タイトル未定 二拾二

ボヤけた視界の端ににタダが倒れていた。痛む腹を片手で押さえつつ、腰のホルスターから拳銃を抜き取り構える。片手で。

こんな状態まで追い込まれるとは、管理職になってから腕が鈍ってしまったか…と物思いに耽りながらこもり声の右足の関節(ここも腕と同様のつくりのようだ)に狙いを合わせて発砲。

バババンという音と共に全弾命中。

発砲音に違和を感じ銃を見ると「タダちゃん特別仕様!さんてんバースト!」とステッカー。「この状況で…」ツキが無くなったな、と銃を投げ捨てこもり声を見据える。

関節から体液を流し、片膝をついている。呼吸も荒い。行動力を下げられはした、みたいだな。

「どうした、黙り(だんまり)か。」

強がってみせる。

「俺はまだ死んでいない。それに比べお前はなんだ。部下とその童(わっぱ)も守れず。残念だったな。英雄面もできねぇって訳だ。」

こもり声がヨロヨロと立ち上がり向かってくる。効いてるとはいえ、やはりモノがモノか…

「英雄ね…。私は英雄なんかじゃないさ。」

腹に上着を巻き付け私も立ち上がる。少しでも出血量を減らさないと。

「私はただ上にこき使われてるだけだよ。上からきた任務を死なせないように部下達に任せてるだけだ。」

「仮に私がその英雄だとするならば、それは他ならぬ私の部下達の功績があってこそだ…!」

チラとタダを見る。

「…どうやらここでオマエは死ぬらしいな。」こもり声は歩きながら左手で首を掻き切る仕草をして見せる。そして、両者の間に鋭い殺気が生まれ、例えようのない空気が場を包む。

一触即発。

全力で…殺る(狩る)。

タテナシさんの目がまた紅く光り始めるーーー。

#小説

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?