爆発はゲージツだ!やさしい車メカ解説

吸入・圧縮とエネルギーを浪費して来た混合気はシリンダーの中でいよいよ爆発行程に差し掛かります。ここで・・・・・・爆発するためには何が必要か?

ディーゼル・エンジンだと燃料を加える前の空気だけを体積にして20倍近く圧縮してやります。すると断熱変化の法則で急激に温度が上がり、そこに軽油をピュッと噴射するだけで爆発が起こります。だからディーゼル車には高圧の燃焼室に噴射できる強力な燃料ポンプが必要です。ポンプの動力源はエンジンの回転ですから基本電気は使いません。(今では電子制御のお世話になっていますが)

ガソリン・エンジンを燃焼させるためにシリンダーの頂点についているのが点火プラグ。スパーク・プラグとも呼ばれ、昔は消耗品でした。性能に合わせて熱価があって、アイドリングを終えたら一度エンジンを止めてプラグを・・・・・・今、そんなことで手を汚す人はもういません。白金プラグの寿命はほぼ10万kmといわれます。(念のためディーゼルエンジンでもグロープラグという点火栓がありますが始動時の冷寒状態で使用します。)

点火プラグにはバッテリーからひいた電気を順番に通してやればいい、のですが直流12ボルトの電流を流すわけではありません。古いワーゲンなら6ボルト・バッテリーしかなく・・・。でも着火に必要な火花はもっと高い電圧が必要です。そこで必要になるのが点火コイルです。コイル(電磁石)とそこを流れる電流を断続することで生まれる瞬間的な高い電圧、一瞬の現象ですがスパークプラグに飛ばす高電圧の電気が作れます。トランジスタを使ってスイッチングを電子化したものも原理は同じ。これで高い電圧のバッテリーを積まずとも済むわけです。

高電圧の電気が生じるタイミングを上手く爆発のタイミングにシンクロさせてやればいい、とはすぐお気づきですね。その役割は俗にポイントと呼ばれるコンタクト・ポイントが担っています。4気筒なら360度回転するカムに山が4つ。ポイントアームがこの山を乗り越えるたびに断続が起こって高電圧が出来るわけです。

6気筒のハコスカGT-Rエンジンならカムの山は6つ、六角形です。火花を飛ばす順序は前から1.5.3.6.2.4番目のシリンダーでカム山を乗り越えるタイミングで火を飛ばしてやります。隣り合ったシリンダーに連続して爆発させないのは長いクランクシャフトになるべく、均等に力が加わるようにと考えられたからです。(タイヤ交換で対角線にあるナットを順に締め、緩ませるのと似ています)

さて、点火、爆発のタイミングですがシリンダーが吸入器を圧縮し終わった頂点(上死点)で点火すると、実は手遅れ。実際にはエンジンは毎秒でも何十回転という速さで回っているので、点火、着火、爆発、膨張というプロセスが上手くシリンダーの下降に遭うように、(点火時期に)前もって点火させます。アイドリングの遅い回転なら上死点の数度前(自転車のペダルなら真上より指一本分位手前)が点火時期。しかし回転をあげるともっと早いタイミングで点火しないと間に合いません。

クラシックカーのハンドルを見るとハンドル軸の中央に二本のレバーが並んでいるのが見えます。ウィンカーレバーでもワイパーでもありません。ひとつはアクセル、もうひとつがこの点火時期をコントロールするレバーでした。だから加速にはアクセルを開けると同時に、回転数に応じて点火時期のレバーも早めてやらないと上手く加速できなかった・・・・のが古いクルマの運転術でした。イマドキ好き好んで点火時期を弄らなくなったのは、自動で点火時期を早める仕組みが出来たためで、遠心力を使った進角装置というものが人間の操作をひとつ解放してくれました。

点火プラグから同心円状に広がる炎は凄まじい勢いで膨張し、シリンダーを下に向けて押し下げます。点火プラグが二箇所なら短い時間に燃焼させることが出来、高回転エンジンにはうってつけ。いっぽう、昭和50年代に厳しさを増した排気ガス対策のために燃焼時間を短くしようと登場した、日産のZエンジンもスパークプラグを二つワンセットで点火していました。アルファロメオの車名に付くツイン・スパークも同様のメカニズムを採っています。

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