本_佐渡島

「WE ARE LONELY,BUT NOT ALONE.」を読んで


出版業界大手の講談社から独立し、ベンチャーで「コルク」を創業、インターネット時代に合わせた作家、作品、読者のカタチをつくる佐渡島庸平さん。「コルクラボ」というオンラインサロンを主宰し、編集者という仕事をアップデートし続ける方。
お話されている動画を見て、以前からこの方のことが気になっていました。

発売早々に買ったけど、なかなか手を出せずにいた本。
やっと読むことができたので、読後メモとして残しておきたいと思います。


安心を得ようとすると、自由が失われるし、自由を得ようとすると、安心を失う。


社会的であるために、人間が無理をしている行為が、山のようにある。
社会が発達すればするほど、人間は、自分を社会のほうに合わせようとしてしまい、社会を自分の心地いいように変えようと挑戦する人はほとんどいない。


今までは、自分の意思を押し殺して、社会のシステムに合わせることが必要だった。これからは、自分の欲望を正しく理解して、実現するために、いろいろなことを試みることが重要になってきている。たった数年間で、社会のルールが180度変わろうとしている。


歴史の教科書を読むと、社会の変化は一瞬で起きたように感じるけれども、実際の変化は、まだら模様だ。新しい価値観が一部で生まれ、それがゆっくりと増えていく。


「何を手に入れているか」よりも「何をやっている人か」「なぜやっているか」という理由の方が重要になってきたのだ。


これからは、物質の所有やヒエラルキー付き組織への所属ではなく、自分は何を欲しいのか、何をいいと思うのか、それをわかりやすく表明している個人への注目が集まっていく。SNSでフォロワーを多く集めているのは、どんな価値観で生きているのかがわかりやすく、ブレない人だ。


しかし、そもそも論として、その問題は解決する必要があるのだっけ?という問いを突きつけられると、動けなくなる。今の時代、そもそも論が社会全体に突きつけられている。そして、日本の教育を受けたほとんどの人が、その問いを前に動けなくなっている。


人の行動は習慣に規定される。今までの教育では、正解がある問題を与えられ、それを解くことを習慣づけられた。僕らは、過去の教育システムの影響を多大に受けている。しかし、その教育システム自体も変わろうとあがいている。今は、すべてが過渡期なのだ。どこかに問題を押し付けても、何も解決しない。過渡期に、何をするのかは、自分次第なのだ。


情報が爆発すると、どの情報を信頼すればいいかわからなくなる。その結果、マスコミ以前の社会と同じ感じで口コミを頼ることになる。どんな情報かよりも、誰が言っているのかのほうが、重要になってくる。


たった100人に一人、1000人に一人でも、ネット上であれば、総数としてはかなりの数がいて、つながり合うことができる。絶対的にマイナーだと思っていた価値観が、そこまでマイナーなわけではないと知ることができると、遠慮せずに自分の価値観を外に主張できるようになる場合もある。


クリエーターに(Twitterの)フォロワーを増やすように努力しようとアドバイスする。そのときに、重要なことは、無理には増やさないことだ。本当に興味がない人がフォローしていると、内容を曲解して、変な騒ぎになってしまうことがある。たとえ内容が完全な見当違いでも、人から急に罵られるとエネルギーを奪われる。


SNSのユーザーが数千人を超えて記事を書いたりする運用に慣れてきたら、次のステップに移行する。もっとターゲットを限定したファンに向けての発信を準備するのだ。


今、多くの人が抱えているのは、情報が欲しいという欲望ではない。関係性を築きたいという欲望だ。1対Nをインタラクティブにするだけでは足りない。N対Nで複数の関係を築くことができると、そこを自分の居場所と感じることができる。


よくできるネットサービスは、サイトに行くと、一番初めに何をすればいいのかがすぐにわかって、自然と手を動かすことができる。それで、初めの一歩をクリアすると、安全、安心が確保されやすくなる。

砂場で、ほとんど完成されているピラミッドが放置されていると、横を通る人が次々と関与し完成させていく。しかし、まっ平らな砂場を見て、そこからピラミッドを作るために足を止める人はいない。


上の世代は、リアルで知り合った人とだけ、ネットでもつながる。リアルのつながりを、より深めるためだけにネットを使う。(中略)
下の世代は、全く逆だ。ネットだけでまずつながる。そして、ネット上のつながりで親密になったら、リアルでも会う。ネットでのつながりのほうが気軽で、リアルには慎重だ。
慣れの問題もあるだろうが、下の世代の行動の方が、合理的だ。ネットでつながる相手には物理的な制約はないが、現実に会う時の時間には物理的な制約がある。ネットが気軽で、リアルが慎重なほうが、理にかなっている。


そのときに重要なのは、最初の火を起こすところです。堀江さんのファン層というコミュニティに着火することが肝でした。だからこそ「僕自身が最初の火をおこすコミュニティを持っていたら最強なんじゃないか」と考え、6月に箕輪編集室を始めたのです。


「納品主義」と「アップデート主義」という考え方があります。一度で完璧な情報を伝えるのが「納品主義」だとすれば、不完全でもまずは伝達し、そこから修正を加えていくのが「アップデート主義」です。


長文だと長文で返さないといけなくなって、会話がたくさん生まれる状態ができないんです。コミュニティを活性化するために、「長文禁止」のルールは極めて重要(中略)

従来の「納品主義」から抜けられていないメンバーは「しっかりと情報を整理しないと伝えたくない」と感じて、長文を投稿してしまう傾向がある。そのため、情報発信までの腰が重たくなるし、相手からの返信ももらえず、あまりいいことはありません。(中略)

なぜこうした構造変化が起きたのかというと、人々がオンラインに常時接続されるようになったからです。オフラインだと、限られたミーティング時間でたくさんのことを決めなければならないから、しっかりと準備して、一度に効率よく情報を伝える必要があった。これが「納品主義」の考え方です。
でも今は、チャットツールで誰もがつながっている。だから細かいメッセージを送りあって、その度に情報をアップデートしていったほうが、互いのつながりが強まるのです。仕事も人間関係も、「アップデート主義」にいかに近づけるか。既存の常識を崩すのはとても難しいし、その常識を早めに崩せた人は、この時代に成功するのだと思います。


アップデートとは、言い換えれば情報が未完成なこと。余白があるからコミュニティのメンバーが一緒になって作れる


「一回のコミュニケーションで完璧に」から「不完全な短いコミュニケーションを何度も」に変わっている。


今の時代は、出版社に入るか入らないか、会社に属するかどうかに関係なく、人間丸出しで世の中に出ていくしかない。今はSNSがあるのだから、「自分はこうゆう人間だ」という人間性を、いかにネットの世界にさらけ出せるかが勝負になっている


友達たちは、息子の心の中にある葛藤を共有はしていない。孤独は、孤独のままだ。息子はそれに自分で向き合い、乗り越えていかなければならない。でも、息子は一人じゃないのだ。手を引いてくれる仲間がいるのだ。これが、コミュニティの力で、人を生かす力だと思った。

この本、前半部分は今まさに起こっている社会の変化について、佐渡島さんならではの「的確な言語化」で表してくれていて、日々ぼんやりと感じている社会の変化が、よりクリアに見えるようになりました。
そして後半は一気にこの本のメインテーマである「コミュニティ」について、オンラインサロンなどを通してその実態が明らかにされてます。

これからも時代は変わり続け、これまでの中央集権的なものはあっけなく崩れ去り、あらゆるものが分散化し、組織よりも個人にスポットが当たっていくという今の流れはどんどん加速していくでしょう。そしてその中で自由を得る代わりに安心が失われ、それぞれが不安や孤独を感じる。そしてその孤独の穴を埋めるためにも、N対Nのつながりがもてるコミュニティの存在がますます必要性を増していく―。

オンラインサロンに限らず、リアルのコミュニティとしても、これからのあり方を考えるうえで非常に参考になりました。

今回もお付き合いいただいて、ありがとうございました🙏

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いただいたサポートは大切に、僕のメインである自殺防止の活動(通信費、HP維持費、研修費、保護の際の交通費)に使わせていただきます。 新潟 自殺防止ネットワーク http://life-save.org 代表 池 芳朗