴られた動画である。

それよりも前の動画や配信でも、不穏な"暗い要素"は散りばめられていた。ただ、その時はまだ、名取の暗い要素はアクセサリに過ぎないと思っていた。
"暗い要素"は決してアクセサリではなく、主題の一つなのだと気付かされたのが、"あの動画"だった。


私はプリパラのオタクなので、マイキャラ創作 (※プリパラの筐体ゲームでは、キャラメイクが可能。そのため、作ったキャラクター✕プリパラの設定・世界観で創作が可能) を嗜んでいた。
といってもインターネットや同人活動等で公に発表したことは無く、設定作って遊んでたまに字書きして楽しんでいた程度。

そんな自作マイキャラ設定の一つに、「現実では病弱で、年中入院していて思うように体を動かせないから、プリパラの世界でだけは活発に動けるアイドルでいたい少女」というものがあった。

……どこかで聞いたことのあるキャラクター設定ではないだろうか。
別にそのキャラクターはナースに憧れた訳ではないし、ナースになってもいない。ちょっと設定の雰囲気が似ていただけ。
でも、「似たような設定で、こんなに凄い創作が見れるなんて……!!」と、「名取さな」に感服した。この時、本格的に名取のことを推すようになった。

ちなみにこの設定を考えたのは2017年のこと。設定を練る際に思い浮かべていたのは、同じプリパラの「北条そふぃ」。

上記のマイキャラは最終的に、他の子と共に、ボーカルドール(※プリパラの世界でだけ生きることが出来る存在)を目指し、ボーカルドールとして生きる事になる、という所まで設定を考えていた。
言ってしまえば、「現実から完全に逃避して、なりたかった姿にだけなった」。奇しくも、今回の名取の選択とは真逆を行くものだった。

P.S.本当はひびき様にもそふぃ様にもボーカルドール化してほしかった



2018年10月12日の1時頃に公開された"あの動画"を見て、本格的に名取のことを推すようになった理由は、もう一つある。

「わたしの なりたかった わたしへ」の根底に、プリパラの影響を感じたから。

プリパラの根底とVTuberの根底は非常に近い性質を持つ。
どちらも、「なりたい姿になれる」、ひいては「なりたい自分になれる」のだ。

プリパラのワールドでは、自分のなりたい姿に変身することが出来る。
ある者は、現実での姿よりも成長した姿を見せる。
ある者は、現実での姿よりもポップな姿を見せる。
ある者は、現実での姿もプリパラでの姿も「ありのまま」変わらない。

VTuberも同様に、「自分のなりたい姿」で、「自分のしたいこと」が出来る存在である。
もし、クリエイターの名取(あるいは、その感情を映し出した患者の名取) が「わたしも、なりたい姿になってみたい」と考えたのならば。

Believe My DREAM!で、チームを組むまでに紆余曲折あったマイドリが「だから迷わず世界旅行出かけよう!」「地図にまだない世界見つけにゆこう!」と歌った姿を、彼女はどう見てただろうか。


■なんにでもなれるしなににもなれない…

プリパラの楽曲に、ThankYou♥Birthdayという曲がある。

「そんな曲知らない」というプリパラ未視聴のせんせえ方も、「KURO-OBI」で知らず知らずのうちに聞いている人が少なからず居ると思う。
(名取x船長x姫の3人で歌唱した「Pretty Prism Paradise!!!」の次にらぁらが歌っていた曲が「ThankYou♥Birthday」)

この曲の歌詞が、とんでもない。
知らない人は、是非一度歌詞を検索してみて欲しい。

「ちょっと昔の私は なんにでもなれるしなににもなれない…」
「ありがとう私を見つけてくれて 今ここに来てくれて」
「伝えたいコトだらけで 言葉だけだとうまくできないかも」
「大丈夫みんなといると 普通の毎日がガラリ スペシャルな意味を持つ」
「誰かが叶え輝かす夢にはときめかない だって今度は私が私の夢に全力でときめき憧れたい そして次の誰かの夢が生まれるその日を祝うんだ!」

ThankYou❤Birthday / 真中らぁら

上記の歌詞は、私が恣意的に抜粋したものである。この曲の全てが全て、"名取さなの物語"に対応している訳では決してない。
そもそもこの曲自体、「何者でもなかった者が、何者かになった事」に対する、普遍的な歌詞にすぎない。

だけど、どうしても、名取の生き様に曲の文脈を重ねてしまう。


メタ的に言えば、
「ちょっと昔の私は なんにでもなれるしなににもなれない…」はデビュー前~デビュー直後を指す。
バーチャルの姿であれば、理想の姿で理想を演じることが出来る。だからなんにでもなれる。
しかし、誰にも認知されなければ、真に目指す理想には辿り着けないだろう。だから、なににもなれない。

でも、実際の名取は、たくさんのせんせえ達が見つけ出した。
その結果、配信やSNSだけでなく、楽曲、リアルイベント、様々な形でコンテンツ展開がなされている。
そして、ばくたんは「わたしの なりたかった わたし を見つけてくれてありがとう」とのメッセージで締め括られた。
この物語を、「ありがとう私を見つけてくれて 今ここに来てくれて」の歌詞と、私はどうしても重ねてしまうのだ。


彼女の物語が、この曲に沿って作られたものだと主張したい訳ではない。(これは絶対に勘違いされたくない)

ただ、彼女の脳内のどこかに、プリパラの影響があることは間違いない。
プリパラが192話掛けて伝えて来たマインドが、彼女の意識のどこかしらに潜み、受け継がれている。
そう信じてやまないのだ。


■さいごに

患者の名取は、2018年2月27日に「ちょっと悲しい事があった」と言及していた。

2018年冬頃の"悲しい事"には思い当たるものがある。
それは、プリパラが終わる事。(2018年1月発表・3月終了)

私もプリパラ終了後は、プリパラロスに苛まれていた。
でも、プリパラのオタクである名取を見つけて、後に"あの動画"で感情を破壊されることで、趣味へのモチベーションを再び高めることが出来た。
……そう。この時点で、既に名取は「みんなを癒やすナース」になっていたのだ。

改めて、生まれてきてくれてありがとう、名取。
……1年遅くなったけど。

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