鹿島アントラーズ2018総括と大岩監督のチーム作り

 CWCの開幕を今週末に控えていますが、現時点で今季の総括とさせていただきます。完全に個人の事情です。

導入

 チーム作りに言及するにあたってまずは最初に、なにをもって良い、そして悪いと判断しているのかをあらかじめ明確に示す必要があるだろう。

自分は、コーチングスタッフが選手達に与える様々な影響を 第三者から評価する場合には
・選手を迷わせないこと
・選手を縛りすぎないこと

この2点の共存がうまくなされているか、折り合いをつけられているか
という所を判断基準にすべきだと考えている。そしてこの2点の共存が、理想となる「自由の先にある再現性」を生む という考え方だ。

 これが前提に、そして評価の根底にあるとし鹿島アントラーズ2018の総括を進めていきたい。
(「ダメだこりゃ」と色んな意味で思った方は、申し訳ありませんがここでお別れです)

結果の要因原因と、見えてくるもの

まずは結果の整理から。
・J1リーグ:3位
・天皇杯:準決勝敗退
・ルヴァン:準決勝敗退
・ACL:優勝

クラブの悲願であったアジア制覇の達成。
そして10試合を残して実質的な優勝が消滅してしまったリーグ戦と、力の差を見せつけられた国内カップ戦。
これをどう捉えるかはアントラーズファンの中でも評価が割れる所であろう。それぞれの結果とその要因・原因を照らし合わせながら考えていく。

・ACL優勝

 何度も全力でぶつかり、そのたび跳ね返され涙を飲んできたアジアの壁。これを乗り越える事ができた最大の要因はやはりフロントの働きと言っていいだろう。考えうる最悪のケース として想定していただろうおおよその人数が、実際にシーズン中に負傷離脱したわけで。その中でこの目標を達成できたのだから改めてその価値を感じる。
具体的にいえば
アジアで勝つためのGK、クォンスンテ
アジアで勝つためのDF、チョンスンヒョン
アジアで勝つためのMF、レオシルバ
アジアで勝つためのFW、セルジーニョ(本当はペドロのはずだったが)
 国内タイトルだけを狙うのであれば余剰とまで言えるこの選手達を集める事ができたのが非常に大きかった。正直上記の4人のうち1人でも欠けていたら優勝はかなり難しいものになっていただろう。

 そしてこれに加え、フロント規模の話ではないがジーコをクラブに再び招聘したのは素晴らしい決断であった。リーグ3連覇を知る選手が曽ヶ端・内田・小笠原・(遠藤)のみとなり、鹿島の勝負強さの根源を伝えられる人材が減ってきたなかで、ジーコの帰還がもたらしたものの価値は計り知れない。
「彼のいない強い鹿島」を作り上げなければならない時がいつか来るのは避けられない現実だ。しかし今はそれがまだ難しいというのもまた目を背けられない事実である。ぜひとも来季もクラブに残ってその影響力を存分に発揮して欲しい。

 さらにリーグ戦の不調も、結果的にアジア制覇に一役買ったといえるだろう。4月の時点で勝ち点を20落とし8月の時点で優勝が非現実的になった事で、チーム全体がプライオリティをACLに、軸をすんなりとシフトする事ができたように感じる。具体的にいえば、ペルセポリス戦の決勝を直後に控えたJ1リーグC大阪戦と柏レイソル戦。たらればの話になってしまうが、あの時点でリーグ首位または首位と勝ち点差が3以内であった場合、あそこまでのターンオーバーをしていたとは思えないし、それを踏まえたあのコンディションでペルセポリス戦を同じように迎える事はできなかっただろう。選手達の精神的な部分でもプラスに働いた面はあるのではないだろうか。

 そして大岩監督の、選手達の自主性に任せるチーム作りも、度重なる難しい状況を乗り越えられた1つの要因となったのは間違いない。今の鹿島では「選手間で解決する力」が試され、育まれる。各選手が考え、他の選手とそれを擦り合わせていく過程で考え方を統一させていき、未経験の外的要因をもはねのけるブレない戦い方を染み込ませていく事ができた。顕著に出たのは準決勝2nd.Legのアウェイ水原三星戦。1-0リードで迎えた後半開始直後たったの8分間で3失点を喫し、その直後に円陣を組んだシーン。そこからしっかりと建て直し勝利したあのゲームにこそ大岩アントラーズ最大の強みが出ていたのではないだろうか。そしてどの国のどの相手にもブレないこの強みはCWCでも存分に発揮されることだろう。

・リーグ戦,国内カップ戦

 国内無冠。アジア制覇の栄光と共にこちらもしっかりと受け止めなければならない。

 個人的に最大の問題点は選手層ではまず無かったと考えている。自分が強烈に感じたのは、タイトルを争う国内ライバルクラブとの間に生まれてしまった取り組みや発想の部分での「遅れ」だ。

 今の鹿島は確かにブレてはいないが非常に不安定な構造をしており、やっとの思いでバランスを保っている状態だ。自らの体勢を整える事に尽力しているため、当然相手クラブを視野に入れる余裕は限りなく少ない。この不安定さを招いたのはチームの基礎となる土台構築をキッチリ形にする事ができなかったコーチングスタッフの能力不足であり、必死にバランスを取っているのは、代替不可能である選手達だ。
 具体的に選手名を挙げていこう。ボール保持時に打開策が無くなった際の慣習となりつつある、とりあえず右に預けるというもの。これの成立に西の技術がかなりのウェイトを占めているのは言うまでもない。彼不在時の最終ラインからの組み立てではタメを作れるポイントが無く、機械的にボールを回し最終的にリスク回避の蹴り込みが中心となる事が多い。
 そして中盤でのレオシルバの存在。特に攻撃時は彼がいなければ、まともな攻撃のスタート地点が存在しないまま試合を進めざるを得ない状況がしばしば起きる。レオのパフォーマンスがチームに良い影響を与えるというよりかは、そもそもの構造の欠損をレオが個人規模で解決させているだけ、という表現の方が正しいのではないだろうか。攻撃の最前列でも同じような問題が起きている。後ろからのボールの動かし方を1度相手にハメられてしまえば、残された手段は優磨あるいはセルジーニョが個人単位で優位を産み出すことを、文字通り「祈る」しかないのか実情だ。これでは代わりに投入される金森に物足りなさを感じざるを得ないのも当然である。本当にこれは金森個人だけの問題なのだろうか。

 レギュラー選手欠場によるサブ選手の出場でクオリティが落ちるのは必然ともいえる現象だ。それ自体に関しては鹿島が云々、という話ではない。しかし、そこの選手の入れ替わりが「劣化」ではなく「破綻」を招いてしまうのは大きな問題だ。レギュラー選手とサブ選手との間に互換性を築けず、過密日程のなかでも選手固定起用を強いられたのは今季の怪我人増加にも間違いなく影響していただろう。

 この状況を打開するには、組織としてのプレー原則の確立が必要となる。導入で説明した「選手を迷わせない・縛りすぎない」という基準を基に現状を確認していく。
 今の鹿島において選手達は、全く縛られない事に伴い最大限の自由と個の尊重が与えられている。しかしその反面、ピッチ上の選手達には大きな迷いが生じることとなる。その際に自分達を縛って(プレーの選択肢を限定して)くれる原則は現時点で存在していない。つまり、個の限界の「その先」が全く存在していない状態といえるだろう。自分が鹿島に遅れを感じている部分の多くを占めるのがここだ。


現代サッカーは、個をどれだけ効率よく活かすかというものから、選手の個という要素にどれだけ戦術・システムによる +α を積めるかという次元にシフトしている。

この発想の転換を、同監督の「成長」だけで補えるのか?

という議論が、そのまま大岩監督が続投すべきか否か?に直結している というのが自分の考え方だ。

ここで補足しておかなければならないのは、最新の戦術・システムを持ち込むことが正義ではないという事だ。確かに理想には近いかもしれないが、個とシステムの「融合」は容易に「衝突」にもなり得る。まさにACL制覇の要因にあげていた今の鹿島の強み が簡単に失われてしまう危険性もある。リスクも当然ながら考慮しなければならない。

まとめ

 鹿島アントラーズというクラブがこれまでJリーグの先頭を着実に歩んでこられたのは「勝者であり続けてきたから」だ。勝つことにより次の勝利を引き寄せ、その連鎖を生みタイトルを今年遂に20にまで積み重ねる事ができた。
しかし今、その牙城が揺らぐような状況がすぐ目の前に来ているのではないかという不安を自分は抱えている。

 先ほど述べたように、当然ながらリスクもある。ただジーコがいる今だからこそ、この今こそ、崩れかける可能性もある「変革」に挑めるタイミングなのではないだろうか。
 確かに大岩監督の成長を感じ取れる部分は段々と増えてきている。自分は選手起用や采配のような小手先ともいえる部分ではなく根幹の部分を問題視していたので、そもそもそこに強烈な不満を抱えていたわけではないが、監督しての腕を上げているのは確かだろう。試合中の振る舞いを見ていても具体的な選手への指示もわかりやすく増えてきている。
 しかしその成長スピードで来季のJ1を獲ることはできるのだろうか。「停滞は後退と一緒」、この言葉が大岩監督の口から出たという事に深い意味を感じる。

 自分は来季の鹿島アントラーズを追っていくことはできない。このクラブがなにを信じ、どの方向へ進もうとも共に着いていき応援していくことができないのは非常に残念だが、良い報告が聞けるのを楽しみに待ちたい。

最後に

  具体的な所をつついて広げ始めると収拾がつかなくなりそうな気がしたので、かなり抽象的な表現が続いてしまいました。だいぶ読みづらくなった気がします…。まとめにも書きましたが、来季はアントラーズを追えません。その後にこのアカウントに戻ってくるかも正直微妙です。

鹿島が強いままでいてくれれば戻ってくるかもしれません。

最後に。
ここまで(最後まで)読んでくださった方は、この後自分が「あ」とツイートしますので、RTやらいいねやらで反応していただけると嬉しいです。
この方に全部読んでもらえた!という目印になりますので笑

 今年4月から始めたTwitterでしたが、すごく楽しかったです。絡んでいただいた方は特に、ありがとうございました。