Nobuyoshi Asai

名古屋を拠点にしながら、国外のダンスプロジェクト中心に活動する舞踏家。これまでに35カ…

Nobuyoshi Asai

名古屋を拠点にしながら、国外のダンスプロジェクト中心に活動する舞踏家。これまでに35カ国150都市以上の場所で踊る中で、異文化から感じること、そして日々のメモ

最近の記事

ツアー中のVESSELが何をもたらしているか

パリのカフェにて 自分にとって現在参加しているダミアン・ジャレ+名和晃平作品「VESSEL」とはどんな存在なんだろうか。ダンサーとして山海塾の作品に匹敵するほど肉体的な酷使があり、なおかつ、アベレージの質を維持するために毎日のルーティンワークを必要とされる作品でもある。 私にとってエモーショナルに動くことをこの作品では不必要なのではないかと感じている、なぜなら、演出家が望むシンメトリーな構造美そして、完璧にディテールまで計算された振付が存在している。もちろん、エモーショナル

    • 感動の共有について

      サンマロからパリへの車中にて 先日、哲学者アーレント文献を読んでいた。 彼の唱える「世界」は、それを共有する他者との「間」に存在する。その「間」から生 まれる「関心」は自立した個人の「関心」ではなく、人々を適度な距離でつなぐ(切り結ぶ)「inter-est」について考えていた。 そんな中、感動とは他者との共有の間にのみ存在するのだろうかと考えていたところである。しかし、果たしてそうなのだろうか? サンマロから急遽、パリに戻っている車窓から見る景色はフランス特有の色鮮や

      • 光が持つ「あわい」に何が潜むのか

        サンマロの教会で出会った陰影の美しさ、そして黄色の寒色と暖色の中間のような空間全体を染め上げるステンドグラス。 決して写真では記録できない、そして写真で加工しても、そこに存在した祈りという生きた時間を宿らせることができない。これはあくまでも、舞台芸術に身を置く人間が感じる感性という物差しでの判断であることは付け加えておきたい。 僕ら舞台芸術に関わる人間はそれらのいくつもの人生の中で得た感動や記憶などを重ね合わせて新しいまだ見えぬ世界を求めて創作を行う。それがいつしか作品とな

        • レンヌ公演が終わり、Saint-Maloへ。

          レンヌからサンマロへの移動の車中にて 数年ぶりに長期滞在したレンヌ公演も終了。 感動や美意識を根底から覆すような人や物、そして風景に飢えていたのだと思う。 日本での忙しい創作環境や経営の中、インプットが枯渇してもアウトプットをし続けなければいけない環境に限界を感じている中で今回のツアーに出発できたのはいいタイミングだった。 そんな中、この時間を実りあるものにしたいという焦りから、どこにいても飢えた動物のように美しいものや感動を探しながら毎日を送ってきた。 しかし、ツアー

        ツアー中のVESSELが何をもたらしているか

          数歩先へ行くために(4)

          レンヌ、フランスのホテルにて これまで自身の創作のテーマとしてきた「”あわい〜根源的場所性」について再度、考えを巡らせている。 なぜ、芸術家とは「何か」と「何か」の間というものの、真意を紐解きたいという衝動に駆り立てるのだろうか。 私の創作において、最も大きな影響を与えたのは2005年から2011年にかけて参加していた山海塾である。主宰の天児さんは今回の新作で初めて、自分が出演をせず、演出のみに徹する作品を創作している。その作品「Arc 薄明・薄暮」では、「昼と夜の間の時

          数歩先へ行くために(4)

          数歩先へ行くために(3)

          レンヌ、フランスのホテルにて ブリュッセルとロンドン公演の合間に2年ぶりにパリに立ち寄る。 やはり居心地がいい。勝手が判るからというわけではなく、単純にこの街は自分にとって居心地がいいのだ。特に大きな変化も感じさせないこの街は変わらず、少し不便である。しかし、不便さの中に人を感じることができるのも確かである。日本にいれば、不便さをとことん便利にするためのシステムを追求していく、それは時折、人間不在の場のように感じずにはいられない。 今回、パリでゆっくりと考えておきたいこと

          数歩先へ行くために(3)

          数歩先へ行くために(2)

          レンヌ、フランスのホテルにて 2週間分の考えを一度、書き出して整理をしたいと思うので分けて書いている。 「VESSEL」のツアーもブリュッセル、ロンドンと約1ヶ月間が過ぎ、折り返し地点となっている。3日間のオフを利用して、ホテルでいろんな気持ちの整理を行っている。 ブリュッセルにて、自分に問いかけていたのは「日本にいるのか、それとも海外に戻るのか」ということだった。パリから日本に帰国して3年が経つ、「月灯りの移動劇場」を2016年に名古屋で立ち上げ、3年間試行錯誤を行って

          数歩先へ行くために(2)

          数歩先へ行くために

          レンヌ、フランスのホテルにて これからの3年間、自分が何を考え、創作に没頭したのかを記録しておきたい衝動に駆られたため、メモとして書き記しておきたい。 昨年から身体の感覚に大きな変化を感じるようになってきた。ソロの作品を踊るとき、異常なほどに感覚が研ぎ澄まされ、今まで感じたことのない埃などが触覚に触れる感覚、時間がやけにゆっくりと感じることが増えてきた。もちろん、これまでにも舞踏という世界で鍛錬を重ねてきた身としては、似た感覚を舞台で味わったことはあるが、それとは似て非な

          数歩先へ行くために