タイトル未定 四拾九

残りはまだ30個近くある。バンバン開けてくぞ…!
と、いうわけで6個目(106)です。

お馴染みの、金属音を出しながら扉が開く。すると、中には長方形の木箱が斜めになって入っている。無機質な金属のロッカーの中に暖か味のある木箱という組み合わせに何故かぐっと引き寄せられ、その木箱を正面にして起こしてみる。重さはそこまで重くはない。上と下に分かれていて上が蓋になっているらしい。起こしてからココじゃ開けられないと気が付き、木箱をソファーの上に優しく置く。

木箱の蓋には、墨…だろうか。よく歴史番組で見る文献のような、ひょろひょろとした文字と難しい漢字の判が押されている。手の甲で箱をノックすると中に何か入っているらしい。鈍い音が返ってくる。

何か凄いモノなのだろうか。それならばこんな所に無造作に投げているのは可笑しい。貴重なモノならもっと管理するだろうし、こんな所に「とりあえず」入れとくのはやはり政府管轄の組織として違うのではないか。

いや。とりあえず開けてみるか。怒られたらありのままを話せばいいし。タテナシさんに罪(大げさ)を着せたっていいだろう。ごめんね、タテナシさん。

軽く腕まくりという謎のルーティンをしてから蓋の両サイドを掴み軽く左右に揺すりながら上に持ち上げていくと、蓋はすんなりと取れた。貴重なモノだったら怖い。蓋を優しく置き、中のモノを見にかかる。

トレス用紙のようなガシャガシャ音がする紙に包まれているらしくこれも丁寧に開く。いよいよ、中のモノとご対面。

…ん?。1拍間を置いてしまう。

「これが、制服…なのか…?」

まったく検討がつかない。大抵、制服といえばそれこそスーツだったり、少し迷彩の入った服だったり、警備員のような制服を想像していただけに、この木箱の中のモノと対面した瞬間というか、予想とあまりにも違っていた。これが1拍間ができたワケで。

オーパーツって、確かそこの時代や場所にあるべきじゃないモノの総称だった気がする(ex、クリスタルスカル)。そりゃ厳密に言えば違うってのは分かりきっているけどこれは…。

「き、き…着物??」

いらない事を色々と考えながら、着物の両肩を持って広げてみる。うん。着物だな…見事なまでに。黒1色だがほつれもなく縫製も良く出来ている。舐め回すように見て箱に目をやると、まだ何か入っているらしく紙に包まれた何かがあった。

…着物ってことはこの木箱は桐箱…かな??

例に倣って紙を開くと、灰色の何かが。広げて見ると…?袴だ。帯も入っていて、まるで成人式の着物セットじゃあないか…と変な例えが過ぎり吹きそうになる。

「これ着ろってことなのか…?着付けなんて…成人式はスーツだったし無理だよな…。」

どこぞの着付け教室に通ってたワケでもない。うん。これは素直にあの方を呼ぼう。俺よりもかなり詳しいハズだ、というか絶対詳しい。

(おきつねさまーー。)

呼んでみるとすぐにお狐様から返事が。既読が付くのが早い。

(何じゃ童。呼んだだけ、は無しじゃぞ…?)

(そんなワケないですって。かくかくしかじか。)とスズナさんと別れた後の事の顛末をかいつまんで話す。

(ほう…。なかなかに年を経た衣じゃのう…。無理もないわ。現の世の人間は皆着ておらんからのう。妾直々に教えてやろう。お礼はもちろん、いなり寿司で頼むのう。)

…いなり寿司好きなのか。着て良いのか分からないけど、教えてくれるってのならムゲに出来ないよなぁ。もちろん、いなり寿司は買わない。

(とりあえずそのボロを早く脱ぐのじゃ。恥じらうことはない。男子の体など飽きるほど見てきたからのう。ほれ、早く脱がぬか、早う。)

意外にも煽って来たので多少気持ちがムズムズしながらも上着→Yシャツ→スラックスの順で脱いでいき、とうとうパンツ一枚のアブノーマルな姿になる。終始誰も来るなよという感情に苛まれたのは言うまでもない。

お狐様に時々怒られ苦戦しながらも、何とか着付けに成功。そのまま袴を履くと尻尾の行き場が無くなるため協議の結果、尻尾が通るところだけ現地加工。御神刀も袴の間に挿して、さながら侍のような出で立ちに。なっているはず。

(ふむ。丈も丁度良いのう。身が引き締まるのう。)

と、お狐様も上機嫌な様子。首周りがスースーするけどこれは慣れなんだろうな。後、足。ビジネスシューズじゃなきゃな…。

とりあえず着替えた事だし、タテナシさんに言われていた場所まで行くか…。桐箱を元に戻し106のロッカーに戻す。

(何じゃ、この部屋。棺桶だらけじゃのう…?)

それはホントにそう思ってるの?ジョークなの?

聞こえてない体を装い、ロッカー室を後にした。

#小説



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