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若さが財産だなんて、ミニスカートが可愛いだなんて信じてやるもんか。

少し前に
とある短編を読んだ。

医療技術が高度に発達していて
いつでも外見を
ピチピチに若返らせる事が出来る世界。
40代でも、20代や高校生位になれるのだ。
大変素晴らしい様に聞こえるが
その世界では
女性は若くて当たり前。
会社の上司の奥さんは
見た目が14歳だったり、
街行く女性たちは
全員大学生や高校生ばっか。
良い男を捕まえる為には若さが必須アイテムなのだ。
しわしわの60代の顔だなんて、
映画やドラマでしか見ることもなく
老いは汚ならしいとされる社会。

若さって何なんだろう。

よく
「若さは財産」
「まだ若いんだから」等という台詞を聞く。

じゃあ、
その若さが無くなったら
どうなってしまうのだろう。
確かに大事なものかもしれないが、
それは今だけの限りある期間であり
いつかは失われる。
あたしもやがて
胸はしぼんで、目尻に皺が目立ち
腰が曲がっていく。
あたしは
その時何を持っているんだろう。
だから、若さ以外の財産を見つけられるよう
今のうちに皆頑張っている筈なんだが、
それでも
「まだ若いんだから」
という言葉で色々誤魔化されるのが怖い。
「まだ若いんだから」と
肩をぽんぽん叩かれ、
結局どうすればいいのか何も分からなくて、
気がついたら
「もう若くない」という今を突き付けられる。
白く濁った瞳のあたしには、
もう何も出来る事なんかありやしないんだ。
肌から水分が抜けきるのと同時に、
心もカサカサと乾ききっていく。
そんな軽い言葉で簡単にまとめるけど、
渇いて、餓えた先のことは
どうもしてくれないじゃないか。

あたしは「若さ」を捨てたら
ただのごみくずだ。

「若いっていいねぇ」
「まーだ若いんだからさぁ」

それらの言葉が耳を撫でる度、
絶対的にそれは保証されているのだけど、
他には何者にもなれない
浅ましい自分を
腹の底から感じて苦しかった。
昨日穿いたスカートの端が
ぺろんと三角に折れているみたいに、
息が詰まった。

けれど、若くなくなったらなったで
不安だった。
周りを見渡せば
疲れきった大人が自由に縛られている。
自分で自分の事を
何もかも決めなくちゃいけなくて、
でも決めきれる程心が自立出来ていなくて、泣きながら薬を飲んでいる。
体は老いて
社会もそれに伴った成長を求めてくるけど、
心はいつまでたっても
未成熟。
そんなアンビバレンツにやられまくってる
奴等が大人だ。

いつまでも10代のままでいたかった。
成長した方が辛さは倍以上だろう。

あたしはSNSのアカウントには、
ほぼ必ず実年齢を記す。
何故なら、その方がチヤホヤされるからだ。
「若いのに頭いい!」
「年齢のわりには文章力あるね!」
「年齢のわりには感性豊かだね!」
年齢のわりには…年齢のわりには…
そんな一言にちょい痒がりながらも、
でも今はこれしか無いから
何とか年齢にすがってきた。
しかしそろそろ、それも苛立たしい。
若さが実力を支えてきたのに、
年齢が実力を追い越してしまっては
もうどうにもならない。
だからnoteでは
あえて年齢をプロフィールへのせないことにした。

あの短編の中で
若返りに固執する奴等に叫んでやりたい。
「若さだけが財産だったら、
お前らとっくに死んでんだよバーカ」

金持ちロリコンに
新鮮な肌と上を向いた乳房をアピール
しまくって、
ハイスペックな結婚や付き合いをするよりも

周囲の「汚ならしい」という
冷めた視線を物ともせず、
黄ばんだ眼で
好きな本を読み、
段々にたるんだ顎をひいて
好きな紅茶をすする。
そうして、時おり素敵な文章に
ニッコリ目尻を下げて
思いっきり喜びのしわを刻んだ方が
遥かに賢く、美しく、幸福な生き方だ。

だからあたしは
「まだ若いんだから」なんて
言葉に惑わされたくない、
今若い時の苦しみを真正面から見つめたい。
いくら「若さは財産」であろうとも、
そんな有限の一時なんて
すぐ指の隙間から溢れ落ちてしまう。
あたしはきっと同年代の子より体も精神も早く老けるだろう。だったらのんびりして、無駄遣いなんてできない。どうせいつか
「やっぱ若いっていいなあ」と感じるだろうし、今もそう思っちゃいるんだけど
それでも
「若さなんて今だけだ」と思って、
まだ16歳、もう16歳と
冷や汗掻きながら
今日も生き延びていく。


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