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大切な人との出会い。僕たちの絆

まずなにより喜ぼう、ここにこうやって生まれて、こうして今生きている事。

人生は時にして、思いもよらないタイミングで物事が起きる。

ブースターのみんなに応援され闘う僕たち。

「新城選手って子供好きだよね」

子供好きになった理由はあるが、僕にとって子供とは、小さい赤ちゃんから高校生まで子供の様に感じます。

バスケットボールをしていく中で数々の素敵な出会いがある。

応援をして貰っていると、僕の方が彼らの愛を超えてしまう事さえある。


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片桐良太


彼との出会いは、長年過ごした琉球ゴールデンキングスから初めて移籍した2017年。長野県を拠点に活動している信州ブレイブウォリアーズに移籍したオフシーズンの事。

移籍後、初めてチームに合流し、地域の神社で行われた盆踊りのイベント活動だった。

当時チームメイトの先輩と一緒にイベント活動を行ってる神社に来てくれたのだ。

体格の良い当時15歳。その体格とは裏腹に優しさが先行する愛嬌の良い少年。

常に笑ってる姿は無邪気で、その笑顔から滲み出る優しさはまるで人から慕われるような性格が伝わる面持ちだった。

「おっ!りょーた!!元気?」

「片桐さん!こんにちわ!」

先輩とは親交が深いみたいで、隣で話しを聞いてるうちに先輩が僕の事を紹介してくれたのだ。
お互い自己紹介する中で話しは和み、終始笑顔の絶えない他愛のない会話はイベントと共に終わった。

イベント後、先輩と一緒に帰る帰り道の道中にてりょーたが難病指定をされる病気を患ってる事をうち明かされた。

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キャリアで初めて横断幕を作って頂く事に


片桐さん「シンジ!横断幕作っていい?」

僕「えっ!?いいんですか?」

思ってもない出来事だった。

先日のラジオ収録で将棋の話題となり僕が 「歩兵も時として大物を倒す」 と続いて 「歩兵が裏側に進化して"と"が"王将"倒すシナリオなんて最高じゃないですか」と語った。

そのラジオを聴いてくれた片桐さんは、横断幕のバスケットボールの部分に"と"と入れてくれ、それだけではなく、沖縄県出身である僕の事を考えバスケットボールの中には、沖縄の伝統衣装である"流装"をモチーフにした柄も入れてくれたのだ。

片桐さん「カッコいい断幕も考えたんだが、全てがカッコいいとなんだかなぁと思い、マンガの様なキャラクターみたいな感じにしました」

片桐ファミリーの愛の詰まった横断幕を背に、キャリア初の移籍のシーズンを戦い抜く事が出来た。

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再開


初の移籍を信州ブレイブウォリアーズで過ごし、後に1年のブランクを送ることとなった。

沖縄県の石垣島でブランクのシーズンを過ごす中、古巣である信州ブレイブウォリアーズは勝ち星を増やし続け、B2リーグの最高勝率をキープしたままプレーオフへと進んだ。

琉球ゴールデンキングスに所属していた頃からのチームメイトでもある、現在信州ブレイブウォリアーズの大黒柱アンソニー・マクヘンリーと僕との間で、信州ブレイブウォリアーズがプレーオフの決勝戦へ進出すると、僕が現地で試合を観戦すると僕と彼との間でお互いに約束をしていたのだ。

もちろん元チームメイトもブースターも僕が試合観戦しに来ることなど知る余地もなく、サプライズで長野県へ行く事に決めた。

長野県に向かう道のりはワクワクで早くみんなに会いたい気持ちでいっぱいだった。

試合会場に着くと、懐かしい雰囲気に、見慣れた景色、久しぶりの試合会場は僕の思い出が詰まったセカンドホームに変わっていた。

試合がハーフタイムになると遠方から片桐さんが僕の居るセクションの方へ足を運び、僕に声をかけてくれた。

りょーたとお母さんも遅れてやって来た。

りょーたの手には横断幕も。

僕が来る事は噂になって既に知ってた様子だった。
サプライズで行ったつもりが、逆にサプライズをされてしまったのだ。

「りょーた、こんな格好でごめんな。次はちゃんとユニフォーム着て帰ってくるから絶対待っててな!」

「それまでお互い切磋琢磨頑張ろう!」

信州ブレイブウォリアーズは相手を寄せ付ける事なく球団史上初のリーグチャンピオンの座を手にしたのだ。

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忘れ物

ブランクのシーズンを終えライジングゼファーフクオカの一員として再び長野県へ帰ることができた。

自分で約束したものの、現実になるか分からなかったが、りょーたとの約束を果たしユニフォーム姿で彼の前に訪れた事がなによりも嬉しかった。

いつもの遠征より今回の遠征は荷物が多い。

福岡県から長野県に遠征へ向かう前日の夜、りょーたにプレゼントするシューズを準備した。

試合が行われる前のウォーミングアップ時に彼の姿があった。
真っ先にりょーたの元へ。
信州ブレイブウォリアーズに在籍し、当時ホーム開幕戦に使用した僕のシューズを彼にプレゼントした。

彼の喜ぶ姿は無邪気に笑う子供の様だった。

そんな姿を見るだけでただただ嬉しかった。

試合はというと、前年の王者信州ブレイブウォリアーズに力が及ばず、連敗してしまった。

その日のりょーたは、信州ブースターではなくあの頃の様に僕の応援団だった。

果敢に攻めるもフリースローで得た得点だけで終わってしまった。
闘う姿、闘志だけでもと、いつも以上に力が入ってしまった。

それでもニコニコ笑うりょーたの笑顔に試合後また癒された。

僕「また会おうな」

り「はい!元気が出ました!」

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突然の連絡


パンデミックの影響でシーズンが終わると、外出する事が出来ずほとんどの日々をリハビリとお家で過ごしていた。

そんな中、僕のSNSにダイレクトメッセージがやってきた。

「シンジ!!りょーたが入院する事になったから元気つけて欲しくてりょーたに電話してくれないか?」

とりょーたの父、片桐さんからの連絡だった。

急な連絡に戸惑いながら

自分が凹んでる姿や、寂しい姿をみせてはいけないと気持ちを落ち着かせ、サプライズで連絡をする事に。

突然の知らない番号に驚きを隠せなかったりょーたは。。。

り「はい、もしもし?」

僕「もしもし!りょーた!誰だか分かる?」

り「えっ?だ、誰ですか?えっ?誰ですか」

僕「信州に居た新城真司だよ」

僕「覚えてる?」

り「えぇーーーーーーーー!!!!!!」

り「もちろん覚えてます!!!!!!」

小さな声でりょーたが入院先の病院で付き添いをしていたお母さんにこう伝えてるのが、電話越しで聞こえた。

り「お母さん、新城選手から電話きたよ!」

僕が彼に告げたのは、

"りょーた入院してるみたいね。
お父さんから聞いて連絡したんだ。
自分もちょうどキャリアで初めての怪我してしまって、復帰に向けてリハビリしてる過程なんだ。
お互いこの期間、切磋琢磨して支えながらまた元気な姿で会えるようにこの時期を乗り越えよう。"

と僕は彼に伝え、りょーたはうなずくばかりだった。
りょーたの喜びようは電話越しにでも伝わった。

りょーたと話した後に、「母に代わってくれ」と伝え、りょーたの母と話すと、そこには泣きながら話すりょーたのお母さんの姿があった。

母「新城選手、こういった状況の中本当にありがとうございます!」

母「私も含め、元気を貰えました!本当にありがとうございます!!」

と、りょーたの母が涙しながら僕に伝えてくれた。

電話を切るとほっと一息。
なぜかドキドキしてた僕は涙を流した。
りょーたの無事を聞いて、喜ぶ姿に安堵した。

こんな僕が、人に勇気や元気、活力を与える人だなんて思ってもいなかった。

それから僕達は連絡先を交換し、連絡を取り合う様になった。

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2020年5月25日。

りょーたは17歳の若さにして大好きな家族と、素敵な仲間達を残して先に天国へ旅立ってしまった。

自分の大切な人、大好きな人に素直に面と向き合ってください。

家族、友達、子供、恋人、誰でもいいのであなたの大切な人に日頃の感謝を伝えてください。

彼がこの投稿を望むか分からないけど、りょーた許して欲しい。
僕とりょーたが過ごした日々を大切にしたい僕のわがままでこの投稿をここに残したい。

これは大切な僕の祖母を亡くした時と似たような感情なんだ。

おばあちゃんっ子だった僕は、初めての移籍で地元沖縄を離れる際、おばあちゃんに会いにいかず「頑張ってくるね!」の一言も言わずに移籍した。

シーズン中におばあちゃんを亡くしてしまった僕は自分の行動に憎しみさえ覚えた。
後悔先に立たず。

僕は彼のSOSに気付く事が出来なかった。。。

後悔しても過去は戻ってこない。


彼には夢があった。

彼の夢はバスケットボール選手ではなく、その選手を引き立てるMCになる事が彼の夢だった。

僕が信州ブレイブウォリアーズに在籍してた頃、夢見る彼が僕たちの試合を1日MCとして勤めたのだ。

あの日、選手紹介でりょーたに呼ばれ登場した事を今でも忘れない。

車とバスケと仮面ライダーが大好きなメガネの高校生。

SNSのアイコンは僕とのツーショット。

寂しいよりょーた。
昨日は1日中、子供の様に泣いてしまった。

思い出すたび、振り返るたびに涙が止まらない。


"Stay Tough!"

横断幕に掲げられたこの文字は、今の僕に向けた片桐ファミリーのメッセージなのかもしれない。
落ち込んだ姿は、りょーたが見たい姿でわない。

この想いを胸に次のシーズンは力強く闘うと、りょーた含め片桐ファミリーに誓いたい。

stay tough.

彼と歩んだ大切な思い出と日々をここに残したいと思う。

僕たちの絆はこれから先もずっと


新城 真司 #40

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