これからの世界をつくる仲間

「これからの世界をつくる仲間たちへ」落合陽一さん を読んで


この本を読んだのは、今からちょうど一年前。
自分自身が、今の流れを大きく変えようと考えている時期でした。
何かを変えなくてはならない。このままではいけない――そう漠然と考えていたものの、その糸口が見つかっていませんでした。

そんな時に出会ったのがこの本。
以前からテレビや動画で気になっていた落合陽一さんの本を初めて手に取りました。

そして今回、ふと思い立って、この本の一年前に付箋をした部分を振り返ってみました。

人口知能が人間を超える瞬間のことを、未来学者レイ・カールツワイルは「シンギュラリティ(技術的特異点)」と名付けました。シンギュラリティより先は、人口知能が猛烈なスピードでテクノロジーを進化させていくので、人間は世界の将来を予測することすらできません。


そういう世界で大事なのは英語力ではありません。たとえばコンピューターが翻訳しやすい論理的な言葉遣いが母語でちゃんとできること、つまりそのような母語の論理的言語能力、考えを明確に伝える能力が高いことのほうが、はるかに重要です。


複数のオピニオンリーダーの考え方を並列に持ちながら、自分の人生と比較し、どれとも違った結論に着地できないか、常に考えること、そういう頭脳の体力が大切です。


「意識だけ高い系」という言葉の解釈にもいろいろあるでしょうが、僕の見たところ、無駄な自己アピールなどを除くと、その第一の特徴は、本人に何の専門性もないこと。もうひとつは、専門性がないゆえに自慢するものが「人脈」とか「評価されない活動歴」「意味のない頑張り」程度しかないことです。


「ガッツはレッドオーシャンだから、そこで勝負しても無駄だよ」(中略)
ガッツがあるのは同然の前提だから、それをアピールしても人材としての市場価値はないという意味です。仕事はストレスなく淡々とこなせて当たり前なのです。


コンピューターに負けないために持つべきなのは、根性やガッツではありません。コンピューターになくて人間にあるのは、「モチベーション」です。
コンピューターには「これがやりたい」という動機がありません。目的を与えれば人間には太刀打ちできないスピードと精度でそれを処理しますが、それは「やりたくてやっている」わけではないでしょう。いまのところ、人間社会をどうしたいか、何を実現したいかといったようなモチベーションは、常に人間の側にある。だから、それさえしっかり持ち実装する手法があれば、いまはコンピューターを「使う」側にいられるのです。

これまでブルーワーカーの労働者は、その仕事をマネジメントするホワイトカラーの搾取を受けてきたということができます。実質的な価値を生み出しているのは現場のブルーカラーなのに、どういうわけかマネジメントをしている側のほうが高い価値を持っているように見えていました。


少なくとも、与えられたタスクを猛烈にこなすことが「自立的でかっこいい生き方」だと思っているとしたら、大きな勘違いだと言わざるを得ません。


今の小中学生が将来「コンピューターに駆逐されない自立的な仕事」をできるようになるには、何でも水準以上にこなせるジェネラリストではなく、専門性を持つスペシャリストになることが必要です。


大事なのは、成功したクリエイティブ・クラスをそのまま目標にすることではなく、その人が「なぜ、いまの時代に価値を持っているのか」を考えることです。


いまの資本主義社会は物理的リソースではなく「人間」が最大の資本ですから、シェアできない暗黙知の持ち主が大勢いる会社が強い。(中略)専門性が低く、何でも器用に処理できる浅く広い人材のほうが、これからは人材としての価値を評価されにくいのです。


「自分が何を研究すべきか」「何の専門家として生きていくのか」をわかっている人間は、それだけで有利なポジションに立つことができます。


「小さな問題を解決することがクリエイティブな事業を生む」ということです。だからこそ、まずは問題を発見することが大事になる。問題を見つけられない人は、当然ですがオリジナルな解決法も考えられません。


「自分が解決したい小さな問題を探せ」と言われたら、どうでしょう。意識は外の世界へ向かうはずです。そうやって探したときに、なぜか自分には気になって仕方がない問題があれば、それが「好きなこと」「やりたいこと」ではないでしょうか。


たとえば子供が「サッカーをしたい」「ピアノを習いたい」などと言い出したとき、思考体力のない親は「OK」か「NG」のどちらしか答えません。しかし、ふだんから物事を掘り下げて考える習慣のある親は、子供に「なぜそれをやりたいのか」を聞きます。すると子供は、それをちゃんと説明しないとOKしてもらえないことに気づく。「文脈をつける」ことを考え、それを言語化しようと努力するのです。

自分の価値を高めるためには、もっとほかにやるべきことが山ほどある。時間は有限です。通訳や翻訳家など「語学の専門家」を目指すなら別ですが、専門性のないただのバイリンガルになっても仕方がありません。


世界を「できあがったシステム」だと考えていたのでは、そこで起きる問題を解決することはできません。そのシステムの「ユーザー」として、価値や利便性などを享受するだけになってしまいます。
しかしそれではクリエイティブ・クラスとして生きていくことはできません。問題を解決して世界を変えようと思ったら、その世界を回している人間の営みを理解する必要があるでしょう。


常に自分のやろうとしていることに「誰が幸せになるのか」「なぜいま、それなのか」などの文脈を付けておくことが大事なのです。


ワーク・ライフ・バランスが問題になるのは、「好きなこと」「やりたいこと」を仕事にしていないからです。解決したい問題がある人間、僕だったら研究ですが、そういう人は、できることなら1日24時間、1年365日をそれに費やしたい。だから僕は、時間を切り売りしてお金を稼ぐのではなく、自由な時間をより得られる仕事を選んでいるわけです。ワーク・ライフ・バランスなんて考えたこともないし、その概念自体が僕には必要ありません。


ブータンの山奥でなくても、そのスタートラインに立つことができれば「いつか世界を変えるビジネスモデルを作る幸福」を味わうことができるでしょう。その幸福感は、「成功か失敗か」という結果とは関係ありません。自由に時間を使って、思いどおりに戦えているということ自体が、幸せなのです。


人間の価値も、これと同じように、将来を見据えて考えなければいけません。たとえば18歳のアイドルは、いまはたくさん稼げますが、その市場価値は5年後には下がることが多い。逆に、成長分野にいる20代後半くらいの博士研究者は、今は薄給にあえいでいるかもしれませんが、5年後の市場価値は上がっている可能性があります。


重要なのは、「言語化する能力」「論理力」「思考体力」「世界70億人を相手にすること」「経済感覚」「世界は人間が回しているという意識」、そして「専門性」です。これらの武器を身につければ、「自分」という個人に価値が生まれるので、どこでも活躍の場を見つけることができます。
何より「専門性」は重要です。小さなことでもいいから、「自分にしかできないこと」は、その人材を欲するに十分な理由だからです。


いつまでもマジに考え続けること、好奇心とテンションを高めに設定し続けること、要領よく子供であること。素人思考を保つためになるべくまっさらな気持ちでモノに向き合えると良いと、僕は思っています。


これからの世界はひとりの天才では変えられません。何人もの「変態」が、お互いの専門性をかけ合わせることによって、世界規模の「WOW!」を生み出す時代です。


コンピューターには「モチベーション」がありません。そこが人間との大きな違いです。だから、モチベーションのない人間は発達したコンピュータにいつか飲み込まれてしまう。逆に、「これがやりたい」というモチベーションのある人間は、コンピュータが手助けしてくれます。


インターネット以前の世界なら、必ずしも人類全体の最高到達点を目指さなくてもよかったでしょう。村、国、会社といった小さな共同体の範囲内での「最高到達点」に立つことができれば、自分の価値を活かせているという実感が得られたのです。
しかし、もはや国境をはじめとする境界線はすべてインターネットに破壊されました。(中略)世界中のすべての人間が同じフィールドで競い合っているのがインターネット以後の社会です。
したがって、どこかの誰かと同じことをやっても意味がありません。過去にあったものを再現してもダメ。いまの時点で人類の最高到達点を踏んだ人間だけが、勝者となるのです。
もちろん、レースの「種目」はひとつではありません。無数にあると言っていいでしょう。だから、自分にしか気づかない小さな問題を解決するための専門性を身につけることで、その問題における「最高到達点」を狙うことができる。70億人を相手にすれば、どんなにニッチな問題でも大きな価値を生むことができるのです。


振り返ると、読み終えたのち、普段はそこまで意識していたかったものの、かなり思想として影響を受けています。自分は何をして生きるのか。これからも周囲に同調しながら何となく生きていくよりも、心からこれだと思うことに自分の一生を賭けてみたい――こんな思いも、かなりの部分でこの本からの影響があることに気づきました。

僕も最高到達点を目指して、歩みを進めます。


今回もお付き合いいただいて、ありがとうございました😊🙏

読み終えた本は「しるし書店」に出品しております👇


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いただいたサポートは大切に、僕のメインである自殺防止の活動(通信費、HP維持費、研修費、保護の際の交通費)に使わせていただきます。 新潟 自殺防止ネットワーク http://life-save.org 代表 池 芳朗