タイトル未定 二拾三

「おい、オマエ。」

うるさい。誰だ。

「おい、起きろ。聞こえておるじゃろ。」

瞼がゆーっくり開くも、力が入らない。頭を鷲掴みされたような痛みと腹の痛み。とても立ち上がれず瞼が自然と閉じてしまう。

そして俺を起こす謎の声。初めて聴く声なのに、親近感が湧く声。後5分くらい寝てしまおうか……。

「妾(わらわ)を数百余年ぶりに現の世に呼ぶ意思を感じたから出てみたら、こんな死に損ないの童だったとはな。滑稽よ。」

死に損ない?滑稽……?

「何じゃ?あの面妖なやつは。妾が眠っておる間に復活したのかの?物の怪とはいつの世にもいるのじゃな……。」

モノノ…ケ…。物の怪…。

…!

「そ、そうか…俺は…。」かすれ声を出しつつ、記憶を整理する。頭回すのも嫌だけど…なんか刀を抜いたら飛んできたナイフに、タテナシさんの盾虚しく刺さって倒れたんだっけ…。

「おう、やっと起きたか童。」タテナシさんでもタダ(おい)でもない声。

「誰だ…。」

触れてもない刀が勝手に動き、俺の目の前に来る。

刃の切っ先に青白い炎が灯る。やがてそれは……

「誰とは?はて。妾は妾じゃ。」

いくつかの不完全な形になりつつも炎は「狐」の形となり俺の前で燃え始めるのであった。

#小説

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