タイトル未定 五

「オマエの名前は?」

「オ、オレ…?」

「オマエ以外に誰がいる」

少しは俺の心中を察してくれよ。

「まぁ、いい。お前には一度死んでもらったんだ。肉体的にも、様々な書類上からもな。」

んぐ!バランス栄養食が詰まり、むせる。タテナシさんマジですか?それ。

いやいや。

「組織を構成するうえで、こうするしかないのだ。データがない人間は私が扱うに丁度いい人間だ。ちなみに、今運転しているこいつも一度死んでもらってるヤツの一人だ。」

頭が追いつかない。物理の授業でもされているみたいに。言葉だけが先行し意味が反復されない。

「ちーす」と左手をあげる運転手。もう慣れたっていうか全て受け入れている感じがある。

「タテナシさん…何も実際に殺すことはないじゃないか…?」ようやく紡げた言葉は「ど」がつくほどのストレートな意見。

「死亡届を提出しとかないと、後々厄介なんだ。それに警察の捜査も通しておいたほうがオマエが完全に死亡したという保険もつく事だしな。」

…なぜ?そこまでして?自分が死んだという事実よりも、芸能人でもVIPでもない俺にどうしてそこまでの事をして、こうなっているんだ。

いやいや、芸能人でも一度死ぬやつはいねーよ。

#小説


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