いちばん好きな人は永遠の憧れ〜恋人より特別な関係〜

「あなたの恋人は、あなたがいちばん好きな人ですか?」

この問いかけに対して「いちばん好きだから付き合ってるんでしょ」という答えが返ってくるかもしれません。
しかし私はいちばん好きな人と結ばれることを望んではいません。
いちばん好きな人というのは憧れの存在。憧れの人は永遠の憧れであるからこそ輝いて見えるのです。
結ばれずとも、想うだけで幸せになれるのです。

手に入れたものはいつか失ってしまう。
失うのが怖いなら、初めから手に入れなければいい。という考え方に至りました。

少し、私自身の思い出話をします。

いちばん好きな人との切なくて幸せな思い出

私の永遠の憧れは初めて付き合った人です。
中学時代の思春期真っ只中の幼い恋愛。
同じ学校で、部活の先輩後輩というありがちなパターン。
私が彼を好きな気持ちは周りにバレバレで、もちろん彼自身にも伝わっていたと思います。

それを彼は嫌がったり私を避けたりする様子もなかったので意を決して告白したところ、付き合うことになりました。

ただ、幸せな時間は長くは続きませんでした。
私は付き合って1ヶ月もしない頃、突然メールで別れを告げられたのです。

「もう別れよう。でも、すずめのことを嫌いになったわけじゃないからこれからも普通通りにしてほしい。」

わけがわからず、そのメールにすぐ返信することもできず、私たちは終わりました。

新学期が始まり、学校で再び彼と顔を合わすようになりました。
「普通通りにしてほしい」と言っていたのに目も合わせてくれない彼はあからさまに私を避けているようでした。
メールで言っていたことは私を傷つけまいとする彼の優しさで、本当は私のことを嫌いになったんだ。と思っていました。

春になると、ひとつ年上だった彼は卒業して会えなくなりました。
会えなくなれば自然と気持ちも消えていくものかとも思いましたが、彼を好きな気持ちは簡単には消えてくれず、思い出の中の彼にいつまでも恋していたのです。

会えない間に、彼が私に別れを切り出した理由を人づてに知りました。

それは確かに「私のことを嫌いになったわけではない」理由でしたが、人づてに聞いても彼の本心はわかりません。

同じ町に住んでいて、地元の高校に進学した彼に会う手段はいくらでもありました。
でも私は彼に会って真実を知るのが怖かったのかもしれません。

もう一度会いたいという気持ちと今度こそ完全に拒絶されるかもしれないというふたつの気持ちがぶつかり合っていました。

そして私は彼のいる地元の高校へは行かず、地元から遠く離れた高校へ行くことに決めました。

別れて2年が経とうとした頃、中学生の頃と同じ部活を続けていた私は試合会場で彼の名前を見つけてしまったのです。

もしかしたら会えるかもしれない。
でも会えたとしても声をかけていいものかわからない。
期待と不安が葛藤する中で結局その日は彼に会うことができませんでした。

しかしその夜、信じられない出来事が起こりました。

彼からメールが届いたのです。
そのメールには、試合会場で私を見つけたこと、声をかけようと思って探したらもう帰ってしまっていたことが書かれていました。
そして最後に「話したいことがあるんだけど明日の夜電話していい?」と。

夢でも見てるんじゃないかと本気で思いました。
しかしそれは現実で、翌日の夜に本当に電話がかかってきました。

2年ぶりに聞く彼の声。
別れて初めてする会話はどこかぎこちない。
でも彼の本心は真っ直ぐに私に伝わってきました。
「ずっと謝りたかったんだ」と言われ、悲しいのは自分だけだと思っていたのに自分が彼を傷つけていたことに気づきました。

そんな真面目な会話の後、ようやく緊張もほぐれてきてたくさん話をしました。
最近の出来事や趣味、好きなもの嫌いなもの…
付き合っていた頃には知らなかったお互いの共通点が見えてきたり、意外な一面を知ったり、気づけば夜中になるまで話していました。

その日以降は不思議なことに何度か地元の駅で彼に会いました。
彼の方から声をかけてくれて他愛もない話をしました。
それから再び何年か経ち、たまにLINEで連絡を取り合うこともありました。
彼から連絡が来るたびに「今でも好きです」と言ってしまいたくなるけど私は決してその気持ちを彼には伝えません。
なぜならこの関係を壊したくないからです。

恋人以上に特別な関係

あの夜の出来事を私はきっと一生忘れません。
このまま元サヤに戻ってしまえ!と少しは思いました。
でも私はこうして付き合っていた頃よりも幸せなひと時を過ごして、この関係が恋人以上に特別な関係に思えたのです。
恋人になればいつか別れがきてしまう。
またお互いに傷つけあってしまうかもしれない。それなら私は一生片想いでいい。
私にとって幸せなのは彼と恋人になることではなく、いつまでも彼を好きでいることなのです。
彼と別れてから新しい恋も何度もしました。
私はみんな本気で好きでした。
ただ、彼は特別な存在。憧れの存在は別枠なのです。

きっと誰しも忘れられない人がいることでしょう。
忘れる必要はないのです。その人はあなたにとって永遠の憧れ。
手に入らずとも綺麗な思い出としてそっと胸にしまっておきましょう。
好きな人と結ばれることだけが幸せな恋愛ではありません。
忘れられない相手の存在をただただ悲しい恋の思い出にしないでください。
いつまで経っても好きでいられる人がいることは幸せなことですよ。

恋人や夫婦よりも特別な関係だってあるのです。


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