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喪服

誰かが終わりを迎えた時に出番が来る。誰か、といっても身内や親しくしてもらっていた誰か。お互いの人生が交わったことのある誰か。誰かとしか表現できないその誰かより自分の人生が先に終結する可能性だって十分にあるのにね。それでも誰かを見送る側だと思いながら日々生きているの。でもね、ほんとうはね、誰かじゃなくて特定の存在をおもいながら選んだ。ワンサイズあげとく?隣から一緒に選んでいた母の声が聞こえたけれど、太る予定ないから大丈夫と。だってその人は会うたびにべっぴんさんねえ、きれいねえ、ハイカラだねえ、といつも褒めてくれるから。これはささやかな私の決意だった。細いことが絶対的な価値であり、美である。そんなことはないけれど、私なりに見せたい姿がある。

ほんとうは綺麗なネイルも褒めてほしい。お化粧も上手になったでしょう。髪の毛も染めたよ。わたしね、もうはたちになったんだよ。もう平気になったよ。いつかまたお話ししようね。わたしのだいすきなひとのはなし、きいてね。

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