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{お試し作品} 「思春期症候群」

※PCでご覧いただくことを推奨します。

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過呼吸が心臓を強く締め付けて、日々、ドリルかのように打ち付けるイライラの音で耳を塞いでしまいたい。
彼氏彼女が欲しくたまらなくなって悶えるんだ。

こじれてへそまがり、しがらみばかりがしつこく身体にまとわりつく。
重ったるい黒い沼に浸かっていき、視界の色彩が淡くなって灰色の世界に染まっていく。

心の色が脱色されていく。


男の子はかっこつけて好きな女子のあらゆる妄想を膨らませ、

女の子は前髪を何度もくしで通して刺々しい態度になったりする。

周りの大人がうざったらしかったり、
なかなか自分に自信を持てなかったり。


たまにふとしたことで周りに当たって傷つけてしまったり。
自問自答ばかりで心の中はいつも「どうすりゃいいんだろう。」

ぐるぐる、ぐるぐる、堂々巡り。 


朝になると学校が待っていて憂鬱に歯磨きする。

鏡にはパサパサ縮んだ髪をした頭と、ダルダル瞼の顔が写り、

一気に溢れ出した鬱憤を排水口にドロドロ吐き出したくなる。


閉鎖された空間に身が置かれ、

ぎゅっと縮んだ塵に縮小され、

喉に息がつまりそうになりながら退屈なルールに縛られ、         下校のチャイムが鳴ると一散解放される。                

薄白い廊下、窓際から流れてくる生暖かい風とひだまり。
溜まりに溜まって解消しきれなくなった鬱憤。


授業なんて上の空でシャー芯をひたすらカチカチさせて、

お腹とおならの音が鳴らないように必死に我慢する。

長い長い暗闇のトンネルを這うように進み、
アンサーやゴールを見つけることに囚われ、自分を好きになれず空回る日々。

ひとりぼっちの部屋は空虚の膜で覆われて、
心がキリリときしんで締め付けられ、薄白い壁の穴からしゅわりと切り裂ける音。
慟哭の深海に堕ちていく。


くじけてぺしゃんこになったプリント。
いつかの使いかけで芯がまるくなった鉛筆。
壁のようにのしかかっている教科書とカビ臭い筆箱。
   

 風化していく空気と脱皮していく一瞬。

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※尚、無断転載などはご遠慮ください。


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