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The Hex 雑感

Inscryptionの製作者の前作であり、つまりそういうゲーム。Inscryptionのそういう要素が楽しめたのならば文句なしにオススメできる。プレイ時間は7時間程度。

寂れたホテルで、今宵殺人事件が起こる。目下の容疑者は6人の使い捨てられたゲームの主人公たち。一体誰が、誰を殺すのだろうか。

超良かった…!
気になる方はぜひプレイしてほしい。

◆以下ネタバレ◆









◆ゲームを愛しゲームを憎むすべての人に贈る

プレイヤーは6人のキャラクターを通じて、彼らが登場するゲーム(の没落)を追体験することになる。
ゲームの登場キャラクターから見たゲームに留まらず、視点はプレイヤー、製作者、さらには直接プレイしていないゲーム好きなユーザにまで拡張され、様々な角度からゲームを描く。

プレイしていてメタ的に、ゲームはクソ、ゲーマーもクソ、製作者もクソ、ゲームを取り巻く政治もクソ!と感じることになるが、そのいずれもが「あるある」で、ゲームだけでなくゲームを取り巻くあらゆるものへの造詣の深さに由来する。

この時点でライオネルの名前は見えてたのか

最初に感心したのがSWK内の描写。
1作目がシンプルなジャンプアクションだったのに対し、2作目では敵を踏んだ後 ボタン連打攻撃でようやく倒すことができるようになる。
ここはやってて「製作者のゲーム発展への意欲」「プレイヤーが的確に嫌がるアクション」の両方を体感できた。
無心で連打しながら(キーコンフィグを変更してなかったので左クリックだ)、これはゲームを愛しているからこそ表現できる億劫さだと感心した。
(のちのライオネルの独白で格ゲーに感化されてああなったと語られるのがまたいい)

Steamのクソレビュー、対戦ゲームのバランス調整で過熱する要望、改造厨、Twitchのネタバレ野郎…それらの描写のリアリティも面白い。

これ何かのミームなのか?

◆今宵は我々みなが殺人者だ

各キャラクターの視点を通して徐々にキャラクター同士の関係やゲームの目的が明らかになっていく。ライオネルがゲーム制作においてスターシステムを採用していることが物語構造の面白さに通じる。
※RPGのボスが恋愛ゲームに使いまわされているなど

キャラクターの一部は創造主に憎悪を抱いており、復讐を果たすため計画を企てる。
彼らが一丸となることでゲーム世界と現実世界が繋がり、創造主の首を絞め殺すエンディングは刺激的かつ非常に好みだった。
(ライオネルを演じるのは作者のDaniel Mullins氏らしい!)
(Inscryptionではルークが殺害されるラストシーンに唖然するプレイヤーが散見されたが、The Hexを先にやってると「そうなるよな…」感がある)

個人的にライオネルにはそこそこ好感を持っており、Walkで明かされる彼の人物像にも寛容だった。
言動は人間臭く、ゲームのキャラクターへの愛着も彼らが生きてるとは思ってないならその程度だろう。

ライオネルへの評価が急変し、筆者が殺人計画に手を貸したのは、Walkのエンディングを一通り見た後に目にしたレジナルドの顛末が悲惨だったからだ。

Inscryptionでは最後のレシー戦でやられたが、レジナルドに対しては自分の感情ではなく、彼の憎悪に共感して涙を流していた。非常に心を打たれた。
この勢いのまま、アーティファクトに手を翳すキャラクターたちに手を差し伸べ、殺人の片棒を担ぐのはすごい体験だった。

(そもそもこの隠しエンドの見方が分からないが)
レジナルドはライオネルが実は彼を愛していたと知っても、行動が伴っていないため何も思わないだろうが、殺害後に実は愛されていたことが発覚して後悔する…みたいな筋書きが好きなのでこの隠しエンドも好み。

◆Waste Worldの話をしたい

Falloutが好きなのでパロディがキツすぎるこのパートが楽しかった。筆者が無学なだけでポストアポカリプスゲームはすべてこのノリなのかもしれない。

パイプライフルにリッパー、ラッドラットにレイダー、果てはスーパーミュータント…Falloutだこれ!!

・初代Fallout
筆者は遊んだことがなく、知識として知っているだけだがUIやストラテジーのシステムがめちゃくちゃ初代Falloutだった。

・バグが放置されユーザによる修正頼み
Falloutだこれ!!※さすがに本家は遊べないほど酷いバグ放置はない…と思う
ユーザMODによるバグ修正に依存しているのはFalloutがよく非難される点であるため、RPGの指示厨や対戦ゲームの調整合戦と違いピンポイントすぎる皮肉だな…と思った。

・ポストアポカリプスでエイリアン!?意味わかんねえよ
エイリアンMODを作られたライオネルの叫びだが、ピンポイントにFalloutプレイヤーに向けたネタで筆者はめちゃくちゃ笑った。

・サルサパリラ
この言葉がThe Hex全体を通してキーワードであるのはタッパーライクのルートビアゲームがライオネルの心にあり続けたからなのだが、他でもない飲料の中からルートビアが選ばれ、特にWaste Worldでサルサパリラが存在感を出すのは、サンセット・サルサパリラを意識しているのかもしれない。
※サルサパリラといえば…サンセット・サルサパリラ!

・ゲームとMOD文化
緑化MODに強ボスMOD、別ゲーMOD……Falloutだこれ!!
ライオネルはMOD文化に否定的であり、まあ製作者目線でゲームの改造は好ましくないだろうが、今現在Falloutを作っているベセスダはめちゃくちゃMOD文化に寛容ということは補足したい。

Falloutの魅力はMOD含めてのものであり、バグ修正に登場人物の美化から大型マップ+ストーリーの追加まで、様々なMODがある。Fallout4はなんとプレイステーション上でMODを導入できる。

プレイ感的にも適切なチートを選んで突破していく過程が楽しかった。無意味な過剰ゴア、サイコー!

◆その他雑感

船から銃…FTLか?いやLovers※で見た…いや…Hotline Miamiだー!!
※こういうゲームの元祖はLoversではないと思うがこの手のジャンルに詳しくなく適切なたとえが思い浮かばなかった

Hotline Miami、PC操作を諦めてPSVitaで買いなおしたゲームなので、RPGとの切替を利用したパズルは面白かったがここのプレイが超きつい!
ノートパソコンのタッチパッドでの操作が既にキツいが、エレベータが凶悪。本家でもそんな延々囲まれる凶悪シチュエーションないだろ!!
最終的に右手にペンタブ、左手にテンキーで突破した。最難関だった…。ここ救済措置ないの!?

ショットガンを引き撃ちする動作にめちゃくちゃ覚えがあって楽しかった。

・口悪いワニが可愛い

・ちょいちょいInscryptionとの共通ワードがあってよかった…スチームボットとか(レジナルドはどうなのか?名前聞いたときは盛り上がったが)

・サドに関しては言及を控える(最後クモがポータル通り抜けてくのすごくいいですね)

ゲーム体験の面白さもだが、とにかくストーリーが好みだったかもしれない。登場人物が共謀して作者を殺害するミステリ小説とか大好き。

レジナルドの語りは全部良かった

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