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どのレースに参加しようか

風景が横に流れて行く。スマートフォンに映し出された画面を指で横に弾いていくように。

社会人然とした通勤電車の只中。周りのほとんどがスーツに身を包む中、Gジャンを羽織る僕は客観的に見て若干浮いているだろうか。


学校や仕事が忙しくてなかなか映画を観ることができていない。今年は映画を300作品鑑賞することを目標にしていて、これまでで大体250本ほど観てきたのだが、残すところ50日程度となった今になってペースが落ちてしまっている。

何本観るかではなく一作品一作品と向き合うことが大事だ、という声は置いておいて、とにかくまずはたくさん観ることにしようと始めた試みであったから、妥協はせず時間を見つけて数をこなしていきたい。とはいえ、映画は途中で中断して観るのではなくまとまった時間がある時に観たいし、通勤時などの隙間時間には気軽に取り出せる小説を読みたくなるので、これまた映画を観る時間は確保できそうにないのだ。

そもそもなぜ多くの映画を観るべきか、ということについては色々と回答が用意されているのだが、分かりやすく言えることとしては「自分の引き出しを増やす」ことが挙げられる。その目的の上では、現在行っているリサーチの仕事は重要なインプットの機会にもなっている。


10月から始めたテレビ番組のリサーチの仕事に慣れてきた。

秘密保持契約があるので具体的な仕事内容を書くことはできないが、これまでで4つの番組に携わってきた。情報解禁がなされたら報告することがあるかもしれない。番組のエンドロールに自分の名前が載るようなことになればぜひ報告したい(乞うご期待)!


例えばある日は動物系のネタを調べ、その次の日はゴルフの凄技動画を調べる、みたいにして日々新しい領域に出会えるリサーチの仕事は向いている気がする。以前とあるアプリのデータサイエンティストとしてアルバイトをしていたことがあった。毎日同じような数字の羅列ばかりを相手にするだけで(それはそれで面白かったのだが)、仮に正社員になった先に同じようなことを今後何十年も続けられるかと言われると自信が持てなかった。正直刺激が足りなかった。僕は基本的に飽き性であり、抽象的な次元で「本当にやりたいこと」以外は残念ながら長続きしないことを自覚している。


天資に出会えなかった人間が特定の何かのプロフェッショナルになるには長い時間をかけて経験を積むことが不可欠だ。だから、どのレースに参加するか、途中で棄権するようなことがないか、走り続けることで生まれる価値があるのか、と言うスタートライン手前の葛藤がある。僕のそれは大体1、2年前ぐらいにあった気がする。



リサーチの仕事は、放送されているテレビ番組の企画書を見ることができる貴重な機会にもなっている。現在は下積みと言うことにして(まずはお金を稼ぎたいから)リサーチの仕事をしている訳であるが、本来やりたいのは作家の仕事である。今ではテレビ以外にもさまざまな媒体があり、作家の仕事は幅広い。しかし、やはりテレビは特別なものとして自分の中で位置付けられている。規制の厳しい中でいかにして面白いものを発明するか。クリエイティブというのは常に制限があるの中で生まれるものであるから、むしろ今このタイミングでテレビ制作に関わることができるというのはとても魅力的に思える。


インターネットを活用することで誰でも容易に情報検索が行えるようになった中、番組の企画内容に相応しいネタを提供できるか、作家の要求に応えられるか、ということがリサーチには求められる。そのため、番組の視聴ターゲット、ロケのしやすさ、情報性、など様々な観点から考えた上でネタを提供しなくてはならない。

ある人が言うには、リサーチの仕事だけで月に100万円ほど稼いでいるプロもいるらしいので、極めても損はないスキルがそこにはある。


社長は「この仕事にはある種のセンスが必要だ」と言っていたが、僕の基本信条は「頭を働かしまくれば才能を凌駕できる」と言うことである。

才能のある奴が直感でできることを徹底的に分析してメカニズムを理解し、再現性のある独自の方法論を確立する。

「すごいこと」を才能ではなく方法に頼って成し遂げられる方が、何度も「すごいこと」を達成できると自分を信じることができる。ただしそこで重要なのは、他の人が真似できない、気づいていない、個性を活かした方法であるべきだと言うことだ。だから時間をかけて、それでいて効率良くこれを作り上げていく必要がある。


才能のある奴に出会うと感じざるを得ない嫉妬や劣等感。

「他の人と比較するな」というアドバイスをよく耳にするが、それは全ての人を救う言葉ではない。嫉妬や劣等感を抱くべき時期というのがきっと誰しもにあるからだ。これを踏まえた上で、いかにしてそれらを肯定的に捉え、うまく付き合っていくか。

辿り着いたのは、自分を弱者であると認めた上で、いかにして負けないでいるかの弱者戦略。マーケティングの世界では「ランチェスター戦略」と呼ばれるようなものだ。

自身の才能を信じて止まない人ばかりいるこの業界にいて、こんな弱腰の奴がいても、そして成功する事例があってもいいだろう。

自分の中で何を成功と定義しているかの話はまた今度書くこととして、自分の成功に疑いを持っていないと言うのは確かである。その点ある種の自信はある。

だからこそ掴み取らなくてはいけないものがあると思い起こす。

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