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YoY50%以上!指数関数的に成長を重ねるラクスルの提供価値とは

前回のDAZNのマーケティングトレース記事に続いて、マーケティングトレース第二弾です。今回は直近CMOの田部さんをはじめ、Twitterで見かける機会が増えたラクスル株式会社さんのラクスルというサービスに着目してトレースしてみたいと思います。

前回からのアップデートのお知らせ
・決算書からの考察も追加。
・その他として気になった取り組みも抜粋

※あくまで勉強中のため、誤っている点・ズレている点等あるかもしれませんが、その場合は指摘していただけますと幸いです。

ラクスル株式会社の概要

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・2009年創業
・「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」というビジョンを軸に「ラクスル」「ハコベル」といった印刷・物流・広告のシェアリングプラットフォームを運営。
・26億→50億→76億→111億→171億(2019 4Q)と年々右肩上がりに成長している企業。

決算資料を見てみる

今回はこちらの資料を参考にしました。(2019年7月期 決算説明会資料)

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通期売上高はYoYで+53.6%、売上総利益は+42.8%。この成長率は凄まじい…。この中でラクスルは約9割の割合を占めます(印刷+広告)。
続いて売上の内訳を見てみます。ラクスルの売上を因数分解した指標は下記の図の通り(他の決算資料と違ってここまで記載してくれるので、とても理解しやすい)

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さて、実際ラクスルのどのKPIが売上成長を牽引したのでしょうか。

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上記資料を見ると、ユーザー数が+25.2%増えているのがまず目につきます。ユーザー数だけでなく、年間平均注文回数+5.8%、平均注文単価+10.7%とどのKPIも増えており、その掛け合わせで大きな事業成長を生み出していると考えられます。

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特にユーザー数は間も無く100万人に到達しそうな勢いで、法人・個人ともに伸びています。これはおそらく

・積極的なTVCMへの広告宣伝費の投下(サービス認知増)
・TVCM制作のみならず、CMの広告枠販売のオンライン化など

といった点でユーザー数が増えたのではないかと考えています。
特に素晴らしいなと思ったのは、大きくユーザー数を増やす一方で、カスタマーサポートの強化などチャーンレートも下げられているであろう点です(業界初のHDI3つ星を受賞というトピックを参照したので、実態は不明)。
イメージはバケツの穴をふさぎながら、さらにバケツの大きさを広げているようなものでしょうか。このフェーズだと投資すればするほど収益が上がっていくので、理想的な状態と言えるでしょう。

結局ラクスルは他のネット印刷サービスと何が違うのか

結論からいうと提供価値の違い、これに尽きると思います。
まずは競合の情報から見ていきます。

最大のシェアを誇るのは、京都を本拠とする「プリントパック」だ。登録ユーザー数は100万人を突破、売上高は276億円(2017年4月期)で、ラクスルの3倍以上に達する。同社は、電話サポートなどの初歩的なサービスを削減してコストを最大限に抑え、既存の印刷会社の(繁忙時や小ロットでコストに合わない時の下請け)需要に応える戦略を展開している。

プリントパックとラクスルの戦い方・提供価値の違い

プリントパック
・自社工場を持っているため、注文→発注→印刷(製造)→納品といったビジネスプロセス全体を一気通貫で実行可能。
・生産量を上げるために、自社工場拠点の拡大や印刷機の増加
・生産量が増えれば増えるほど、規模の経済が働いて収益性が上がってくる。→設備投資など生産性や品質向上への投資。

■提供価値
対ユーザー(注文者):

・小ロットから受注できるため、広くユーザーのニーズに応えられること
・業界一の低価格

ラクスル
・ビジネスプロセスにおける印刷(製造)の機能をアウトソーシングし、受発注と納品の機能のみ担っている。
・生産量を上げるために、印刷会社のパートナー拡大や同業他社の業務資本提携を推進(※)
・競合と生産量で戦うのではなく、上記の「仕組み」を持って似た業界構造を持った市場へ水平展開。(今は物流の「ハコベル」というサービスへ展開)

※ラクスルも印刷設備を持っているが、生産量を上げる目的というよりかは、印刷会社の生産性を上げるための業務プロセス改善案を模索する目的だと予想。

■提供価値
対市場:
・マーケットの需要拡大(マーケによる認知拡大、新規顧客増)
対クライアント(印刷会社):
・需要拡大に伴う稼働率の向上、またその安定性→印刷会社の生産性向上
対ユーザー(注文者):
・小ロットから受注できるため、広くユーザーのニーズに応えられること。
・新聞・ポスティング・DM・テレビCMと依頼できる幅が広い&業界トップクラスの低価格で注文できること。

ビジョンに「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」とある通り、そもそもの提供価値の違いが構造の違いを示しており、本質的にはプリントパックも競合ではないと考えてよいのではないでしょうか。

もし自分がCMOだったら

・ラクスルの新規顧客獲得への更なる投資(特にCM領域)
TVCM広告枠販売のオンライン化(量の担保)と株式会社GOとのアライアンス(質の担保)で土台を作っている印象があるので「チラシ印刷約1.1円〜」のような価格軸での認知拡大を図っていくことで、さらに利益率は向上していくのではないでしょうか。
今までのTVCMのイメージとしてあったであろう「効果検証できない」「高価格」「実施までに期間を要する」を全てぶっ壊す取り組みになるので、注目しています。(ラクスルの方々がTwitterはじめたのも認知拡大の一手なんじゃないかとひそかに予想しています)
・さらに平均注文単価を上げるため、web動画領域への進出
1日に動画を目にしない日はないくらいインターネットにおける動画のウェイトは高くなっています。企業のブランディングムービーなどは小さな会社であればあるほど採用が大事だったりするのに価格的に出せなかったり、身近なところでウェディングムービーも10~20万くらいとユーザー的には高い(が、自分たちでできないから依頼)。
制作会社(あるいは個人)も自分たちで集客も行っていかないといけない状況なので、製販分離の仕組みを横展開しやすい領域なんじゃないかと思っています。

その他気になったポイント

・ラクスルの組織戦略
特にBizDev人材の育成はどのように推進されているのか実際にお話を聞いてみたい・・。

リーダーシップさえ持っていれば、年齢に関係なく活躍できる。社内に10名ほどいるBizDevメンバーの平均年齢も20代ですし、実際に新卒3年目で数千億円規模のマーケットを一人で担当しているメンバーもいますしね。
各ユニットのBizDevには大きな裁量権が付与される。とはいえ、中長期スパンで大きなインパクトの出せる施策を打っていくため、戦略のディスカッションは徹底的に行う。顧客体験やバリューチェーンを大きく変更し、非連続的な成長を実現するための戦略を議論する際は、松本氏が自らディスカッションのパートナーを務めることも珍しくない。
まず、高い解像度で顧客やサプライヤーを理解できること。とにかく現場に足を運び、「彼らはなぜそうしたのか」を理解する。すなわち「n=1を徹底的に深掘りできる能力」が必要です。
とはいえ、ただ現場に足を運ぶだけでは不十分で、そこで得たインサイトを活かして標準化や効率化を進めていく必要がある。力技ではなく、仕組みで解決するマインドセットを持っているべきです。
もちろん、組織を率いていくことになるので、チームで動けることも必要。リーダーシップを持った上で、フットワーク軽く現場で得たインサイトを仕組みに落とし込み、チームで回していく──こうした要素を兼ね備えた「事業家人材」を我々は求めています。与えられるのは成長率目標だけで、「何をやるべきか」は自分でオーナーシップを持って判断しなければいけない環境なんです。

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調べれば調べるほど、魅力的な会社だと感じました(気づけば3,500文字超え・・)。特に「再現性」へのこだわりは自分ももっと見習わなければと痛感しました。
マーケティングが強い会社の一つとして、これからも動向を追っていきたいと思います。最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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