最初会ったのは、オレが天下茶屋駅から少し東側に上がった所、西成区聖天下に住んでいた頃に毎日パチンコ通いしてた頃だった。

オレは落ちぶれて西成に来た。10年ほどミナミで仕事をして、何もかもが面倒くさくなって、しがらみを捨てて金も捨てて毎日をシャ#に溺れて過ごすために西成に来たみたいなもんだった。
仕事を辞めた時に持ってた金は200万ほど。

数ヶ月は暮らせるかと勘違いした。
2日ぐらいゲーム屋に行ってエイトラインを回してポーカーを叩いたら何も残ってなかった。

ミナミで仕事とは別の悪い仲間たちは粗方パクられて難を逃れた連中も体をかわした。

ポン中の溜まり場になってたマンションを引き払って、西成に移り住んだ。

携帯を失くして、電話番号を変えた。
誰とも関わりを絶って数十gの品物を食って家に引きこもった。
数ヶ月は経ってたと思う。
品物がなくなり、以前から交流のあったヤクザから品物を買った。
仲間達から買ってた頃から比べると高かった。そのヤクザのことをバカにしてた。
世間知らずのアホヤクザ。
高く売ればいいと思ってるアホ。見切りをつけて西成のたちんぼから買った方がましだと思った。

食い詰めたポン中達が西成の街角に立つ。

当時の西成はシャ#パラダイス。堺筋太子交差点から南向きに歩くと、両側の街角毎に売人が立ってた。当時の西成のたちんぼは堺筋だけではなかった。

太子交差点からチン電の踏切を渡ったところタコ焼き屋の前に数人が毎日いる。チン電沿いを南側に折れると10人ぐらいが客の順番待ちをしていた。三角公園の周りや、泥棒市の掘立小屋を根城にもいた。とてもじゃないけど、2000年代を超えた日本の風景ではなかった。
Dちゃんと出会ったのは当時悪名高かった太子プラザ。街角で買うのは寒いから直接、太子プラザに入った。

フロント前すぐにあるエレベーターの前に行って出入りする人間に声をかければいい。
それらしい1人の男に目をやった。当時の太子プラザで宿泊していたのは9割、たちんぼ。

目が合って「いけますか？」

4階に通されて品物を手にした。何度か通ううちに部屋で長居するようになった。話すうちに年も同じだと知り、仲良くなった。買いに行く時に弁当なんかを差し入れしたりした。お互いにその場で品物を食った。ドヤの3畳ほどの狭い部屋に50型ぐらいの大きいTVがあってプレステのはじめの一歩のボクシングゲームをしたりしたり、効いた状態で長話をしたりした。ひと月にも満たない、ポン中同士によくある短い付き合いだった。