タイトル未定 五拾三

イツムネさんとはその後、食べ物をツマみつつ談笑という状態に流れていき、現在進行形。お皿が空くと自分の箸を使って手近な食べ物を取ってくれる。そんな彼女に笑顔で感謝の意思を伝えつつ。

突如イツムネさんは、こんなものを出してきた。

「君はこれを知っているか?」

白いパリッとした紙には赤い墨?で殴り書きがされている。そしてもう1つは人型をした紙のようだが…これは果たして?ローストビーフを食べながら目が点になる。

ゴクン。「いえ、知りませんが…。」

(依代(よりしろ)じゃたわけ。尤も、これは簡素なやつよのう。雑魚くらいしか呼べぬじゃろ。)

「私の出身は京にある神社なんだ。そこで巫女をする傍ら依代を用いて神を降ろし、邪を退けてきた。ここのやつらとは別行動をしていたのだが、チームという形でここの所属になった。」

ンク、とコーラをひとあおり。

「もちろん、邪を退けるだけが私の役目ではない。必要とあらば普通の警察官の仕事だってするさ。依代は使ってはいけないのだがな。」

「依代は何で出来ているんですか??」

「注連縄(しめなわ)から垂れている紙を見たことはあるかい?あれと同じモノだよ。分からない人にはただの紙切れだ。」

ビリッと破かれた依代は、床に落ちる前に霧散してしまう。「なに、まだ依代はあるさ」とトランプのように依代を広げ見せてくる。

「「かかっ。神降ろし、とはのう。依代の作り込みが甘いわ。精を込めんか。」」

「ちょっ!」

「狐の喋り方…!」

口から少し炎が吹き出る。俺の声にハモる形で喋るお狐様。神降ろしをしているというイツムネさんは少し驚いたが、心当たりはあるらしくあのクールな喋り方に戻る。

「驚いたな。君に宿っているのは紛れもない千狐だ。依代も使わずにこんな神を降ろすなんて…!」

「みたい、ですね。依代はこの御神刀らしいです。」

イツムネさんがお酌してくれたコーラを口に運びながら御神刀を手渡す。マジマジと外見を見たあと鞘から刃を少し出して眺める。

「…すごく霊的なモノを感じるよ。依代とはまた違った古風で強力なモノだ…。」

そこから更に刃を出そうとするイツムネさんだったが、柄に炎が灯り驚き、床に御神刀を落としてしまった。当然誰の仕業かというと。

(童女ごときに見せるものではなかろう。童も童じゃ。神物は見せびらかすものじゃないわい。)

と同時に床に散らばった、イツムネさんの依代がガサガサと御神刀のエネルギーに呼応するかのように微細な反応を見せていた。

#小説

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