見出し画像

振り向くなと言ったのに・・・

▲▲ 大阪の怪談(前) ▲▲

これは小生のの知り合いのS氏から聞いた話です。
S氏の同級生に長谷川君(仮名)というヤンキー仲間がいました。
彼は高校卒業後も定職に就かず、パチンコや賭けマージャンでその日暮らしをしていましたが、付き合っていた彼女が妊娠したのを機にヤンキーを卒業し、東淀川区の上新庄に小さな部屋を借りて、通っていた雀荘でバイトをしながら真面目に暮らし始めました。両方の親から結婚を反対されていたのを雀荘のオーナーが知り、部屋を借りる時の保証人にもなってくれたのです。
そして1997年の初夏の事、長谷川君は妊娠8ヶ月の奥さんを自転車の後ろに乗せ、いつもの様に近所のスーパー『イズミヤ』へ買い物に出かけました。
当時その『イズミヤ』と隣の北陽高校の間の道路には、行列のできる屋台のタコ焼き屋が出ていて、買い物を済ませた長谷川君夫妻はその日も行列に並んでおりました。8コ百円、五百円で40個、これにビールか缶チューハイでもあれば、若い二人には立派なディナーです。
「俺は15個でええさかいな、残りはお前にやる」
「ええー! それほんま? ウチ25個ももらえるのん、いや、うれし」
「あほ、そのうち10個はお腹の娘の分や。心して食え」
そんな会話を交わしていた長谷川君は、ふと背中に不吉で冷たい感じがして後ろを見るや、
「おい、今日はもう帰るで」
「何で? もうじきウチらの番やのに」
「ええから早よ自転車に乗れ。絶対振り向いたらあかんぞ」
飛ぶように部屋へ帰り着くと、奥さんは訊ねました。
「あれ何やったん? ウチ、目が合うてしもた」
「あほっ、振り向くな言うたのに・・・。あ、あれはな俺が小学生の頃、少年雑誌の特別企画で『織田信長の比叡山焼き討ち』についての記事があったんや。ほいで、捕らえた坊主どもを処刑して、その首を京都の三条河原に晒してる挿絵の中に、それはそれは不気味な顔があってな、今でも思い出す度にゾーッとするんやが、あ、あれがそれや!」

不思議なことにその夜、長谷川君と奥さんは原因不明の高熱で緊急入院。三日後に意識を取り戻した長谷川君は医師から告げられた。
「手を尽くしましたが奥さんは亡くなりました。しかし、赤ちゃんは帝王切開で無事生まれ、どこも異常なく至って元気です」
長谷川君は思いがけずシングル・ファーザーになってしまったのです。(続く)


この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

note.user.nickname || note.user.urlname

サポートの貴重なお足は、宇宙の神秘解明のために使わせていただきます。

ダンケシェーン!
3

あばばの茂平

落語と量子力学と日本史をこよなく愛する大阪のおっちゃんです。 未だ宇宙の神秘解明の登山口にも達してないのに、医者からもらう薬の種類は増えてゆくばかり・・・(涙) なお、記事はイラスト付きで転載OKです。漫画化や映画化にも応じます。
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。